大悪魔を駆使して始まる世界征服

丹波 新

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第三章 廃墟の遊園地

39話 大事な告白

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まずは私とダークネス・カイザー様が観覧車のゴンドラに乗り込んだ。
車内の揺れはそれほどなく安全に起動していた。
私たちは対面する形で座っている。しかし目は合わさずに二人してスマートフォンをいじっていた。

(ああ、先輩と二人きりなんて、何を話したらいいのよ。早く早く助けなさいよ使い魔たち)

――どんな人どんな人写真送ってよ。

(もう! 肖像権ってのを知らないのかしら)

――つーか、もう乗ってんならあとは勢いっしょ。

(勢い任せで何をしろって言うのよ)

――むしろ襲われちゃうんじゃないの?

(――!? ななな、何を言っているのかしら!? まさか先輩に限って肉食系とかじゃないわよね!)

――写真は抜きにしても、どんな感じの人か教えてくれないとマジコメ送れないんだけど……

(どんな感じって……返信しましょうか……?)

――一言で言ううなら邪気眼、厨二病、電波男、それと名乗りがダークネス・カイザーっていう学校の先輩3年生。

私はポチポチと文章を打っていった。

――ちょっと待ってて相性占いやってみるわ。

(そんなの、もうとっくにやっているわよ。相性中々という何とも反応しずらい内容だったけどね)

――勢い勢いで、告白告白ですよ。脈なしで二人っきりで観覧車に乗るわけがないんだから。

(ああ、今回の来園の目的が、お化け退治して遊園地の再開なんて説明してなかったわね)

――遊園地って、先日お話した心霊スポットである遊園地の事でしょうか。

(そうそう、その通り……これで皆に情報は伝わったでしょう)

――言っちゃえ言っちゃえ! 大抵の男はおしとやかでお上品な女の人に落ちます。なので告白はもじもじから始めましょう

(もじもじって、そんなこと言っても大抵の場合はお花を摘みに行くと勘違いされるのではなくって)

――今高さどの辺、早くしないと機会のがすよ。頂上で告白するのがベストタイミングだけど。

(クリスチャンにも言われてるのよねぇ。どうしてかしら景色がいいならそっちに集中すると思うけど、もしかしてその集中が原因? さりげない不意打ちで告白。男子はそうゆうのに弱いってこの前本でも読んだ気がした)

――どこでもいいけど二人っきりでデートならまだ言わなくていい。けど、友達たちと一緒に遊園地に遊びに行っているのなら言った方がいい。

(……そいえばここにはバステトも、あのデビルンもいない。邪魔するものは何一人いない。そう考えると……これは絶好のチャンスじゃないかしら)

――3年生ならもうすぐ大学受験か就活時期じゃん。今すぐ言った方がいいって。

(そうよねぇ……3年生だものねぇ、オカルト研究部もあと2,3か月で卒業シーズンだし、今言わなかったら会える機会が減ってしまうものねぇ)

チラリとダークネス・カイザー様を見てみると、景色には興味がないのかスマートフォンをいじっている。

(頂上まであと半分かぁ~~)

私は意を決して話しかけることにした。

「見てください。ダークネス・カイザー様ここからだと入場ゲートが見えますよ」

「ふむ、そうか……」

(違う違う、もっとしおらしくお上品にことを進めないと、いくら運命の相手とはいえ愛想がつかされてしまうわ)

相変わらずスマートフォンをいじくりまわしていた。のだが……

「デイネブリスパピヨンよ。大事な話がある……」

「――えっ!?」

スマートフォンいじりをようやく切り上げたダークネス・カイザー様だった。

「は、はい!? 何ですか!?」

ちょっと緊張して裏声になり掛かってしまった。

「丁度二人っきりで話がしたいと思っていたのだ」

(ええ~~まさか、そっちから!? 告白なら前にされていたけれど、まだ返事をしていなかったわ! まさかその返事待ち!?)

真剣な目でこちらを見つめてくるダークネス・カイザー様。そんな目で見つめられてはドキドキが止まらない。

(大丈夫、ここはおしとやかに女性らしく振る舞うのよ)

景色を見ていた私は先輩の前にきちんと座り直した。そしてドキドキを抑えるために軽く深呼吸する。

「以前言ったことを覚えているだろう……」

(以前って!? やっぱり告白の事じゃない。どうしようどうしよう返事を待っているってことよねぇ)

「だがそれは世界征服したあかつきには、とも言ったな?」

「(あっ! そうだったわ)…………ええ、存じておりますとも」

どうやら告白の返事待ちではないらしい。

「我が言いたいのは世界征服の条件だ。我が提示した世界征服は人間たちのいざこざを終わらせて終息させること、そこに大きいも小さいもない」

「は、はぁ…………(始まった先輩の難しい話)」

「キミはよくやってくれている。クレヴァナルのメンバーの中でとびっきり優秀な人材だ。だから言おう」

「世界征服の条件はキミに一任したい」

「えっ! それはどういうことですか!」

「フーハッハッハッハ! 本当は我が力をもってして成しえたかったのだが、あいにくと、もう直ぐ卒業の季節だ。我が目的は高校生の内では叶わないのだろう……それを今のうちにキミには言っておこうと思ってな」

「それなら大学へ行ってもオカ研を始めればよいだけではありませんか?」

「それが出来ないから、キミに我が野望を託そうとしているのだ」

(それが出来ない。なんだろう大学志望じゃなく就職志望ってことになるのかしら)

「我の代わりに見事、世界征服を成し遂げてくれ……」

「はい、それはもちろん」

「うむ、その答えが聞きたかったのだ!」

ダークネス・カイザー様が勢いよく立ち上がると――ゴン!!とゴンドラに頭を打ち付けて重い衝撃を走らせていた。

「――――――痛っ!?」

「大丈夫ですか!?」

「無論だ! 我が身に宿る闇の力がそうやすやすと器であるこの身体にダメージを負わせるものか! それより見よ! デイネブリスパピヨンよ! 素晴らしい景色だ。まるでこの世の支配者にでもなった気分よ!」

私は景色を見ていた。いつのまにやら頂上に辿り着いたのだ。

(凄いいい景色、じゃなくて私も言いたいことを言っておかないと……心臓よ今だけは鎮まりなさい邪魔よ)

顔を俯けてスーハースーハーと軽く呼吸する。きっとこの時の私は顔から耳まで真っ赤だったろう。そして意を決してその名を口にする告白するために……

「――――あ、あのーーダークネス・カイザー様ではなく黒条先輩!」

不思議なことが起きた。

「――あれ?」

黒条先輩、もといダークネス・カイザー様の姿がどこにも見受けられなくなっていた。
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