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第四章 ダークネス・カイザー様の行方

49話 新たなる契約

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「――私たちの為に、魂を、命を、賭けることなんてないです! ダークネス・カイザー様がそんなバカげたことを考えるなんて思いもしませんでした」

「――馬鹿げたこととはなんだ……? これでも本気で覚悟を決めたのだぞ!」

「――本気な今すぐ世界征服しましょうよ!」

「しかし、我々がいるのはあと3カ月のみ、我が代でクレヴァナルを世界にとどろかせることは不可能だ」

「そんなの私の知ってるダークネス・カイザー様じゃないわ!」

「――――ッ!?」

「私の知ってるダークネス・カイザー様はいつも高笑いしてこういうの! 我がクレヴァナルのメンバーよ! こたびも世界征服への一歩を踏み出そうではないかって!」

「しかしだな。現実的に考えて……クレヴァナルの世界征服があと3カ月のみというのは……」

「――現実的に考えるなんてダークネス・カイザー様じゃありません! そんなことを考えるのは黒条サイコ先輩の一面です!」

「だが、現状は、世界征服だけでなく、クレヴァバなるの存続も怪しい所であってだな」

「じゃあ卒業後も皆で集まればいいだけじゃないですか!?」

「――――な!?」

「――何か問題ありますか!?」

「……いやない。むしろ最高の解決策だ」

「でしょう? だったらもうこんなところに用はありません。早く皆のいる世界に戻りましょう」

「しかし、我には契約があるのだ。これを破るとどうなるか聞いているか?」

「どうなるんです?」

「血縁者の魂を問答無用で喰らいつくせるのだ」

「――ッ!? デビルン!」

私はデビルンの方に振り向いた。翼の拳でイビルンを包み込んでいるところがうかがえた。

「あはははーー、バレちまったか? いや、隠すつもりはなかったんだが、心配するだろ人間ってそういうこと……」

デビルンは棒読みで言い放った。

「我は願いを叶えてしまったし、家族にも迷惑をかけるわけにはいかない。ここらが潮時だと思ったのだ。だから頼むデイネブリスパピヨンよ! クレヴァナルの組織を大きくするのはキミの役目なのだ!」

「嫌です」

「わかってるこんな押し付けや、命の代償などと言われても納得いかないだろう……しかし、こうするしか道はないのだ」

「道ならまだあります!」

「――いいやない。家族が犠牲になる」

「――いいえ、私と一緒に進む道がまだ残っています」

「キミと同じ道を進む?」

「聞いてくださいダークネス・カイザー様、私にも願いごとがあるんです。それは――」

私はダークネス・カイザー様の手を取り、頬に口づけを交わした。その時の先輩の表情はあっけにとられていた。

「――それは、ダークネス・カイザーと契りを結び妻として血縁者になることです」

「我の血縁者にキミがなるというのか? それではまるで――」

「――はい。愛の告白です」

数秒間見つめあう二人。誰にも邪魔されない時間が続いていた。そして――

「ダークネス・カイザー様、私をあなたの伴侶としいて迎え入れてください」

「キミは本気で我を好いているのか?」

「――はい、いつもお慕いしておりました」

即答した。

「……そうか、我と共に道を進んでくれるか」

「――はい」

これもまた即答した。

「我なんかが伴侶で本当にいいのか?」

私は先輩を抱きしめた。力の限り抱きしめた。

「何を言っているんです? 最初に出会った時、あなたは言っていたじゃないですか……前前前世からの運命の出会いだって……」

「覚えていたのか……」

「そちらこそ覚えていたんですね。あれは本気だったんですか?」

「本気だったとも、例え一目惚れだったとしても……」

「それなら契約成立ですね。一緒に世界を征服してやりましょう」

「わかった。そう、そうしよう……うっ、うっ」

ダークネス・カイザー様が涙をこぼし始めた。

「実は、言うと、結構、ぐすん、魂を喰われるのが、うっ、怖くてな。誰かに、相談しようとも、思ったんだ」

先輩が膝から崩れ落ちる。私はその頭を撫でて怖さを和らげてあげる。

「ダークネス・カイザー様、私と結婚を前提としたお付き合いをしてください」

「わかった。デイネブリスパピヨンよ。キミと契りを、新たな契約を結ぼう」

こうして私と先輩は恋人同士になったのだった。
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