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のろまの矜持
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※攻めくんがモラハラ気味です
※人によっては嫌悪感があるかもしれません
※王道溺愛ものではありません
※恋人を蔑ろにしすぎてフラれた男と、振った子のお話です
※読んだ後の苦情は受け止められませんすいません
※何でも許せる方のみどうぞ!
さようなら、とだけ送信する。
僕から加賀美さんにそんなことができたのは、僕にしては上出来だったと思う。
ブロックして終わりにした、元恋人。いや割り切った関係のひと。
ひとりで過ごすマンションからは、吹雪みたいな雪が見える。
少し寂しいけど1人は気楽だ。思い切って職場も恋も全て捨ててきて良かった。そのはずだ。
僕は少しドジでのろまだった。僕は皆の輪からはみ出がちだった。輪に入れない訳ではなかったけど、めちゃくちゃ良く言えばイジられキャラであり、要は皆から大事に扱われる存在ではなかったのだ。
傷つくことを言われてもヘラヘラ笑ってはやり過ごしていた。
そんな僕に加賀美さんが近づいてきたのは一生で一番の幸運だと思った。加賀美さんはイケメンエリートで職場でトップスターみたいな人だったから。
俺ら付き合わん?
そう言われて断る理由なんかなかった。
だけど、僕の思い描いていた交際とは違った。
加賀美さんは皆の集まる飲み会で、僕の近くに絶対座らなかった。
酔っ払ったひとが残酷なチャチャを入れることもあったけど。
『誰か1人モンのナツミと付き合ったれや~加賀美くんどや?』
『いやあんなん無理やし』
即答して切り捨てた。ドッと湧く飲み会。
当たり前。加賀美さんは僕よりも歳上の先輩で、エリートでイケメンで皆が憧れる存在だったから。僕みたいなちっぽけな奴を相手にしていたらそれこそ理不尽というものだ。
『やだ~もう!やめてくださいよお』
そう言ってヘラヘラと僕はノンアルビールを飲んでいたけど、内心結構傷ついていた。
夜、布団を頭からすっぽりかぶっては加賀美さんのセリフが何度も頭を掠めた。
あんなん無理やし。あんなん。無理。あんなん無理。
あんなやつってどんなやつ?僕みたいにやぼったくってダサい奴ってこと?
眠ってしまいたいのに眠れない。でもそんな夜に限って加賀美さんは僕のマンションに合鍵を使って現れた。そそくさと飲み会から離脱した僕と違って、2次会3次会と引っ張りだこな加賀美さん。
深夜3時に僕ん家に現れ、僕を抱こうとした。いろんな気持ちが込み上げて一応拒絶するんだけど、『興醒めさすなや』とそう言われれば僕は降伏するしかなかった。それに熱を帯びて僕に触れてくれる加賀美さんが、僕はやっぱり好きだったから。深夜のベッドで手指を絡め合う。
『好きです』と我慢できずに言えば『俺も』と答えてくれた。サービストークかもしれない。でもそれでも嬉しかった。僕らが一番恋人らしい時間だった。それは周囲に誰もいない深夜のベッド。
それとなく事後に聞いてみたら、こともなげにこう言われた。
『俺ら付き合っとんの内緒にしとこうや。な』
なぜ?とは聞かなかった。加賀美さんがそうしたいならそうするよりないのだ。
加賀美さんは日に日に雑になった。皆の前で僕を小突き、ほんのりバカにした。
『ほんまアホや』
それでもえへへとヘラヘラ笑ってみせたけど、好きな人に下に見られるのは実際身を切られるように辛かった。
とはいえ、加賀美さんは僕のマンションによく訪れた。僕をよく抱いた。嫌われているのか好かれているのか良くわからない。確実なのは僕が加賀美さんにそれでもぞっこんだったということだけ。そんな関係性はしばらく続いた。
加賀美さんはよく職場の仲間内で旅行に行った。
一軍メンツと。怖すぎて僕には近寄れないけど。
加賀美さんは時折気まぐれに僕の仕事を手伝ってくれる時があったので、それをめざとくイジる人もいた。
『ナツミくんも旅行連れてってあげたら~?』
『いや何で亀みたいな子連れてかないかんの?あいつ絶対遅いやん何もかも。無理』
亀かあ。かめくんかあ……。
このとき笑って堪えることが出来たのは本当に上出来だったと思う。
自分がのろまであるという自覚は一応あり、それを好きなひとに的確に評されるのは堪えた。
のしかかる重み。加賀美さんのことは好きだけど、好きでいることは辛くもあった。
トドメはうっかりと飲み会の時に訪れた。
定番の話題となった時。
『加賀美さんて今付き合ってる人いるの?』
『えーいるけど』
!ドキンと鼓動が跳ねた。え、いるっていったら誰って聞かれるけど……もしかして僕とのことをついに……!?って思ったんだけど。
『歳下の巨乳の子』
ってサラって答えてるのを聞いて、僕は世界が崩壊する思いだった。
……その後はどうしたのか覚えていない。とぼとぼ歩いて帰った気がする。
僕はどうやら恋人ではなかったらしい。割り切った関係ということのようだ。あのやりとりから察すると。
そっか……。
全てが腑に落ちた。そりゃ恋人じゃないから皆に内緒だし、恋人じゃないからバカにもするし小突きもする。
そっか……そうなのか……。
ハッとしてその日の夜、僕は家の近くのビジネスホテルに移動した。加賀美さんが襲来したら敵わない。あんなこと聞かされた後で、優しく激しく抱かれては。僕は擦り切れてしまう……。
それから僕は加賀美さんに会うことなく、職場を辞めた。迅速に残務を処理し、職場から消えた。
夜逃げの様なスピード感で引越しをした。
普段のろまな自分がこんなに猛ダッシュできることが意外だった。
加賀美さんにさようならとメッセージで告げた。
そしてブロックした。
もう会うこともないだろう。
さようならだいすきだったひと。
続く
※人によっては嫌悪感があるかもしれません
※王道溺愛ものではありません
※恋人を蔑ろにしすぎてフラれた男と、振った子のお話です
※読んだ後の苦情は受け止められませんすいません
※何でも許せる方のみどうぞ!
さようなら、とだけ送信する。
僕から加賀美さんにそんなことができたのは、僕にしては上出来だったと思う。
ブロックして終わりにした、元恋人。いや割り切った関係のひと。
ひとりで過ごすマンションからは、吹雪みたいな雪が見える。
少し寂しいけど1人は気楽だ。思い切って職場も恋も全て捨ててきて良かった。そのはずだ。
僕は少しドジでのろまだった。僕は皆の輪からはみ出がちだった。輪に入れない訳ではなかったけど、めちゃくちゃ良く言えばイジられキャラであり、要は皆から大事に扱われる存在ではなかったのだ。
傷つくことを言われてもヘラヘラ笑ってはやり過ごしていた。
そんな僕に加賀美さんが近づいてきたのは一生で一番の幸運だと思った。加賀美さんはイケメンエリートで職場でトップスターみたいな人だったから。
俺ら付き合わん?
そう言われて断る理由なんかなかった。
だけど、僕の思い描いていた交際とは違った。
加賀美さんは皆の集まる飲み会で、僕の近くに絶対座らなかった。
酔っ払ったひとが残酷なチャチャを入れることもあったけど。
『誰か1人モンのナツミと付き合ったれや~加賀美くんどや?』
『いやあんなん無理やし』
即答して切り捨てた。ドッと湧く飲み会。
当たり前。加賀美さんは僕よりも歳上の先輩で、エリートでイケメンで皆が憧れる存在だったから。僕みたいなちっぽけな奴を相手にしていたらそれこそ理不尽というものだ。
『やだ~もう!やめてくださいよお』
そう言ってヘラヘラと僕はノンアルビールを飲んでいたけど、内心結構傷ついていた。
夜、布団を頭からすっぽりかぶっては加賀美さんのセリフが何度も頭を掠めた。
あんなん無理やし。あんなん。無理。あんなん無理。
あんなやつってどんなやつ?僕みたいにやぼったくってダサい奴ってこと?
眠ってしまいたいのに眠れない。でもそんな夜に限って加賀美さんは僕のマンションに合鍵を使って現れた。そそくさと飲み会から離脱した僕と違って、2次会3次会と引っ張りだこな加賀美さん。
深夜3時に僕ん家に現れ、僕を抱こうとした。いろんな気持ちが込み上げて一応拒絶するんだけど、『興醒めさすなや』とそう言われれば僕は降伏するしかなかった。それに熱を帯びて僕に触れてくれる加賀美さんが、僕はやっぱり好きだったから。深夜のベッドで手指を絡め合う。
『好きです』と我慢できずに言えば『俺も』と答えてくれた。サービストークかもしれない。でもそれでも嬉しかった。僕らが一番恋人らしい時間だった。それは周囲に誰もいない深夜のベッド。
それとなく事後に聞いてみたら、こともなげにこう言われた。
『俺ら付き合っとんの内緒にしとこうや。な』
なぜ?とは聞かなかった。加賀美さんがそうしたいならそうするよりないのだ。
加賀美さんは日に日に雑になった。皆の前で僕を小突き、ほんのりバカにした。
『ほんまアホや』
それでもえへへとヘラヘラ笑ってみせたけど、好きな人に下に見られるのは実際身を切られるように辛かった。
とはいえ、加賀美さんは僕のマンションによく訪れた。僕をよく抱いた。嫌われているのか好かれているのか良くわからない。確実なのは僕が加賀美さんにそれでもぞっこんだったということだけ。そんな関係性はしばらく続いた。
加賀美さんはよく職場の仲間内で旅行に行った。
一軍メンツと。怖すぎて僕には近寄れないけど。
加賀美さんは時折気まぐれに僕の仕事を手伝ってくれる時があったので、それをめざとくイジる人もいた。
『ナツミくんも旅行連れてってあげたら~?』
『いや何で亀みたいな子連れてかないかんの?あいつ絶対遅いやん何もかも。無理』
亀かあ。かめくんかあ……。
このとき笑って堪えることが出来たのは本当に上出来だったと思う。
自分がのろまであるという自覚は一応あり、それを好きなひとに的確に評されるのは堪えた。
のしかかる重み。加賀美さんのことは好きだけど、好きでいることは辛くもあった。
トドメはうっかりと飲み会の時に訪れた。
定番の話題となった時。
『加賀美さんて今付き合ってる人いるの?』
『えーいるけど』
!ドキンと鼓動が跳ねた。え、いるっていったら誰って聞かれるけど……もしかして僕とのことをついに……!?って思ったんだけど。
『歳下の巨乳の子』
ってサラって答えてるのを聞いて、僕は世界が崩壊する思いだった。
……その後はどうしたのか覚えていない。とぼとぼ歩いて帰った気がする。
僕はどうやら恋人ではなかったらしい。割り切った関係ということのようだ。あのやりとりから察すると。
そっか……。
全てが腑に落ちた。そりゃ恋人じゃないから皆に内緒だし、恋人じゃないからバカにもするし小突きもする。
そっか……そうなのか……。
ハッとしてその日の夜、僕は家の近くのビジネスホテルに移動した。加賀美さんが襲来したら敵わない。あんなこと聞かされた後で、優しく激しく抱かれては。僕は擦り切れてしまう……。
それから僕は加賀美さんに会うことなく、職場を辞めた。迅速に残務を処理し、職場から消えた。
夜逃げの様なスピード感で引越しをした。
普段のろまな自分がこんなに猛ダッシュできることが意外だった。
加賀美さんにさようならとメッセージで告げた。
そしてブロックした。
もう会うこともないだろう。
さようならだいすきだったひと。
続く
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