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第一章:幼少期編~悪役令嬢と破滅イベント~
第一話~悪役令嬢は前世の記憶を思い出しました~
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それは突然の出来事だった。
私はいつものように屋敷から飛び出した。屋敷の外に行くと庭師によって整えられた綺麗な庭がある。
そこでペットのウリボウと遊ぶことが私の日課だった。
だけど今日は様子が違った。庭に行くとペットのウリボウはおらず、世話人を置いてけぼりにして先に来た私は一人ぼっち。
あたりをきょろきょろと探していると、少し離れた茂みがかすかに揺れた。
「あっ!」
茂みの奥からひょこっと顔を出したのはペットのウリボウ。名前はムーちゃん。クリっとした目と人形のような毛並みが特徴のかわいいペット。
ムーちゃんの姿が目に映った私は、手を大きいく振って声をかけた。
「ムーちゃーんっ! こっちーーーーっ!」
ムーちゃんは私の姿に気が付いたのか、目を潤ませてこちらに向かって走り出した。
思えば、この時に気が付いておくべきだったのかもしれない。
目を潤ませたを通り越して泣きながら走ってくるムーちゃんの勢いは止まらない。
「え、ちょっ、まーー」
ムーちゃんはそのまま私のおなかに向かって突進してきた。
その衝撃はすさまじく、一瞬にして胃のものがこみ上げてきた。骨は軋み、体は悲鳴を上げる。
胃のものを吐き出しながら、勢いに負けた体は吹き飛ばされて地面を転がった。
転がった先にちらりと見えたのは、池の周りにある大きな岩。
ああ、私はこれで死んじゃうのかな?
そう思った瞬間、今までの記憶が目まぐるしく流れ出した。
きっとこれが走馬燈なんだろうなーと思うと同時に、何かがおかしいことに気が付いた。
見えてきたのは、タブレットを手にもってネット検索をしている光景。検索しているのはとあるゲームの情報サイトだった。
ん? タブレット? そんなもの、見たことないはずなのに? てかタブレットってなんだ?
画面に書かれている内容はとある乙女ゲームの記事だった。
時折出てくるイラストには、なんか私がいる。しかも絞首台の上にいて、首にはロープがーー。え、私は処刑されるの? なんでー? どうしてー?
こんなの知らないのに、知らない記憶のはずなのに、私はこの記憶を知っている。
そう思った瞬間、激しい頭痛に見舞われる。
が、それも一瞬のこと。
ムーちゃんの突進で地面を転がり続けた私は池の周りにある岩すら通り過ごしてそのまま池に落ちて気を失った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「のわあああああああああああああっ!」
奇声をあげながら飛び起きると、そこは自室のベッドの上だった。本当に死んだと思ったがどうやら私は生きているみたいだ。
隣で「のひゃああああ」と同じく奇声を上げるメイドがいるが今はそれどころじゃない。
それどころじゃないのにメイドのアンがすごく邪魔してくる。
「お嬢様っ! 目を覚まされたのですね。大丈夫ですか。おかしなところはありませんか」
「……その声が頭に響いておかしくなりそう。お願い、ちょっと混乱しているから一人にして」
「あわわわ、他の人を呼んでまいりますっ! 旦那さまー。奥方様ー。お嬢様がーー」
アンは扉を蹴り破る勢いで開けて、そのまま走り去ってしまった。
いや、怪我人がいるんだからもう少し静かにしようよ。そうツッコミたいが本人がいないのでどうしようもない。
でも今の問題はそこじゃない。
意識を取り戻して混乱している頭を整理して、今の状況を確認する。
私の名前はヘンリー。ヘンリー・フォン・ブスガルト。ブスガルト公爵家の一人娘で結構かわいがられている。現在6歳。
これは私本人の記憶だ。そして、私にはもう一つの記憶がある。
ムーちゃんの突進で死にかけたことにより見えた走馬燈。そこに映ったものは私の知らない記憶だった。
それもそのはず、その記憶は私の前世の記憶だ。
走馬燈で見えた記憶によって、どうやら私は前世の記憶が蘇ったみたい。
前世ではどうしようもないオタクで、同人誌ばっかりあさっている女の子だったようだ。
そこはさして問題じゃない。前世は前世、現世は現世、だ。
前世の記憶が蘇ったことにより他の人が知らない知識を身につけられたが、結局はその程度。ちょっとばかし他の人より賢くなったなーぐらいにしか感じなかった。
問題はそこじゃない。前世の記憶が蘇ったことにより、私は自分の運命を知ってしまったのだ。
私が前世でこよなく愛した二次創作の同人誌。その元となっている作品のタイトルは『恋愛は破滅の後で』という乙女ゲームだった。
ヘンリーとは、この作品に登場するラスボス的悪役令嬢。
え、どうしよう。私って破滅しかない悪役令嬢みたいなんだけど。ていうか、あのゲーム、いろいろとやばい作品だったよね。マジでどうしようっ!
慌てて前世の記憶から覚えているゲームの内容を近くの紙に書き出すことにした。
「とりあえず、覚えていることはこのぐらいか」
書き出した紙を読みながら、現状を整理する。
『恋愛は破滅の後で』は女性だけでなく男性にまで人気な乙女ゲーム。
その人気は凄まじく、ゴールデンタイムでアニメ化するほどだ。
世界観はザ・ファンタジーなのに、魔法とか異能みたいなのは一切ない。舞台は学園で、主人公が入学してから卒業するまでの3年間が描かれている。その学園生活の中で攻略対象と恋仲になっていくというのがこのゲームの内容だ。
攻略対象は全部で4人。ただし、ゴールするまでの道のりはかなり険しい。
襲い掛かってくる悪役令嬢どもを蹴落とし、破滅に追いやって恋を成就させるというある意味ですごい作品だった。
ルート入るまで悪役令嬢を500人破滅に追いやらなければいけないとか頭がおかしい。
これだけ聞いていると、悪役令嬢ってなんだ? って気分になってくる。いや、製作者の頭がおかしすぎるでしょう。
そういえば、ネットで見た卒業式シーンのイラストには、主人公と攻略対象の4人と教師以外誰もいなかったなー。
まあ要するに、『恋愛は破滅の後で』という作品は乙女ゲームとしてではなくバカゲーとしてかなり有名になっていた。
途中で100人ぐらいのご令嬢が「ぐはぁぁぁぁ」とか言って、全員絞首台に連れていかれるとか、このゲームを作った製作者たちはぶっ飛んだ思考をしているに違いない。ほんと頭がおかしい。
主人公も主人公でちょっとだけ変わっている。乙女ゲームの主人公といえば、平民か男爵などの身分が低い貴族が定番で学園に入学すると「平民のくせに」とか「男爵令嬢風情が」みたいなことを言われて虐められるところから始まるのが王道だ。
だけど『恋愛は破滅の後で』は一味違う。なんと主人公は名探偵の孫娘だった。
そして一番最後に出てくる通称ラスボスことヘンリーと推理バトルが始まって、それに勝利することでめでたくゴールイン。
婚約破棄とかそんなんじゃなく、物的証拠と人々の証言によって相手を破滅させるという、ちょっとトチ狂った設定のゲーム。
これだけ聞いていると乙女ゲームじゃないよねってツッコミたい。どっからどう見ても推理サスペンスものだ。恋愛要素がちょっとあるからって乙女ゲームにするその思考。ぶっ飛んでる。
つまり、私の未来は主人公に言い負かされて破滅するという運命しかない!
これってかなりやばいよね。ルート分岐によって破滅するとかならともかく、どのルートでも破滅しか待っていない悪役令嬢って……。
私はいったいどうすればいいのっ!
いやいや、待て待て。まだ破滅すると決まったわけじゃない。あれはゲームの内容であって今の私の未来を描いたものじゃない。もしかしたら運命を回避することができるかもしれない。
ん? そういえばあのゲームのジャンルって『相手を破滅に追いやって愛を略奪するシミュレーションゲーム』じゃなかったっけ?
どうしよう、運命回避できる気がしないんですけどっ!
私はいつものように屋敷から飛び出した。屋敷の外に行くと庭師によって整えられた綺麗な庭がある。
そこでペットのウリボウと遊ぶことが私の日課だった。
だけど今日は様子が違った。庭に行くとペットのウリボウはおらず、世話人を置いてけぼりにして先に来た私は一人ぼっち。
あたりをきょろきょろと探していると、少し離れた茂みがかすかに揺れた。
「あっ!」
茂みの奥からひょこっと顔を出したのはペットのウリボウ。名前はムーちゃん。クリっとした目と人形のような毛並みが特徴のかわいいペット。
ムーちゃんの姿が目に映った私は、手を大きいく振って声をかけた。
「ムーちゃーんっ! こっちーーーーっ!」
ムーちゃんは私の姿に気が付いたのか、目を潤ませてこちらに向かって走り出した。
思えば、この時に気が付いておくべきだったのかもしれない。
目を潤ませたを通り越して泣きながら走ってくるムーちゃんの勢いは止まらない。
「え、ちょっ、まーー」
ムーちゃんはそのまま私のおなかに向かって突進してきた。
その衝撃はすさまじく、一瞬にして胃のものがこみ上げてきた。骨は軋み、体は悲鳴を上げる。
胃のものを吐き出しながら、勢いに負けた体は吹き飛ばされて地面を転がった。
転がった先にちらりと見えたのは、池の周りにある大きな岩。
ああ、私はこれで死んじゃうのかな?
そう思った瞬間、今までの記憶が目まぐるしく流れ出した。
きっとこれが走馬燈なんだろうなーと思うと同時に、何かがおかしいことに気が付いた。
見えてきたのは、タブレットを手にもってネット検索をしている光景。検索しているのはとあるゲームの情報サイトだった。
ん? タブレット? そんなもの、見たことないはずなのに? てかタブレットってなんだ?
画面に書かれている内容はとある乙女ゲームの記事だった。
時折出てくるイラストには、なんか私がいる。しかも絞首台の上にいて、首にはロープがーー。え、私は処刑されるの? なんでー? どうしてー?
こんなの知らないのに、知らない記憶のはずなのに、私はこの記憶を知っている。
そう思った瞬間、激しい頭痛に見舞われる。
が、それも一瞬のこと。
ムーちゃんの突進で地面を転がり続けた私は池の周りにある岩すら通り過ごしてそのまま池に落ちて気を失った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「のわあああああああああああああっ!」
奇声をあげながら飛び起きると、そこは自室のベッドの上だった。本当に死んだと思ったがどうやら私は生きているみたいだ。
隣で「のひゃああああ」と同じく奇声を上げるメイドがいるが今はそれどころじゃない。
それどころじゃないのにメイドのアンがすごく邪魔してくる。
「お嬢様っ! 目を覚まされたのですね。大丈夫ですか。おかしなところはありませんか」
「……その声が頭に響いておかしくなりそう。お願い、ちょっと混乱しているから一人にして」
「あわわわ、他の人を呼んでまいりますっ! 旦那さまー。奥方様ー。お嬢様がーー」
アンは扉を蹴り破る勢いで開けて、そのまま走り去ってしまった。
いや、怪我人がいるんだからもう少し静かにしようよ。そうツッコミたいが本人がいないのでどうしようもない。
でも今の問題はそこじゃない。
意識を取り戻して混乱している頭を整理して、今の状況を確認する。
私の名前はヘンリー。ヘンリー・フォン・ブスガルト。ブスガルト公爵家の一人娘で結構かわいがられている。現在6歳。
これは私本人の記憶だ。そして、私にはもう一つの記憶がある。
ムーちゃんの突進で死にかけたことにより見えた走馬燈。そこに映ったものは私の知らない記憶だった。
それもそのはず、その記憶は私の前世の記憶だ。
走馬燈で見えた記憶によって、どうやら私は前世の記憶が蘇ったみたい。
前世ではどうしようもないオタクで、同人誌ばっかりあさっている女の子だったようだ。
そこはさして問題じゃない。前世は前世、現世は現世、だ。
前世の記憶が蘇ったことにより他の人が知らない知識を身につけられたが、結局はその程度。ちょっとばかし他の人より賢くなったなーぐらいにしか感じなかった。
問題はそこじゃない。前世の記憶が蘇ったことにより、私は自分の運命を知ってしまったのだ。
私が前世でこよなく愛した二次創作の同人誌。その元となっている作品のタイトルは『恋愛は破滅の後で』という乙女ゲームだった。
ヘンリーとは、この作品に登場するラスボス的悪役令嬢。
え、どうしよう。私って破滅しかない悪役令嬢みたいなんだけど。ていうか、あのゲーム、いろいろとやばい作品だったよね。マジでどうしようっ!
慌てて前世の記憶から覚えているゲームの内容を近くの紙に書き出すことにした。
「とりあえず、覚えていることはこのぐらいか」
書き出した紙を読みながら、現状を整理する。
『恋愛は破滅の後で』は女性だけでなく男性にまで人気な乙女ゲーム。
その人気は凄まじく、ゴールデンタイムでアニメ化するほどだ。
世界観はザ・ファンタジーなのに、魔法とか異能みたいなのは一切ない。舞台は学園で、主人公が入学してから卒業するまでの3年間が描かれている。その学園生活の中で攻略対象と恋仲になっていくというのがこのゲームの内容だ。
攻略対象は全部で4人。ただし、ゴールするまでの道のりはかなり険しい。
襲い掛かってくる悪役令嬢どもを蹴落とし、破滅に追いやって恋を成就させるというある意味ですごい作品だった。
ルート入るまで悪役令嬢を500人破滅に追いやらなければいけないとか頭がおかしい。
これだけ聞いていると、悪役令嬢ってなんだ? って気分になってくる。いや、製作者の頭がおかしすぎるでしょう。
そういえば、ネットで見た卒業式シーンのイラストには、主人公と攻略対象の4人と教師以外誰もいなかったなー。
まあ要するに、『恋愛は破滅の後で』という作品は乙女ゲームとしてではなくバカゲーとしてかなり有名になっていた。
途中で100人ぐらいのご令嬢が「ぐはぁぁぁぁ」とか言って、全員絞首台に連れていかれるとか、このゲームを作った製作者たちはぶっ飛んだ思考をしているに違いない。ほんと頭がおかしい。
主人公も主人公でちょっとだけ変わっている。乙女ゲームの主人公といえば、平民か男爵などの身分が低い貴族が定番で学園に入学すると「平民のくせに」とか「男爵令嬢風情が」みたいなことを言われて虐められるところから始まるのが王道だ。
だけど『恋愛は破滅の後で』は一味違う。なんと主人公は名探偵の孫娘だった。
そして一番最後に出てくる通称ラスボスことヘンリーと推理バトルが始まって、それに勝利することでめでたくゴールイン。
婚約破棄とかそんなんじゃなく、物的証拠と人々の証言によって相手を破滅させるという、ちょっとトチ狂った設定のゲーム。
これだけ聞いていると乙女ゲームじゃないよねってツッコミたい。どっからどう見ても推理サスペンスものだ。恋愛要素がちょっとあるからって乙女ゲームにするその思考。ぶっ飛んでる。
つまり、私の未来は主人公に言い負かされて破滅するという運命しかない!
これってかなりやばいよね。ルート分岐によって破滅するとかならともかく、どのルートでも破滅しか待っていない悪役令嬢って……。
私はいったいどうすればいいのっ!
いやいや、待て待て。まだ破滅すると決まったわけじゃない。あれはゲームの内容であって今の私の未来を描いたものじゃない。もしかしたら運命を回避することができるかもしれない。
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