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稼業が嫌で逃げたらそこは異世界だった
21.継承が、できない、だと!
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「あ、ありがとうございます」
リーナは、うれしそうな笑みを浮かべて熱いまなざしを俺に向けて来た。なんか犬耳と尻尾の幻覚が見える。ぶんぶんと振り回されて喜んでいる幻覚が見える。ちょっとかわいい。俺は思わずイリーナの頭を犬のように撫で、喉元を猫のように優しくなでてやる。
「よーしよしよしよし」
「く、くぅ~ん」
お、コレ、なんだか楽しいぞ。と一瞬思った自分を殴りたい。確かに、いぬっころを撫でていると思えば楽しいんだけど、相手は人間にかなり近いゴブリン。しかも姿は子供、なんかいけないことをしているような気がしてきたので、ある程度撫でまわしてやめた。ちょっと撫でまわしてしまったのは、あれだ、不可抗力的な何かがあったんだと思う。
「もう、やめてしまわれるのですか……」
ちょっととろんとした表情でそんなこと言われても困るんだけど。もし、罪悪感というパラメーターがあったとしたら、徐々に上がっていくシーンだと思う。
「ちょっと、な。それよりこれからのことを考えないとな。とりあえず最近異常発生しているというゴブリンについて調査、魔王軍的なモノだったら排除したい。けど……」
再び辺りを見回す。ゴブリンエンペラーを倒して逃げる者を虐殺したのは俺なんだけど、なぜか跪いているゴブリンたち。俺に対して復讐心的なものは今のところ感じられない。おれも鬼狩りの端くれ。もし敵意を鬼から向けられたら分かるからな。だから一緒に行動する分には問題ない。だけど、こいつらと一緒に行動して、他の人達に怪しまれないだろうか。
ゴブリンも一応魔物という敵に分類されている。意思がある、いわゆる『ボク、悪いゴブリンじゃないよ?』的な奴らなわけだけど、それをほかの人が信じるかとなると、正直分からない。
「でしたら、私の魔法を継承しますか?」
「魔法っていうのは、さっき言ってた亜空間魔法のことか?」
もしかして、魔法を相手に渡すような方法があるのだろうか。もし、俺が亜空間魔法を使えるようになれば、呼びたいときに呼び出せるようになるし、さっきまで考えていた、このゴブリンたちどうしよう問題も解決できる。
でもさ、俺、魔力ないんだよね。と言うことは、魔法自体使えないんじゃないだろうか。絶対に使えないだろうな。
「俺は魔力を持っていないから、たぶん継承しても無駄だと思うぞ」
「大丈夫ですよ。亜空間魔法は固有魔法に分類されます。固有魔法の一部は魔力を使わなくても発動できるんです。私の亜空間魔法がそうですね。継承さえできれば大丈夫です」
「そうか! じゃあやってくれ!」
魔法が使えるようになる、そう聞いてちょっとだけワクワクした自分がいることに気が付いた。俺には魔力なんてものがないと知って完全に諦めていたんだけど、まさかこんなところでゴブリンに魔法をもらうことが出来るなんて思いもしなかった。
未知なる力、それがどのように役に立つのかなんてまだ分からないけど、自分の知らない力が扱えるようになるというのは、ちょっとだけ心をくすぐるような刺激があった。
「ではやりますね。えっと、アレ? どうして? むむむむ」
最初は手をかざすだけであったが、何からうまくいかない様子。次第に俺の体をぺたぺたと障り、イリーナは唸り声を上げた。
少しだけくすぐったさを感じ、思わず声が漏れそうになるのを我慢した。
ぺたぺたと俺の体を触るイリーナはなんだか難しそうな顔をしている。何か困ったことでもあったのだろうかと、くすぐったさを我慢する以外の気が抜けていた時、イリーナの顔が急接近してきた。
「うぉ、急にどうした」
「いえ、それにしてもおかしい、おかしいんです!」
何をおかしいのか一切言わず、イリーナは諸刃の体をまさぐる。
『こういう時に何も抵抗せず、されるがままの諸刃。変態じゃ! 変態なのじゃ!』
この駄刀を今すぐお仕置きしてやりたいところだかが、近くにイリーナがいるせいでそれも出来ない。っく、のじゃロリめ! あとで覚えてろよ。
『なんか寒気がするのじゃ、風邪かのう……』
刀が風邪をひくかどうかはさておいて、イリーナはいまだに首を傾げてぺたぺた俺の体を触っていた。俺はいったいいつ解放されるのだろうか。
「えっとさっきから言ってるけど、何がおかしいんだ?」
「あのですね、困らないでください、怒らないでください。絶対、絶対にお願いします。打ち首だけはどうか」
イリーナは顔を真っ青にさせてがくがくと震えていった。その様子が周りのゴブリンたちに伝わる。主の為に、ということなのかはよく分からないけど、また急に頭を下げて何かを懇願してきた。
俺はイリーナにそっと手を差し伸べて、別に何も咎めるつもりはないことを伝える。
以前なら、鬼というだけで首を跳ねていたのに、異世界に来てちょっとだけ自分が緩くなったような気がした。まあ、わざと頭を下げて懇願して相手の油断を誘い、襲い掛かってくる鬼が今までいなかったわけじゃないけど。嘘つく鬼は気が胡散臭い感じに変化する。気まで操って相手を騙そうとしたり、殺気を隠すためにやっているのだが、それが逆に不自然な感じになる。けどこいつらはありのままだ。恐怖と敵意の気をビンビンと感じる。でも、それと同時に、俺に対する忠義の気も感じた。ようはこいつらは俺に勝てないということを分かっているのだ。
だからこちらには絶対に襲われないという確証を持てるわけだが、俺が怒るようなことっていったい何だろう。魔力が一切ないから受け渡しても使えねーじゃんって心の中で笑っているのだろうか。もしそうならこんなに怯えないような気がするんだけど……。
「継承の魔法が一切効かないんです。どういう理由かは分かりませんが……。私には、あなた様に亜空間魔法を受け渡すことが出来ません。申し訳ございません……」
「なんだ、そんなこと…………は?」
俺の一言にイリーナを含めたゴブリン全員が顔を青くした。イリーナに至っては「私の首を献上するので他の者にはご容赦を……」なんて言う始末。ぶっちゃけイリーナたちが亜空間魔法を継承できなかったことについて咎めるつもりはない。出来ないものは出来ない、それでいい。気になるのはなんでできないかってこと。魔力がなくて使えないから渡せない、であればなんとなくわかるんだけど、効かないってなに?
「一つ聞いていいか?」
「はい、何なりとご申しつけください」
「俺は魔力がないらしいんだけど、その継承の魔法が引き継げない原因ってそういうことじゃないのか?」
「いえ、それはないはずです。私達ゴブリンは元々魔力をほとんど持たない種族です。父のようなゴブリンエンペラークラスなら、たくさんの魔力を保有していますが。私も生まれてすぐは普通のゴブリンでした。ゴブリン帝国の皇族はある一定の年齢に達すると継承の儀を受け、亜空間魔法ができるようになります。その時に皇族としての正式な位にランクアップして、私のようなゴブリンインペリアルプリンセスへと至るのです。私の魔力もその時に手に入れたもの、元々私が持っていたわけではありません」
『なるほどのう』
のじゃロリが何かわかった風なことをいきなり言ってきたので、「黙れ」と言ってやる。
『ちょっと待つのじゃ、その扱いは酷いと思うのじゃっ!』
「いやだって、のじゃロリだし?」
『その疑問形な感じがとても腹立つのじゃっ!』
まるで駄々をこねる子供のようにぷんすかと怒るのじゃロリをたたいてやりたいところだが、流石にゴブリンたちの目の前でそれをやるのはちょっとなと思う。
「とりあえず、何が分かったのかだけ教えてくれ」
『はぁ、まったく、諸刃はダメダメじゃのう』
ほんと、人の心を逆なでしてくる奴だなこいつ。
『単に諸刃が魔法無効体質ってだけだと思うのじゃ。実際鬼狩りにそういう奴は結構いた……らしいのじゃ。諸刃もその体質を受けついでいるってだけじゃと思うのじゃが……』
のじゃロリのが言った言葉に、俺はちょっとだけ理解が追い付けなかった。
は、何それ、魔法無効か体質って…………強すぎじゃねぇ?
リーナは、うれしそうな笑みを浮かべて熱いまなざしを俺に向けて来た。なんか犬耳と尻尾の幻覚が見える。ぶんぶんと振り回されて喜んでいる幻覚が見える。ちょっとかわいい。俺は思わずイリーナの頭を犬のように撫で、喉元を猫のように優しくなでてやる。
「よーしよしよしよし」
「く、くぅ~ん」
お、コレ、なんだか楽しいぞ。と一瞬思った自分を殴りたい。確かに、いぬっころを撫でていると思えば楽しいんだけど、相手は人間にかなり近いゴブリン。しかも姿は子供、なんかいけないことをしているような気がしてきたので、ある程度撫でまわしてやめた。ちょっと撫でまわしてしまったのは、あれだ、不可抗力的な何かがあったんだと思う。
「もう、やめてしまわれるのですか……」
ちょっととろんとした表情でそんなこと言われても困るんだけど。もし、罪悪感というパラメーターがあったとしたら、徐々に上がっていくシーンだと思う。
「ちょっと、な。それよりこれからのことを考えないとな。とりあえず最近異常発生しているというゴブリンについて調査、魔王軍的なモノだったら排除したい。けど……」
再び辺りを見回す。ゴブリンエンペラーを倒して逃げる者を虐殺したのは俺なんだけど、なぜか跪いているゴブリンたち。俺に対して復讐心的なものは今のところ感じられない。おれも鬼狩りの端くれ。もし敵意を鬼から向けられたら分かるからな。だから一緒に行動する分には問題ない。だけど、こいつらと一緒に行動して、他の人達に怪しまれないだろうか。
ゴブリンも一応魔物という敵に分類されている。意思がある、いわゆる『ボク、悪いゴブリンじゃないよ?』的な奴らなわけだけど、それをほかの人が信じるかとなると、正直分からない。
「でしたら、私の魔法を継承しますか?」
「魔法っていうのは、さっき言ってた亜空間魔法のことか?」
もしかして、魔法を相手に渡すような方法があるのだろうか。もし、俺が亜空間魔法を使えるようになれば、呼びたいときに呼び出せるようになるし、さっきまで考えていた、このゴブリンたちどうしよう問題も解決できる。
でもさ、俺、魔力ないんだよね。と言うことは、魔法自体使えないんじゃないだろうか。絶対に使えないだろうな。
「俺は魔力を持っていないから、たぶん継承しても無駄だと思うぞ」
「大丈夫ですよ。亜空間魔法は固有魔法に分類されます。固有魔法の一部は魔力を使わなくても発動できるんです。私の亜空間魔法がそうですね。継承さえできれば大丈夫です」
「そうか! じゃあやってくれ!」
魔法が使えるようになる、そう聞いてちょっとだけワクワクした自分がいることに気が付いた。俺には魔力なんてものがないと知って完全に諦めていたんだけど、まさかこんなところでゴブリンに魔法をもらうことが出来るなんて思いもしなかった。
未知なる力、それがどのように役に立つのかなんてまだ分からないけど、自分の知らない力が扱えるようになるというのは、ちょっとだけ心をくすぐるような刺激があった。
「ではやりますね。えっと、アレ? どうして? むむむむ」
最初は手をかざすだけであったが、何からうまくいかない様子。次第に俺の体をぺたぺたと障り、イリーナは唸り声を上げた。
少しだけくすぐったさを感じ、思わず声が漏れそうになるのを我慢した。
ぺたぺたと俺の体を触るイリーナはなんだか難しそうな顔をしている。何か困ったことでもあったのだろうかと、くすぐったさを我慢する以外の気が抜けていた時、イリーナの顔が急接近してきた。
「うぉ、急にどうした」
「いえ、それにしてもおかしい、おかしいんです!」
何をおかしいのか一切言わず、イリーナは諸刃の体をまさぐる。
『こういう時に何も抵抗せず、されるがままの諸刃。変態じゃ! 変態なのじゃ!』
この駄刀を今すぐお仕置きしてやりたいところだかが、近くにイリーナがいるせいでそれも出来ない。っく、のじゃロリめ! あとで覚えてろよ。
『なんか寒気がするのじゃ、風邪かのう……』
刀が風邪をひくかどうかはさておいて、イリーナはいまだに首を傾げてぺたぺた俺の体を触っていた。俺はいったいいつ解放されるのだろうか。
「えっとさっきから言ってるけど、何がおかしいんだ?」
「あのですね、困らないでください、怒らないでください。絶対、絶対にお願いします。打ち首だけはどうか」
イリーナは顔を真っ青にさせてがくがくと震えていった。その様子が周りのゴブリンたちに伝わる。主の為に、ということなのかはよく分からないけど、また急に頭を下げて何かを懇願してきた。
俺はイリーナにそっと手を差し伸べて、別に何も咎めるつもりはないことを伝える。
以前なら、鬼というだけで首を跳ねていたのに、異世界に来てちょっとだけ自分が緩くなったような気がした。まあ、わざと頭を下げて懇願して相手の油断を誘い、襲い掛かってくる鬼が今までいなかったわけじゃないけど。嘘つく鬼は気が胡散臭い感じに変化する。気まで操って相手を騙そうとしたり、殺気を隠すためにやっているのだが、それが逆に不自然な感じになる。けどこいつらはありのままだ。恐怖と敵意の気をビンビンと感じる。でも、それと同時に、俺に対する忠義の気も感じた。ようはこいつらは俺に勝てないということを分かっているのだ。
だからこちらには絶対に襲われないという確証を持てるわけだが、俺が怒るようなことっていったい何だろう。魔力が一切ないから受け渡しても使えねーじゃんって心の中で笑っているのだろうか。もしそうならこんなに怯えないような気がするんだけど……。
「継承の魔法が一切効かないんです。どういう理由かは分かりませんが……。私には、あなた様に亜空間魔法を受け渡すことが出来ません。申し訳ございません……」
「なんだ、そんなこと…………は?」
俺の一言にイリーナを含めたゴブリン全員が顔を青くした。イリーナに至っては「私の首を献上するので他の者にはご容赦を……」なんて言う始末。ぶっちゃけイリーナたちが亜空間魔法を継承できなかったことについて咎めるつもりはない。出来ないものは出来ない、それでいい。気になるのはなんでできないかってこと。魔力がなくて使えないから渡せない、であればなんとなくわかるんだけど、効かないってなに?
「一つ聞いていいか?」
「はい、何なりとご申しつけください」
「俺は魔力がないらしいんだけど、その継承の魔法が引き継げない原因ってそういうことじゃないのか?」
「いえ、それはないはずです。私達ゴブリンは元々魔力をほとんど持たない種族です。父のようなゴブリンエンペラークラスなら、たくさんの魔力を保有していますが。私も生まれてすぐは普通のゴブリンでした。ゴブリン帝国の皇族はある一定の年齢に達すると継承の儀を受け、亜空間魔法ができるようになります。その時に皇族としての正式な位にランクアップして、私のようなゴブリンインペリアルプリンセスへと至るのです。私の魔力もその時に手に入れたもの、元々私が持っていたわけではありません」
『なるほどのう』
のじゃロリが何かわかった風なことをいきなり言ってきたので、「黙れ」と言ってやる。
『ちょっと待つのじゃ、その扱いは酷いと思うのじゃっ!』
「いやだって、のじゃロリだし?」
『その疑問形な感じがとても腹立つのじゃっ!』
まるで駄々をこねる子供のようにぷんすかと怒るのじゃロリをたたいてやりたいところだが、流石にゴブリンたちの目の前でそれをやるのはちょっとなと思う。
「とりあえず、何が分かったのかだけ教えてくれ」
『はぁ、まったく、諸刃はダメダメじゃのう』
ほんと、人の心を逆なでしてくる奴だなこいつ。
『単に諸刃が魔法無効体質ってだけだと思うのじゃ。実際鬼狩りにそういう奴は結構いた……らしいのじゃ。諸刃もその体質を受けついでいるってだけじゃと思うのじゃが……』
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