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公爵家ご令嬢は悪役になりたい!
3.噂の悪役令嬢がとってもかわいい件
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神のお告げで悪役令嬢になるって……俺の知っている悪役令嬢の定義と違う気がする。
俺の知識のほとんどは飛鳥の教えだ。ある意味あいつが教祖様と言ってもいいかもしれない。
飛鳥の教えでは、悪役令嬢とは、元々高貴な身分のご令嬢で、親に甘やかされるか婚約者にふさわしくあろうと努力する令嬢だ。そしてその努力は絶対に報われず、最終的には破滅する。たまにとてもいい人なのに破滅する可哀そうな令嬢とかいたな。というか、飛鳥に見せてもらったノベルに出てくる悪役令嬢はとてもいい子ばかりだった。
ヒーローが本当に好きで、好きすぎて、ヒーローに近づく女に強く当たってしまう性格なだけだったり、ただのツンデレなのにまわりが誰も理解してくれていないだけだったり……。
まあ、要するに悪役令嬢とは物語の産物であり、実際になるものではないと思うんだけどな。
いくら考えても俺にはよく分からない世界だった。
「悪役令嬢か……」
「だけどその悪役を目指すご令嬢の姿がすごくかわいくて、私、写真持ってます。見ます?」
「なんでそんなものがある」
『諸刃みたいじゃな。というか、話を聞いている限り、別に変な仕事じゃないとおもんじゃが。ワシの出番もなさそうじゃがな』
「いや、のじゃロリの出番は魚を捌く時だけだから。あ、その写真見せてください」
『諸刃はその認識を訂正するべきなのじゃあああああ』
喚くのじゃロリを無視して受付嬢から写真を受け取る。そこに映ったのは金髪でウェーブのかかった綺麗な髪とちょっとだけ強調された胸が特徴と可愛らしい女の子だった。顔つきがちょっとだけ童顔で、少し幼いような印象を受ける。確かにこれは可愛らしい。
こんな可愛らしい子が悪役を目指している?
悪役令嬢とといえば、吊り目で強くてきつめな顔が鉄板で髪型はドリルじゃないとダメっている裏定義があったような気がする。
ドリルについては分からないが、飛鳥が「悪役令嬢はね、ドリルが重要なの。ドリルのない令嬢はただのモブよ。悪役にふさわしくない。何なのこの作品!」とゲーム画面に向かって怒っていたところをたまに見かけたことがある。
写真の令嬢の雰囲気は、どちらかと言うと愛らしい雰囲気があるように見えた。なんていうか、悪役より主人公の方が似合ってそうは感じもする。それと同時に頭の中で、写真の令嬢が悪役っぽいことをするシーンを頭に思い浮かべてみた。
童顔な顔つきの小さい令嬢が、悪役になりきろうと必死に頑張りつつも、可愛らしさが表に出てしまい、最終的にほほえましいシーンにしかならないということに気が付く。
「これ、めっちゃ可愛いな。どうしよう、本当にこんな子がいるのか」
「ええ、この子は実在します。皆この可愛さに充てられて……悪役になりたいこの方から解雇を言い渡されるんです。だからこう報酬なのにずっと残り続けているんですよ」
顔を手で覆いながら、写真に向かって小さく「尊い……」という受付嬢に俺は賛同するように頷いた。
「確かに……尊いな……ん」
なぜか両端の服を引っ張られる。後ろを見るとイリーナとリセがヤンデレーな目をしていた。
「ねぇ、まだ? まだなの。なんで私と遊んでくれないの? 捨てるの」
「主殿……浮気ですか?」
二人が余計なことを言うもんだから、周りの冒険者も、今はなしている受付嬢も引いた表情を浮かべる。おかしいよな。俺何もしてないのに。こいつらの面倒を見てあげているだけなのにこの扱い……。
「ちょっとまて二人とも。あともうちょっとで話が終わるから、な、もうちょっと待とうな」
「「………………」」
こくりと頷いたので納得してもらったということだろう。俺は受付嬢の方に向き直り、依頼を受けるということを伝える。
「私の天使を汚さないで下さいねーーこの二股野郎っ!」
ダンっと強くテーブルをたたくように依頼受領の承認をしてくれた。受付嬢はキッと目を吊り上げて、例の公爵令嬢の写真を護るように懐にしまう。
さっさと行ってください的な雰囲気を出しているが、俺はまだ大事なことを訊いていないので受付嬢に迫った。すると周りからまた声が聞こえてくる。
「あの男、今度はあの受付嬢か……」
「浮気野郎最低っ!」
「あ、アレが、ハーレムか!」
最後のやつは何を言っているのか分からないが、大体の反応は「浮気野郎最低」だった。俺、浮気しているつもりも、こいつらと男女の関係になったつもりもないんだが。どちらかと言うと保護者的な立ち位置でいるつもりなんだが。なんか納得できない。
「ごほん、とりあえず、依頼に行く前にもう少し詳しい仕事内容を教えてくれません? 場所とご令嬢については分かりましたが、名前も何も分からないんですが」
「あなたに教える天使の名前なんてないわ。早く仕事に行ってさっさと帰ってきなさい。そして違約金を払うの。そうすれば私も、そして後ろの彼女たちも許してくれると思うわ」
再び後ろを振り向くと、ジト目のイリーナと構ってくれなくて寂しそうなリセが目に映る。こいつらとの関係は、保護者と子供だから、別に許すも何もない。というか、この受付嬢が途中で仕事を放棄したんだが、これは良いのだろうか。きっとよくないが……そうだな。
「分かりました。あとはこっちで何とかするか」
「っけ、さっさと違約金払いなさいよね。はい、依頼受領したから。ほら、早く払いなさい」
「いや、これから依頼主のところ直接聞きに行くから」
ぼそりと「あと、ここのギルド長のフィブリゾにクレームつけてやるから」と小さくぼやくと、受付嬢がちょっとだけ慌てた。
「ちょ、まって、ふざけ過ぎましたっ!」
「じゃあな。頑張って怒られろ。イリーナ、リセ。仕事決まったから行くよ」
俺はリセとイリーナを連れて、冒険者ギルドを出て行った。
後ろで慌てふためきながら俺のことを静止しようとする受付嬢をガン無視して、ギルマスにひどい対応をされたとチクってやった時のあの表情を見たら……ちょっと悪いことしたなと不覚にも罪悪感を感じてしまった。
まあでも、あの受付嬢の職務怠慢なところが原因っぽいし、「んもうっ、お前はいつもいつもーー」と言った具合に怒られていたので別に気にすることもないだろう。
俺はあの受付嬢の失態とお説教されている姿を見なかったことにした。
「ところで、どんな依頼を受けたの?」
「ん? どうしたリセ。珍しいな、お前が依頼のことを気にするなんて」
「別に大したことじゃないんだけど……依頼のお話で私たちを無視したでしょう? だからちょっと気になって。諸刃を奪う依頼なんて許さないんだからね!」
ぷんすかと怒るリセに呆れてしまう。依頼に対して嫉妬心を感じているリセのことを見ると、これもボッチの弊害か……と感じてしまい、少しだけ悲しい気持ちも湧いて来た。
「嫌なに、ただ可愛い女の子に指導しに行くだけだ。別にそんなひどい依頼を受けた訳じゃない」
「ちょっと待って、何その依頼……」
「不覚にもリセに同意してしまいました。主殿、これはいったいどういうことですか……」
じっと二人から見つめられる。その瞳には、光が宿っていなかった。
久々のヤンデレモード! いったいどこで地雷踏んだ? いや、さっきっから踏みまくっているような気がするんだけど……。
「「ねえ、犯罪を犯すの?」」
今の発言で、失言というか問題発言していることに気が付いた。
かわいい女の子を指導しに行くだけの仕事って……捉え方によっては犯罪臭しかしない。これは、まずったか?
俺の知識のほとんどは飛鳥の教えだ。ある意味あいつが教祖様と言ってもいいかもしれない。
飛鳥の教えでは、悪役令嬢とは、元々高貴な身分のご令嬢で、親に甘やかされるか婚約者にふさわしくあろうと努力する令嬢だ。そしてその努力は絶対に報われず、最終的には破滅する。たまにとてもいい人なのに破滅する可哀そうな令嬢とかいたな。というか、飛鳥に見せてもらったノベルに出てくる悪役令嬢はとてもいい子ばかりだった。
ヒーローが本当に好きで、好きすぎて、ヒーローに近づく女に強く当たってしまう性格なだけだったり、ただのツンデレなのにまわりが誰も理解してくれていないだけだったり……。
まあ、要するに悪役令嬢とは物語の産物であり、実際になるものではないと思うんだけどな。
いくら考えても俺にはよく分からない世界だった。
「悪役令嬢か……」
「だけどその悪役を目指すご令嬢の姿がすごくかわいくて、私、写真持ってます。見ます?」
「なんでそんなものがある」
『諸刃みたいじゃな。というか、話を聞いている限り、別に変な仕事じゃないとおもんじゃが。ワシの出番もなさそうじゃがな』
「いや、のじゃロリの出番は魚を捌く時だけだから。あ、その写真見せてください」
『諸刃はその認識を訂正するべきなのじゃあああああ』
喚くのじゃロリを無視して受付嬢から写真を受け取る。そこに映ったのは金髪でウェーブのかかった綺麗な髪とちょっとだけ強調された胸が特徴と可愛らしい女の子だった。顔つきがちょっとだけ童顔で、少し幼いような印象を受ける。確かにこれは可愛らしい。
こんな可愛らしい子が悪役を目指している?
悪役令嬢とといえば、吊り目で強くてきつめな顔が鉄板で髪型はドリルじゃないとダメっている裏定義があったような気がする。
ドリルについては分からないが、飛鳥が「悪役令嬢はね、ドリルが重要なの。ドリルのない令嬢はただのモブよ。悪役にふさわしくない。何なのこの作品!」とゲーム画面に向かって怒っていたところをたまに見かけたことがある。
写真の令嬢の雰囲気は、どちらかと言うと愛らしい雰囲気があるように見えた。なんていうか、悪役より主人公の方が似合ってそうは感じもする。それと同時に頭の中で、写真の令嬢が悪役っぽいことをするシーンを頭に思い浮かべてみた。
童顔な顔つきの小さい令嬢が、悪役になりきろうと必死に頑張りつつも、可愛らしさが表に出てしまい、最終的にほほえましいシーンにしかならないということに気が付く。
「これ、めっちゃ可愛いな。どうしよう、本当にこんな子がいるのか」
「ええ、この子は実在します。皆この可愛さに充てられて……悪役になりたいこの方から解雇を言い渡されるんです。だからこう報酬なのにずっと残り続けているんですよ」
顔を手で覆いながら、写真に向かって小さく「尊い……」という受付嬢に俺は賛同するように頷いた。
「確かに……尊いな……ん」
なぜか両端の服を引っ張られる。後ろを見るとイリーナとリセがヤンデレーな目をしていた。
「ねぇ、まだ? まだなの。なんで私と遊んでくれないの? 捨てるの」
「主殿……浮気ですか?」
二人が余計なことを言うもんだから、周りの冒険者も、今はなしている受付嬢も引いた表情を浮かべる。おかしいよな。俺何もしてないのに。こいつらの面倒を見てあげているだけなのにこの扱い……。
「ちょっとまて二人とも。あともうちょっとで話が終わるから、な、もうちょっと待とうな」
「「………………」」
こくりと頷いたので納得してもらったということだろう。俺は受付嬢の方に向き直り、依頼を受けるということを伝える。
「私の天使を汚さないで下さいねーーこの二股野郎っ!」
ダンっと強くテーブルをたたくように依頼受領の承認をしてくれた。受付嬢はキッと目を吊り上げて、例の公爵令嬢の写真を護るように懐にしまう。
さっさと行ってください的な雰囲気を出しているが、俺はまだ大事なことを訊いていないので受付嬢に迫った。すると周りからまた声が聞こえてくる。
「あの男、今度はあの受付嬢か……」
「浮気野郎最低っ!」
「あ、アレが、ハーレムか!」
最後のやつは何を言っているのか分からないが、大体の反応は「浮気野郎最低」だった。俺、浮気しているつもりも、こいつらと男女の関係になったつもりもないんだが。どちらかと言うと保護者的な立ち位置でいるつもりなんだが。なんか納得できない。
「ごほん、とりあえず、依頼に行く前にもう少し詳しい仕事内容を教えてくれません? 場所とご令嬢については分かりましたが、名前も何も分からないんですが」
「あなたに教える天使の名前なんてないわ。早く仕事に行ってさっさと帰ってきなさい。そして違約金を払うの。そうすれば私も、そして後ろの彼女たちも許してくれると思うわ」
再び後ろを振り向くと、ジト目のイリーナと構ってくれなくて寂しそうなリセが目に映る。こいつらとの関係は、保護者と子供だから、別に許すも何もない。というか、この受付嬢が途中で仕事を放棄したんだが、これは良いのだろうか。きっとよくないが……そうだな。
「分かりました。あとはこっちで何とかするか」
「っけ、さっさと違約金払いなさいよね。はい、依頼受領したから。ほら、早く払いなさい」
「いや、これから依頼主のところ直接聞きに行くから」
ぼそりと「あと、ここのギルド長のフィブリゾにクレームつけてやるから」と小さくぼやくと、受付嬢がちょっとだけ慌てた。
「ちょ、まって、ふざけ過ぎましたっ!」
「じゃあな。頑張って怒られろ。イリーナ、リセ。仕事決まったから行くよ」
俺はリセとイリーナを連れて、冒険者ギルドを出て行った。
後ろで慌てふためきながら俺のことを静止しようとする受付嬢をガン無視して、ギルマスにひどい対応をされたとチクってやった時のあの表情を見たら……ちょっと悪いことしたなと不覚にも罪悪感を感じてしまった。
まあでも、あの受付嬢の職務怠慢なところが原因っぽいし、「んもうっ、お前はいつもいつもーー」と言った具合に怒られていたので別に気にすることもないだろう。
俺はあの受付嬢の失態とお説教されている姿を見なかったことにした。
「ところで、どんな依頼を受けたの?」
「ん? どうしたリセ。珍しいな、お前が依頼のことを気にするなんて」
「別に大したことじゃないんだけど……依頼のお話で私たちを無視したでしょう? だからちょっと気になって。諸刃を奪う依頼なんて許さないんだからね!」
ぷんすかと怒るリセに呆れてしまう。依頼に対して嫉妬心を感じているリセのことを見ると、これもボッチの弊害か……と感じてしまい、少しだけ悲しい気持ちも湧いて来た。
「嫌なに、ただ可愛い女の子に指導しに行くだけだ。別にそんなひどい依頼を受けた訳じゃない」
「ちょっと待って、何その依頼……」
「不覚にもリセに同意してしまいました。主殿、これはいったいどういうことですか……」
じっと二人から見つめられる。その瞳には、光が宿っていなかった。
久々のヤンデレモード! いったいどこで地雷踏んだ? いや、さっきっから踏みまくっているような気がするんだけど……。
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