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7つのくてくてと放浪の賢者
弟子と師匠と呪われた宝物_2
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なんやかんやあったが、酒場のマスターから無事に金を受け取ったヴィスは、受け取った金の一部、30万ギリをアティーラに渡した。
掃除をしたら10万ギリと言ってしまった手前、30万を渡さないとアティーラも納得しないだろう。こういうところは意外と律儀にやるヴィスは、手をしっしと振りながら言った。
「ほら、金を稼いだならさっさと返金して来いよ。お前、このままギャンブルに使いそうだからな」
「うぐ、い、行くわよ。今すぐ8万ギリを返してくるわ!」
ヴィスがアティーラを追い出すかのように言い放つと、アティーラは引きつった顔をしながら慌てて出て行った。
おそらくヴィスが言わなければ本当にギャンブルに使っていたことだろう。
邪魔者を追い出したヴィスはセーラに向き直る。
「とりあえず飯にしようぜ。腹が減った」
「はい師匠。私がお金を出せばいいんですね」
「いや、まだ弟子にしたわけじゃないから今回は俺が出してやる。まずはそこで話し合おう」
「え、私を弟子にしてくれるんじゃ……」
「さっきは勢いで答えちまったからな。もう少し話を聞かせてくれ。なぜ弟子になりたいと思ったのかを」
「任せてください! 三日三晩語れます」
いや、そこまで語らなくていい。
さすがに三日三晩自分のことを語られるとなると、鋼のメンタルを持つヴィスでも恥ずかしさを感じてしまう。
「と、とりあえず行くぞ」
なんやかんやあってヴィスとセーラはご飯を食べに行くことにした。
◇◆◇◆◇◆
表通りにある『そこそこ雰囲気がいいのにお手頃なお値段で食べられるファミリー向けなレストラン』というキャッチフレーズを掲げている屋台に足を運んだ。
「てんちょー、とりあえずナマ一つ」
「べらんぼうめ、ウチにそんな商品ないわ。ウチにあるんわこれだけじゃ」
ヴィスとセーラの目の前に、胃袋を刺激するようなギトギト脂系の超濃厚パスタが置かれる。ニンニクと豚骨系のスープの香りにセーラとヴィスは顔をしかめた。
「ここのスープパスタ、匂いはあれだけどめちゃくちゃうまいんだよな。確か神聖セルーア帝国の方で流行ったって聞いたけど」
「し、師匠……これ、パスタじゃなくてラーメンです……」
「そうか、セルーアではこのパスタのことをラーメンと呼ぶのか……ふーん」
フォークでパスタをすくい、ずずずと音を立てて啜る。本来、音を出して啜るのはマナー違反だが、セルーアからやってきたと言われるこのスープパスタは啜るのがマナーだとヴィスは教わったことがある。
追加でニンニクを足し、一緒に貰ったご飯の上に少しのニンニクと豆板醤、スープパスタのスープをしみこませた海苔と言うセルーアの食材を乗せて口の中にかきこんだ。
「やっぱ上手いなここのスープパスタ!」
「いやだからラーメンですよ、師匠。しかもなかなか美味しいですね。お家系の濃厚ラーメンですか。これならセルーアでもかなり上位に入れますよ!」
「お、嬢ちゃん、この良さがわかるとかなかなかやるな」
「ええ、私はセルーア出身ですから! そしてラーメンは好物です、ドヤ!」
自分でドヤとかいう奴初めて見たなと思いながら、ヴィスはスープを啜る。スープまですべて飲み干したヴィスは、やっと本題に入ることにした。
「んで、セーラだったか。弟子にしてほしいってどういうこと?」
「ずずずずず……ん、えっと、何か言いました師匠?」
この屋台のスープパスタならぬラーメンはそこそこのボリュームがある。セーラの小さな口ではヴィスと同じ速さで食べることが出来ない。
まだ半分ちょっと残っているセーラは面を箸で掴みつつ、呆けた顔をしながらヴィスの方に視線を向けた。
「いや、悪い、食べ終わったら話そう」
セーラがコクリと頷くと、再びラーメンを食べ始める。そんなセーラの様子を伺いながら、最近こんなのばっかりだなとヴィスは思った。
(どうして俺が人の面倒を見ているんだろう。ラセルアに追い出されてからどうも調子が悪いんだよな……)
ため息をはくヴィスの横で、そんな苦労知らないとばかりにセーラはおいしそうにラーメンを啜っていた。
それから数分後、セーラがようやくラーメンを食べ終わった。
「くふぅ、満腹!」
とても満足そうな表情を浮かべるセーラに、屋台のてんちょーもまんざらでもなさそうな表情を浮かべた。セーラ、というか女の子にも満足してもらえるおいしさだったと喜んでいるのかもしれない。
この屋台は水がセルフサービスなので、ヴィスは自分とセーラの分の水をコップに入れて本題に入る。
「えっと、セーラ。お前に聞いておきたいんだが、弟子ってどういうことだ?」
「何言ってるんですか師匠! 弟子は弟子ですよ。私、感動しました。あの一発の攻撃で盗賊たちが宙を舞う光景、あれはまさしく私が目指す正義の姿。あなたについていけば、私は更なる高見に行けると思うんです」
「お、おう。更なる高見……ね」
盗賊たちとの戦い、と言っているが、ヴィスはまともに盗賊と戦った記憶はない。「女だぁ……」と言い続ける頭のおかしい奴らが、セーラに襲われている状況で邪魔してきたので蹴散らしただけだ。それに、ヴィスはだらしなくて腐った魚のような性根のダメ人間だが、全く持って戦えないわけではない。むしろ戦うのは得意な方で、ダメ人間になる前は、ラセルア含む女神たちと共に各地を旅して悪と戦ったりもしていた。
本音は、裕福に暮らす資金欲しさに無謀な挑戦をしてみたが、以外にも成果を出してしまったというだけだが。
「そういう訳で、私はあなたの戦う姿に感銘を受けました。是非とも私にあなたの技を教えてください!」
「え、普通に嫌ですけど」
「そ、そんな、そこを何とか! お願いします。この通り! 靴でも舐めますから!」
「ちょ、待て、マジでやめろ。こんなほかのお客がいるかもしれないところでアブノーマルなプレイをしてるって思われるだろう。人の目を気にしろよ」
「私は気にしません。見られるのには、パーティーとかパーティーとかパーティーで慣れていますので」
「いや気にしろよ!」
思わずツッコミを入れてしまった。勢いだけのイノシシ皇女に流石のヴィスも狼狽える。というか、皇女が「靴を舐めますから」とか言わないでほしいと強く思った。下手にセルーア人に見られれば間違いなく極刑ものである。皇女さまがヴィスに対して膝をついている光景もセルーア人の怒りをもらうポイントだろう。
「そういえば……この子どこかで見たことがあるような……」
てんちょーが不意にそんな言葉を漏らす。ヴィスは慌てながら誤魔化した。
「気のせいだよてんちょー。お勘定、ここに金置いておくから。ほら、お前も立て」
「え、あの、私を弟子にしてくれるんですか!」
「ああもう、とりあえず、話をするために場所を移すぞ!」
「私は別にここでもいいですけど。いいんですけど! 人目のつかない場所がいいっていうんなら従います……ぽ」
頬に手を添えて照れた仕草をするセーラに、ヴィスは少しだけ苛立ちを覚えた。
(こんな場所で誤解されそうなことするんじゃねぇよ)
本当は怒鳴ってやりたい衝動を抑えつつ、てんちょーにお金を渡して屋台を出ようとした。
「ちょ、お客さん! あとで女児誘拐した件で憲兵さんに連絡しておくから」
そしてすぐにてんちょーの元に戻ってくる。ヴィスは、店長の胸倉をつかんで、顔を近づけた。少しでも間違えば唇が触れてしまいそうなぐらい近い。
「いいかてんちょー。こいつは知り合いだ。そしてこれからの人生、進路の相談をしている」
「あれか、幼な妻的な立ち位置か。やっぱり憲兵に……」
「違う! 全然違う。俺はロリコンじゃない。進路の相談っていうのは、あいつが俺の弟子になりたいって言っていたんだ」
「という理由で花嫁修業を……」
「だからいい加減こっちの話を聞けよ。武術の弟子みたいなもんだ。その話をするために場所を変えるの。誘拐じゃないし、変なこともしないから。分かった?」
「仕方ない、今回はそういうことにしておいてやる」
「頼むぞてんちょー」
話が付いたヴィスは、セーラを連れて隠れ家に向かう。
「あの、師匠? もしかしててんちょーさんと付き合ってるんですか。人の恋愛についてとやかく言うつもりはありませんが、その、同姓の恋愛って大変だと思うんですけど頑張ってください!」
「そんなんじゃないわっ!」
セーラの誤解を解くのは、隠れ家に着くまでかかった。
掃除をしたら10万ギリと言ってしまった手前、30万を渡さないとアティーラも納得しないだろう。こういうところは意外と律儀にやるヴィスは、手をしっしと振りながら言った。
「ほら、金を稼いだならさっさと返金して来いよ。お前、このままギャンブルに使いそうだからな」
「うぐ、い、行くわよ。今すぐ8万ギリを返してくるわ!」
ヴィスがアティーラを追い出すかのように言い放つと、アティーラは引きつった顔をしながら慌てて出て行った。
おそらくヴィスが言わなければ本当にギャンブルに使っていたことだろう。
邪魔者を追い出したヴィスはセーラに向き直る。
「とりあえず飯にしようぜ。腹が減った」
「はい師匠。私がお金を出せばいいんですね」
「いや、まだ弟子にしたわけじゃないから今回は俺が出してやる。まずはそこで話し合おう」
「え、私を弟子にしてくれるんじゃ……」
「さっきは勢いで答えちまったからな。もう少し話を聞かせてくれ。なぜ弟子になりたいと思ったのかを」
「任せてください! 三日三晩語れます」
いや、そこまで語らなくていい。
さすがに三日三晩自分のことを語られるとなると、鋼のメンタルを持つヴィスでも恥ずかしさを感じてしまう。
「と、とりあえず行くぞ」
なんやかんやあってヴィスとセーラはご飯を食べに行くことにした。
◇◆◇◆◇◆
表通りにある『そこそこ雰囲気がいいのにお手頃なお値段で食べられるファミリー向けなレストラン』というキャッチフレーズを掲げている屋台に足を運んだ。
「てんちょー、とりあえずナマ一つ」
「べらんぼうめ、ウチにそんな商品ないわ。ウチにあるんわこれだけじゃ」
ヴィスとセーラの目の前に、胃袋を刺激するようなギトギト脂系の超濃厚パスタが置かれる。ニンニクと豚骨系のスープの香りにセーラとヴィスは顔をしかめた。
「ここのスープパスタ、匂いはあれだけどめちゃくちゃうまいんだよな。確か神聖セルーア帝国の方で流行ったって聞いたけど」
「し、師匠……これ、パスタじゃなくてラーメンです……」
「そうか、セルーアではこのパスタのことをラーメンと呼ぶのか……ふーん」
フォークでパスタをすくい、ずずずと音を立てて啜る。本来、音を出して啜るのはマナー違反だが、セルーアからやってきたと言われるこのスープパスタは啜るのがマナーだとヴィスは教わったことがある。
追加でニンニクを足し、一緒に貰ったご飯の上に少しのニンニクと豆板醤、スープパスタのスープをしみこませた海苔と言うセルーアの食材を乗せて口の中にかきこんだ。
「やっぱ上手いなここのスープパスタ!」
「いやだからラーメンですよ、師匠。しかもなかなか美味しいですね。お家系の濃厚ラーメンですか。これならセルーアでもかなり上位に入れますよ!」
「お、嬢ちゃん、この良さがわかるとかなかなかやるな」
「ええ、私はセルーア出身ですから! そしてラーメンは好物です、ドヤ!」
自分でドヤとかいう奴初めて見たなと思いながら、ヴィスはスープを啜る。スープまですべて飲み干したヴィスは、やっと本題に入ることにした。
「んで、セーラだったか。弟子にしてほしいってどういうこと?」
「ずずずずず……ん、えっと、何か言いました師匠?」
この屋台のスープパスタならぬラーメンはそこそこのボリュームがある。セーラの小さな口ではヴィスと同じ速さで食べることが出来ない。
まだ半分ちょっと残っているセーラは面を箸で掴みつつ、呆けた顔をしながらヴィスの方に視線を向けた。
「いや、悪い、食べ終わったら話そう」
セーラがコクリと頷くと、再びラーメンを食べ始める。そんなセーラの様子を伺いながら、最近こんなのばっかりだなとヴィスは思った。
(どうして俺が人の面倒を見ているんだろう。ラセルアに追い出されてからどうも調子が悪いんだよな……)
ため息をはくヴィスの横で、そんな苦労知らないとばかりにセーラはおいしそうにラーメンを啜っていた。
それから数分後、セーラがようやくラーメンを食べ終わった。
「くふぅ、満腹!」
とても満足そうな表情を浮かべるセーラに、屋台のてんちょーもまんざらでもなさそうな表情を浮かべた。セーラ、というか女の子にも満足してもらえるおいしさだったと喜んでいるのかもしれない。
この屋台は水がセルフサービスなので、ヴィスは自分とセーラの分の水をコップに入れて本題に入る。
「えっと、セーラ。お前に聞いておきたいんだが、弟子ってどういうことだ?」
「何言ってるんですか師匠! 弟子は弟子ですよ。私、感動しました。あの一発の攻撃で盗賊たちが宙を舞う光景、あれはまさしく私が目指す正義の姿。あなたについていけば、私は更なる高見に行けると思うんです」
「お、おう。更なる高見……ね」
盗賊たちとの戦い、と言っているが、ヴィスはまともに盗賊と戦った記憶はない。「女だぁ……」と言い続ける頭のおかしい奴らが、セーラに襲われている状況で邪魔してきたので蹴散らしただけだ。それに、ヴィスはだらしなくて腐った魚のような性根のダメ人間だが、全く持って戦えないわけではない。むしろ戦うのは得意な方で、ダメ人間になる前は、ラセルア含む女神たちと共に各地を旅して悪と戦ったりもしていた。
本音は、裕福に暮らす資金欲しさに無謀な挑戦をしてみたが、以外にも成果を出してしまったというだけだが。
「そういう訳で、私はあなたの戦う姿に感銘を受けました。是非とも私にあなたの技を教えてください!」
「え、普通に嫌ですけど」
「そ、そんな、そこを何とか! お願いします。この通り! 靴でも舐めますから!」
「ちょ、待て、マジでやめろ。こんなほかのお客がいるかもしれないところでアブノーマルなプレイをしてるって思われるだろう。人の目を気にしろよ」
「私は気にしません。見られるのには、パーティーとかパーティーとかパーティーで慣れていますので」
「いや気にしろよ!」
思わずツッコミを入れてしまった。勢いだけのイノシシ皇女に流石のヴィスも狼狽える。というか、皇女が「靴を舐めますから」とか言わないでほしいと強く思った。下手にセルーア人に見られれば間違いなく極刑ものである。皇女さまがヴィスに対して膝をついている光景もセルーア人の怒りをもらうポイントだろう。
「そういえば……この子どこかで見たことがあるような……」
てんちょーが不意にそんな言葉を漏らす。ヴィスは慌てながら誤魔化した。
「気のせいだよてんちょー。お勘定、ここに金置いておくから。ほら、お前も立て」
「え、あの、私を弟子にしてくれるんですか!」
「ああもう、とりあえず、話をするために場所を移すぞ!」
「私は別にここでもいいですけど。いいんですけど! 人目のつかない場所がいいっていうんなら従います……ぽ」
頬に手を添えて照れた仕草をするセーラに、ヴィスは少しだけ苛立ちを覚えた。
(こんな場所で誤解されそうなことするんじゃねぇよ)
本当は怒鳴ってやりたい衝動を抑えつつ、てんちょーにお金を渡して屋台を出ようとした。
「ちょ、お客さん! あとで女児誘拐した件で憲兵さんに連絡しておくから」
そしてすぐにてんちょーの元に戻ってくる。ヴィスは、店長の胸倉をつかんで、顔を近づけた。少しでも間違えば唇が触れてしまいそうなぐらい近い。
「いいかてんちょー。こいつは知り合いだ。そしてこれからの人生、進路の相談をしている」
「あれか、幼な妻的な立ち位置か。やっぱり憲兵に……」
「違う! 全然違う。俺はロリコンじゃない。進路の相談っていうのは、あいつが俺の弟子になりたいって言っていたんだ」
「という理由で花嫁修業を……」
「だからいい加減こっちの話を聞けよ。武術の弟子みたいなもんだ。その話をするために場所を変えるの。誘拐じゃないし、変なこともしないから。分かった?」
「仕方ない、今回はそういうことにしておいてやる」
「頼むぞてんちょー」
話が付いたヴィスは、セーラを連れて隠れ家に向かう。
「あの、師匠? もしかしててんちょーさんと付き合ってるんですか。人の恋愛についてとやかく言うつもりはありませんが、その、同姓の恋愛って大変だと思うんですけど頑張ってください!」
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