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春待ち姫
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緑に囲まれた大きなお城。そこには、王様とお妃様が住んでいました。この二人の間には、それはそれは可愛いローダンと言う名のお姫様がありました。ローダン姫は二人の愛をたっぷり受けて、とても美しく成長しました。優しく綺麗なローダン姫には、ただ一つだけ、残念なところがありました。それは、自分の好きなものばかり食べている事です。毎日お菓子ばかりを食べていたローダン姫は、とうとう病気になってしまいました。何日もベッドから出られなくなってしまったローダン姫の事を、王様とお妃様はとても心配していました。
そんなある日。
「こんにちは、お姫様」
「あら、カラン。今日も来てくれたの?」
森の妖精であるカランが、ローダン姫のベッドの傍の窓から顔を出しました。カランは、ローダン姫が病気になってしまった頃から、こうして毎日訪れるようになったのです。
「今日はね、庭のパンジーが咲いたよ。とても綺麗なんだよ」
「そう。もう春がそこまで来ているのね」
「もぐらくんも、やっと顔を出してくれたんだよ!僕、嬉しくてさ」
そして次の日。
「お姫様、今日は良い知らせがあるんだ」
「良い知らせ?」
「うん。庭の桜が咲きだしたんだ。春は目の前だ」
すると、ローダン姫はうっとりとして言いました。
「いいなぁ。私も春を見たいなぁ…」
「お姫様、君のか細い声じゃ、外で僕らと歌うことはできないよ。野菜を食べなくちゃ」
そう言って、カランは帰ってしまいました。ローダン姫は、その姿を見送りながら決めました。
「やぁ、元気かい」
ローダン姫は自信満々に笑います。
「カラン!こんにちは」
その声は、鈴のように透き通っていました。
「とても綺麗な声だね!どうしたんだい?」
「昨日、頑張って野菜を食べたの。そうしたらこんな声になれたのよ。ねぇ、これで貴方たちと遊べるでしょう?」
「ははっ。お姫様、君のそんなに細い足じゃ、いくら歌が歌えても、僕らと走り回ることはできないよ。肉を食べなきゃ」
そう言って、カランは去ってしまいます。ローダン姫はとてもがっかりしていましたが、やがて決めました。
「やぁ、お姫様」
ローダン姫は、元気よく挨拶をすると言います。
「ねぇ、カラン。よーく見ててね」
するとローダン姫は、その場でジャンプをして見せました。
「昨日、頑張ってお肉を食べたの。そうしたらとても元気になったのよ。ねぇ、今度こそ貴方たちと遊べるでしょう?」
「そうだろう?お肉は体を丈夫にするんだよ。でもね、お姫様。いくら歌が歌えても、走り回れても、賢くないと外に出た時に悪い人に騙されてしまう。魚を食べなきゃ」
そう言って、カランは帰ってしまいました。ローダン姫は、悔しくて悲しくて泣いてしまいました。やがて、涙を拭くと、ローダン姫は決めました。
「やぁ、もうすっかり春だね。お姫様」
窓辺から聞こえてきた声に、ローダン姫は読んでいた本から顔を上げて、笑いかけました。
「あら、こんにちは」
「あれっ?その本、どうしたんだい?」
「昨日、頑張ってお魚を食べたの。そしたら、部屋の本の内容がよく分かるようになったのよ。もう、全部読んじゃった。ねぇ、今度こそ貴方たちと遊べるでしょう?」
すると、カランはにっこりとほほ笑んだ。
「もちろんだよ。よく頑張ったね。君はもう、僕らと歌って、走り回れる。悪い人にも騙されることはない。明日、庭に出ておいで。一緒に遊ぼう。お姫様!」
カランはそう言ってローダン姫に小指を差し出しました。
「やった!約束よ。カラン」
ローダン姫も嬉しそうに笑い、カランの小指に自分の小指を絡めて指切りをしました。
そして、待ちに待った次の日。ローダン姫は胸を弾ませながら、庭へ飛び出しました。日差しは暖かく、花々の匂いが広がっています。
「やぁ!お姫様、遊ぼう!」
そう言って、カランは桜の木からローダン姫の傍に降り立ちました。しかし、ローダン姫はこちらを見ません。
「カラン?ねぇ、どこにいるの?」
「僕はここにいるよ!」
「見えない…。どこ?ねぇ、貴方はどこなの?一緒に遊ぼうよ!カラン…」
ローダン姫の大きな瞳に涙が浮かびます。
「ここにいるよ…?お姫様!」
しかし、カランの声も、その姿も、とうとうローダン姫には見えませんでした。
「…そっか。もうお別れなんだね」
カランは悲しそうに呟きます。
「…どこ…?カラン…」
ローダン姫はついにうずくまって泣き出してしまいました。
「大丈夫。大丈夫だよ。ローダン。見えなくても、僕は君の傍にいる」
カランはローダン姫の頬に優しく触れて囁きます。ローダン姫の頬を春の風がそっと撫でました。
「カラン…?」
ローダン姫が顔を上げると、ピンク色の可愛いローダンセの花が揺れていました。
その花言葉は「終わりのない友情」。
やっと待ちわびた春がやってきたのです。
そんなある日。
「こんにちは、お姫様」
「あら、カラン。今日も来てくれたの?」
森の妖精であるカランが、ローダン姫のベッドの傍の窓から顔を出しました。カランは、ローダン姫が病気になってしまった頃から、こうして毎日訪れるようになったのです。
「今日はね、庭のパンジーが咲いたよ。とても綺麗なんだよ」
「そう。もう春がそこまで来ているのね」
「もぐらくんも、やっと顔を出してくれたんだよ!僕、嬉しくてさ」
そして次の日。
「お姫様、今日は良い知らせがあるんだ」
「良い知らせ?」
「うん。庭の桜が咲きだしたんだ。春は目の前だ」
すると、ローダン姫はうっとりとして言いました。
「いいなぁ。私も春を見たいなぁ…」
「お姫様、君のか細い声じゃ、外で僕らと歌うことはできないよ。野菜を食べなくちゃ」
そう言って、カランは帰ってしまいました。ローダン姫は、その姿を見送りながら決めました。
「やぁ、元気かい」
ローダン姫は自信満々に笑います。
「カラン!こんにちは」
その声は、鈴のように透き通っていました。
「とても綺麗な声だね!どうしたんだい?」
「昨日、頑張って野菜を食べたの。そうしたらこんな声になれたのよ。ねぇ、これで貴方たちと遊べるでしょう?」
「ははっ。お姫様、君のそんなに細い足じゃ、いくら歌が歌えても、僕らと走り回ることはできないよ。肉を食べなきゃ」
そう言って、カランは去ってしまいます。ローダン姫はとてもがっかりしていましたが、やがて決めました。
「やぁ、お姫様」
ローダン姫は、元気よく挨拶をすると言います。
「ねぇ、カラン。よーく見ててね」
するとローダン姫は、その場でジャンプをして見せました。
「昨日、頑張ってお肉を食べたの。そうしたらとても元気になったのよ。ねぇ、今度こそ貴方たちと遊べるでしょう?」
「そうだろう?お肉は体を丈夫にするんだよ。でもね、お姫様。いくら歌が歌えても、走り回れても、賢くないと外に出た時に悪い人に騙されてしまう。魚を食べなきゃ」
そう言って、カランは帰ってしまいました。ローダン姫は、悔しくて悲しくて泣いてしまいました。やがて、涙を拭くと、ローダン姫は決めました。
「やぁ、もうすっかり春だね。お姫様」
窓辺から聞こえてきた声に、ローダン姫は読んでいた本から顔を上げて、笑いかけました。
「あら、こんにちは」
「あれっ?その本、どうしたんだい?」
「昨日、頑張ってお魚を食べたの。そしたら、部屋の本の内容がよく分かるようになったのよ。もう、全部読んじゃった。ねぇ、今度こそ貴方たちと遊べるでしょう?」
すると、カランはにっこりとほほ笑んだ。
「もちろんだよ。よく頑張ったね。君はもう、僕らと歌って、走り回れる。悪い人にも騙されることはない。明日、庭に出ておいで。一緒に遊ぼう。お姫様!」
カランはそう言ってローダン姫に小指を差し出しました。
「やった!約束よ。カラン」
ローダン姫も嬉しそうに笑い、カランの小指に自分の小指を絡めて指切りをしました。
そして、待ちに待った次の日。ローダン姫は胸を弾ませながら、庭へ飛び出しました。日差しは暖かく、花々の匂いが広がっています。
「やぁ!お姫様、遊ぼう!」
そう言って、カランは桜の木からローダン姫の傍に降り立ちました。しかし、ローダン姫はこちらを見ません。
「カラン?ねぇ、どこにいるの?」
「僕はここにいるよ!」
「見えない…。どこ?ねぇ、貴方はどこなの?一緒に遊ぼうよ!カラン…」
ローダン姫の大きな瞳に涙が浮かびます。
「ここにいるよ…?お姫様!」
しかし、カランの声も、その姿も、とうとうローダン姫には見えませんでした。
「…そっか。もうお別れなんだね」
カランは悲しそうに呟きます。
「…どこ…?カラン…」
ローダン姫はついにうずくまって泣き出してしまいました。
「大丈夫。大丈夫だよ。ローダン。見えなくても、僕は君の傍にいる」
カランはローダン姫の頬に優しく触れて囁きます。ローダン姫の頬を春の風がそっと撫でました。
「カラン…?」
ローダン姫が顔を上げると、ピンク色の可愛いローダンセの花が揺れていました。
その花言葉は「終わりのない友情」。
やっと待ちわびた春がやってきたのです。
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