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おばあちゃんの話は長いというか、訛りがひどくて理解できないときがある
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朝起きると、ミチル君も、サシャもサモナーもいなくなっていた。嫌な予感がして、俺は電話番号を交換していたカワウチ君に連絡を取る。
「カワウチ君!うちのサモナーたちはそっちに行ってないか?」
電話口で川口君は眠そうに「きてないっすけど……」と言葉を濁した。
「どうしたんだ?」
「うちの婆がなんか言いたげにしてるんで、換わります」
数秒後には、ルシアン女王の声が聞こえてきた。
「ふむ、ずいぶんと奇怪な小道具じゃ。相手の声を届けるとは」
「すみませんが急いでいるので早くご用件を……」
「おぬしの元にいた虫たちがいなくなっているのであろう。十中八九、バンと戦いに行ったに違いない」
俺は、携帯を握り締める。
恐れていることを女王に言い当てられて、狼狽していた。
「おぬしは、妾にこう質問したかったのではないか?『妾の魅了を町全体に広げ、その効果内で魔力を使ったら居場所は特定できるのか』と。答えは、可じゃ」
ルシアン女王は、俺は彼女に一番聞きたくて昨日は聞けなかったことを言った。
「おぬしは、無謀にもバンを単独で追おうとしておった。そんなの目を見れば分かるし、理由はおぬしが自分の口で話しておる。バンの過去を見て、それに同調したとな。ならば、おぬしに無茶をさせまいと虫たちがどのように動くのかは想像できる」
ルシアン女王は、俺と交渉しようとしている。
サモナーやミチル君の行方を教える代わりに、何かを差し出せと言おうとしている。女王が求めるものを、俺は持っている自信がない。
「どうすれば、騎士の場所を教えてくれるんですか?」
電話口で、ルシアンが笑ったのが分かった。
「おぬしにとっては当たり前のことかも知れぬが、妾はともかく言質をとっておきたい性質なのじゃ」
すぅっとルシアン女王が息を呑んだ。
「妾がもしも消え去ったら、カワウチの身柄をおぬしに守ってほしい」
ルシアン女王の言葉は、俺には意外なものであった。
「妾は、虫たちとは違い老いて死んだ身じゃ。寿命ということで突発的に消えるかもしれぬし、使える魔術も魅了のみじゃ。だから、妾は近いうちに消え去るであろう。そのとき、カワウチの身を守ってくれる虫がいなければ妾も困る」
俺は、心の底から女王に敬意を払いたくなった。
こんなふうに子供をちゃんと守ってくれる人は、本当に少ない。
「あなたとの約束は出来る限り守ります、女王様。俺は教師だから、あなたと約束しなくともカワウチ君のことはできるかぎり守るつもりでいました」
「おぬしはまだ若いから分からぬかもしれぬが、信用が置ける人物の言質こそ最も安心できるものなのじゃ。さて、おぬしはバンを見つけてどうするつもりだったのじゃ」
俺は女王様に、自分の武器のことを話した。
「おぬしは馬鹿じゃな」
そして、断定された。
「老いているとは言え、騎士相手にナイフで勝負挑んでどうする気だったのじゃ?悪いが、おぬしが五百人いようとバンには勝てん。順番に殺されるのが落ちじゃ」
「魔力は、俺のほうが強いから」
「その魔力を使うすべが、武器製作の一種しかないんじゃろうが」
ルシアン女王に冷静に言われて、俺は黙り込む。
「おぬしは妾の死後を任せる約束をしておるからな、おぬしを生かすために助言をしてやる。おぬしやカワウチのような魔力提供者が近くにいなければ、妾たちゴーストは魔術を行使することはできん」
言われてみると、サシャもルシアン女王もミチル君やカワウチ君を連れ立って現れた。魔力提供者なんて弱点にしかならないのに。
「じゃあ、昨日のバンが現れたときも近くに魔力提供者がいたのか!」
「おそらく、妾に操られておる振りをしとったはずじゃ。あの場では、探すのが困難だった故に、話題にはしなかったがのう」
だが、分からないことがある。
サモナーだ。
あいつは、俺から離れてどうやって戦う気なのだろうか。
「……」
俺は、自分の迂闊さに頭が痛くなった。
サモナーは魔術師ではない。名前のとおりに召還師でもない。
彼は、魔法使いである。
生前がそうであったように、自前の魔力でサモナーは魔法を使えるのである。
「ルシアン女王。俺にバンの現在位置を教えてください」
俺は、今度こそサモナーを救うのだ。
「カワウチ君!うちのサモナーたちはそっちに行ってないか?」
電話口で川口君は眠そうに「きてないっすけど……」と言葉を濁した。
「どうしたんだ?」
「うちの婆がなんか言いたげにしてるんで、換わります」
数秒後には、ルシアン女王の声が聞こえてきた。
「ふむ、ずいぶんと奇怪な小道具じゃ。相手の声を届けるとは」
「すみませんが急いでいるので早くご用件を……」
「おぬしの元にいた虫たちがいなくなっているのであろう。十中八九、バンと戦いに行ったに違いない」
俺は、携帯を握り締める。
恐れていることを女王に言い当てられて、狼狽していた。
「おぬしは、妾にこう質問したかったのではないか?『妾の魅了を町全体に広げ、その効果内で魔力を使ったら居場所は特定できるのか』と。答えは、可じゃ」
ルシアン女王は、俺は彼女に一番聞きたくて昨日は聞けなかったことを言った。
「おぬしは、無謀にもバンを単独で追おうとしておった。そんなの目を見れば分かるし、理由はおぬしが自分の口で話しておる。バンの過去を見て、それに同調したとな。ならば、おぬしに無茶をさせまいと虫たちがどのように動くのかは想像できる」
ルシアン女王は、俺と交渉しようとしている。
サモナーやミチル君の行方を教える代わりに、何かを差し出せと言おうとしている。女王が求めるものを、俺は持っている自信がない。
「どうすれば、騎士の場所を教えてくれるんですか?」
電話口で、ルシアンが笑ったのが分かった。
「おぬしにとっては当たり前のことかも知れぬが、妾はともかく言質をとっておきたい性質なのじゃ」
すぅっとルシアン女王が息を呑んだ。
「妾がもしも消え去ったら、カワウチの身柄をおぬしに守ってほしい」
ルシアン女王の言葉は、俺には意外なものであった。
「妾は、虫たちとは違い老いて死んだ身じゃ。寿命ということで突発的に消えるかもしれぬし、使える魔術も魅了のみじゃ。だから、妾は近いうちに消え去るであろう。そのとき、カワウチの身を守ってくれる虫がいなければ妾も困る」
俺は、心の底から女王に敬意を払いたくなった。
こんなふうに子供をちゃんと守ってくれる人は、本当に少ない。
「あなたとの約束は出来る限り守ります、女王様。俺は教師だから、あなたと約束しなくともカワウチ君のことはできるかぎり守るつもりでいました」
「おぬしはまだ若いから分からぬかもしれぬが、信用が置ける人物の言質こそ最も安心できるものなのじゃ。さて、おぬしはバンを見つけてどうするつもりだったのじゃ」
俺は女王様に、自分の武器のことを話した。
「おぬしは馬鹿じゃな」
そして、断定された。
「老いているとは言え、騎士相手にナイフで勝負挑んでどうする気だったのじゃ?悪いが、おぬしが五百人いようとバンには勝てん。順番に殺されるのが落ちじゃ」
「魔力は、俺のほうが強いから」
「その魔力を使うすべが、武器製作の一種しかないんじゃろうが」
ルシアン女王に冷静に言われて、俺は黙り込む。
「おぬしは妾の死後を任せる約束をしておるからな、おぬしを生かすために助言をしてやる。おぬしやカワウチのような魔力提供者が近くにいなければ、妾たちゴーストは魔術を行使することはできん」
言われてみると、サシャもルシアン女王もミチル君やカワウチ君を連れ立って現れた。魔力提供者なんて弱点にしかならないのに。
「じゃあ、昨日のバンが現れたときも近くに魔力提供者がいたのか!」
「おそらく、妾に操られておる振りをしとったはずじゃ。あの場では、探すのが困難だった故に、話題にはしなかったがのう」
だが、分からないことがある。
サモナーだ。
あいつは、俺から離れてどうやって戦う気なのだろうか。
「……」
俺は、自分の迂闊さに頭が痛くなった。
サモナーは魔術師ではない。名前のとおりに召還師でもない。
彼は、魔法使いである。
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俺は、今度こそサモナーを救うのだ。
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