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 互いのことについて聞き合っていると時刻はすでに夕方に差し掛かろうとしていた。約束の時間までもう少しであり、そろそろ準備をしなくてはいけなくなった。彼女たちはもう少し聞きたいことがあったが約束に遅れるわけにはいかないと仕方がなく重たい腰を上げて身支度をした。と言っても町長の家に行くだけであり、特段気合を入れた身支度というわけでもない。多少髪を整えるのに時間を費やしただけで時間はあまりかからなかった。

「では、行きましょうか」
「ああ、そうだな。町長は私たちに何の用があるのだろうな」
「そうですよね。町長が私たちに用事があるから来てほしいと言うのは珍しい気がします」
「また新しい仕事を頼みたいとかだといいんだが、厄介なことにならなければいいな」
「そうですね。ただ、それを願うのみです」

 新しい仕事があるのであれば、彼女たちも暇を持て余すことはないから嬉しくはある。
 夜に近づいてきたからか人通りというものは少ない。ただ、思いの外閑散としすぎているような気がする。

「何かあるのでしょうか?」
「なんだろうな。今日は特別な日というわけではないのだが」

 少し不思議に思うものも永久に答えが出ない意味のない憶測するのも時間の無駄である。二人はそう思い、町長の家へと急ぐ。

「町長、来たぞ」

 クロスは荒々しく、扉を叩く。すると、すぐに扉が開いた。

「どうぞ、こちらへ」

 扉が町長の顔だけが見えるように微かに開かれる。二人はそのいつもとは違う行動に顔を見合わせてきょとんとするが言われた通りに家に入る。

「暗くないですか?」
「まぁまぁ、こちらに来てください」

 想定以上の部屋の暗さに二人は身構える。町長に案内されてどこかも分からない場所で待機させられる。すると、次の瞬間、明かりがつき、反射的に二人は目を閉じた。目が落ち着いたところで目を開けると自然に彼女は「うわぁ」と歓喜の声を上げた。

「なんですか、これ?」
「あなたたちが水不足を解消してくれたことに感謝を表そうと思い、この場を用意しました」

 彼女たちの前には豪華な食事とグラスが置かれ、ここだけ見れば貴族の食事会かと思うほどである。

「別にこんなことしなくといいのに」
「水不足は万年の問題だったが故に解決してくれたことは非常に感謝しているので」
「私は何もしてない」
「あなたが彼女を連れてこなければ問題は解決しなかったでしょう!」

 町長は機嫌がいいようで謙遜する二人は椅子に座らせ、半ば強制的に食事会が始まった。この食事会に参加している人は多く、町が閑散としていた理由がこれに起因するものだと気がついた。

 しかし、この厚意を素直に受け取れないのが二人である。アデリーナは聖女の力を使い、当たり前のことをしたまでだと思っているし、クロスもアデリーナが仕事をしたまでで自分は何もしていないと思っている。ただ、だからと言って彼らの厚意を無駄にするようなことは出来ず、やむを得ずに参加することになった。

「なんか予想していなかったことが起きてしまいましたね」
「そうだな。でも、これを無駄には出来ないから楽しむとしよう」
「ええ、そうしましょう」

 二人は貴族のパーティーに参加したことがある。だから、これがそれよりも華やかではないし、豪華ではなく、結局は庶民程度のパーティーであることを知っているが、それでもこのパーティーほど心踊るものはなかった。
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