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翌日、メルディにデッサンを見せた。

「これを作るのですか?」

「ええ、申し訳ないけど10日で出来るかしら?」

「何に使われるのでしょう?」

「いし拾いよ。」

「えっ。」

顔を顰められた。
貴族令嬢が宝石拾いに行くのは、やはり好ましくないのだろうか。

「あのクズやニートが行く、いし拾いですか?」

うん、実はこの世界にもニートという言葉がある。もちろん英語でも日本語でもなく、この世界の言葉だ。
ちなみに日本のニートとは違い、この世界のニートには年齢による卒業がない。
晴れて、ただの無職になるなんて事は、永遠に訪れないのだ。
って、卒業したかったら就職しなさいっ!

「クズやニートだけじゃないでしょ?宝石職人も行ってるはずよ。」

「それはそうですが・・・。」

「10日以内に出来る?」

「はい、それは問題ありません。」

「私も同じものをお願いします。」

後方から何かブッこんできた。

「何故、リリアーヌの物が居るの?」

「私も行きますので。」

「え?何で?女性の護衛が居れば、リリアーヌは来なくても大丈夫よ?」

「でしたら、私は、奥様と力を合わせて全力で反対に回りますが、宜しいでしょうか?」

リリアーヌが、ストレートに脅してきた。
ぐぬぬぬ・・・。

「私とリリアーヌの分をお願い。」

不承不承ながら、私はメルディに注文した。




当家で行われるお茶会の準備等で、お母様は忙しいらしく顔を合わせるのは食事の時くらいだ。
お陰で、宝石拾いに関しては何も言われない。

しめしめ。

そんな中、屋敷で飴屋の男性に出くわした。

「ほ、本日は、お、お日柄もよく。」

誰か結婚すんのか・・・。
緊張しまくっていた。

「お茶会の打ち合わせかしら?」

「は、はい。お嬢様のお陰で、この様な大役を。身命を賭して頑張りたいと。」

お茶会ごときに身命を賭けないで・・・。

「無理はしないようにね。」

「は、はい。」

恐縮したまま男は去っていった。

「可哀そうに・・・。」

後ろでボソっとリリアーヌが呟いた。

「何かあるの?」

「今回の件、ダリアは非常に遺憾に思っているはず。」

「そうなの?」

「お茶会を取り仕切るのは、ダリアですから。それをあんな飴細工の男性を関わらせるなんて、シマを荒らされた気分かと。」

どこのヤクザの話?

「ちょっとダリアの様子でも見ようかしら?」

「辞めておいた方がいいと思いますが?」

リリアーヌにそう言われると・・・。

よし、辞めとこう。
触らぬ神に祟りなしって言うしね。




お茶会当日。
私は、お茶会には参加しない。
それは私の我がままではなく、貴族では12歳に満たないものは、そういう催し物には参加しないのが通例だ。

まあ、どっちにしても私は参加しないが。

とりあえず、開始時間には、まだまだ時間があるので、気になった会場を見に行く事に。
今回は、屋外で行われるガーデニングバーティー形式で。

会場に着くと、私は感嘆の息を漏らした。

凄い、花が綺麗に飾られて、その中に、違和感ない感じで飴細工の花も飾られていた。

これは本当の花なの?
食べれるの?

って感じでクロヒメが首を傾げていた。

「ちょっ!クロヒメ駄目よ。食べては駄目っ!」

私は、急いでクロヒメに近づいた。

「ダリアっ!」

私の呼び声にダリアは直ぐに反応した。

「クロヒメには、これを。飾るときに欠けたりした物をとってあります。」

そう言って、ダリアは、私に飴細工を渡した。

「はい、クロヒメ、食べるならこれよ。」

お花?

首を傾げながらモソモソと一口。
その途端、目が細められた。

甘いのだろう。
うん、飴だからな。

美味しそうに、全て食べ終えクロヒメは満足したようだ。

「ダリア、私がクロヒメを厩舎に連れて行くわ。」

「申し訳ありません。よろしくお願いします。」

そうして、私は、クロヒメを厩舎へと連れて行った。

お茶会は大成功だったようで、参加者には、飴細工のお土産もあったようだ。

どんだけ頑張ったんだ、あの兄ちゃん・・・。
合掌。

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