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夕食前に3人での話し合いが行われる。
私、お父様、お母様の3人で。

「アウエリア、デッサンはうまくいったかしら?」

「はい、いい感じに。」

「それは、良かったわ。で、何の話なの?」

お母様が、お父様に聞いた。

「ああ、アウエリアの生母様の件なんだが・・・。」

「アウエリアの?元フォールド伯爵の奥方よね?確か亡くなっている?」

「ああそうだ。アウエリアを産んで直ぐに、お亡くなりになっている。」

「そうね。アウエリアを引き取るときに、そう聞いたわ。それで?」

「エカテリーナは、アウエリアの生母様と面識はあったのかい?」

「元フォールド伯爵の奥方・・・、ああっ!コンスタン・・・ス・・・さ・・・ま・・・。」

何かを思い出した様に、お母様は、私を見つめた。

「アウエリア、あの女にあったの?」

王妃様をあの女呼ばわりするのは、止めて欲しい。
お父様も同じ思いだろう、いい顔はしていない。

「王妃様にお会いしました。」

私は事実を告げた。

「そう、では、今日は一緒に寝ましょう。色々と話すこともあるでしょう。さあ、話しは終わりでしょ?夕食の時間よ。」

「い、いや・・・。」

お父様が何かを言おうとしたが。

「アウエリアのご生母様がコンスタンス様。それ以外に何かあるの?」

「いや・・・ない。」

3人の話し合いは、あっけなく終わった。

が、私には寝る時に試練がある。




その晩。
布団に入ると即寝が出来る私。
例え、隣に人が居たとしても、ぐっすりな、のび子さんではあるが。

ね、寝れねえ~。

「あの女は何か言ってたかしら?」

「えーと、生母の絵の予備があるとか・・・。」

「あら、そうなの?切ったり、塗りつぶしたりしてもいいなら飾っても構わないわ。」

ドン引きだ。
何をとは、言ってないが、何を切ったり塗りつぶしたりするのかなんて、聞かなくてもわかる。

「他には何か言ってなかった?」

「フォールド家が取り潰しになった時に、陛下に離縁を申し出たとか。」

「でしょうね。あの女のコンスタンス様への入れ込みなら、そうするでしょうね。」

「お母様は私の生母をご存知なのですか?」

「ええ、貴族学院で私が3年の時、コンスタンス様は1年だったのよ。」

「へえ、そうなんですか。」

「聞きたい?」

「す、少しは・・・。」

「遠慮しなくてもいいのよ?」

「私に、生母の記憶は全くありませんし、肖像画を見たのも今日が初めてなので。」

そう、だから、私には生母への思い入れが無い。

「それは、それで寂しいわね。」

「そうですね。」

「コンスタンス様の絵は、どんな風だったの?」

「優し気で深窓の令嬢という感じでした。何処かで病弱だったという噂を聞いた事があります。」

「確かに病弱であられたわね。見た目も麗しく、大人しくしていれば深窓の令嬢と言っても過言ではなかったわね。」

「大人しくしていれば?」

「そうそう、思い出したわ。テセウスの涙探し隊を結成したのは、コンスタンス様だったわね。」

何やってんの?私の生母は・・・。

「病弱だったんですよね?」

「ええ、興奮しすぎて、出発前に熱を出して、3日以上寝込んで、テセウスの涙探し隊は、解散になったわ。」

生母ぉ~っ!

「困ったお人だったわ。」

そう言って、何故か、覗き込むように私を見る。

「な、なんでしょう?」

「もし、コンスタンス様が健康な体だったら、どうなっていた事か、当時は、考えただけで恐ろしくなったのだけど・・・。」

ジーーーっと私を見つめるお母様。

「なんて事なの・・・、健康体のコンスタンス様・・・。」

「わ、私は生母とは違いますよ?」

「テセウスの涙を見つけたのは誰だったかしら?」

「・・・。」

「やはり、屋敷に監禁するべきかしら。」

ちょっ、やめてーっ!
もう監禁って、言ってるぅ・・・。
しかも、お母様のお目目がマジだ。

今日は寝れそうにないと思っていたのだけども。
そんなことは無く、zzz・・・。




「アウエリアを屋敷に監禁しようと思うのだけども。」

朝食の緩やかな時間が、一瞬で凍結した。

「な、何を言ってるんだ・・・。」

お父様が何とか声を絞り出す。

「あ、姉上・・・、さすがに監禁は・・・。」

叔父様も援護してくれる。

「・・・。」

ビルは絶句してる。
そりゃあ、そうだろ、朝っぱらからの爆弾発言だ。私も何も言えない。

「では、多数決にしましょう。あなたたちも参加しなさい。」

そうお母様は、鉄仮面三姉妹にも声を掛けた。

いやいや、ここには、絶対的な私の味方、家令のコットンが居ない。
不利じゃね?

「アウエリアを監禁した方がいいと思う人。」

自ら手を上げて、挙手を促すお母様。
しかし、それに準ずる者は・・・。

り、リリアーヌっ!
リリアーヌっ、お前もかっ!

まさか、異世界転生して、ユリウスの心情がわかるとは・・・。

「他には?」

他に挙手する者は居なかった。

せ~ふっ!

「くっ、ここにユリアナが居れば、私の気持ちがわかってくれたものを・・・。」

ユリアナ・イデ・アーマード。
サスロ叔父様の妻で、私の叔母である。

「気が済んだか、エカテリーナ。」

「あなたは、アウエリアの中に流れる血の恐ろしさを知らないからっ!」

「コンスタンス様の事を言っているのか?」

「ええ、そうよ。」

「コンスタンス様が問題を起こした話など、聞いた事が無い。サスロはどうだ?」

「聞いた事が無いな。ユリアナなら多少は知っているかもだが。」

「多少、お転婆だとしても、監禁なんてとんでもない。」

待って、お父様。
私、多少、お転婆なのか?えっ?
転生してるぶん、精神年齢は大人だ。
見た目は子供、頭脳は高校生(ガキ)の眼鏡探偵よりも、大人なはず。
朧気な記憶に社会人だった記憶もある。
ちょっと背伸びしてる子供に見られていたらいいなあと思っていたが、まさかの完全な子供扱い。
しかも、お転婆だと?

「多少?アウエリアの行動が、多少なのですか?」

「・・・。」

お母様の反論に押し黙る、お父様。

ちょっ、そこは反論してほしい。

「発言を宜しいでしょうか?」

駄目だろ、リリアーヌは黙ってろ。

「構わないわ。」

「では。お嬢様は、私が傍にあっても、消えてしまいます。」

まだ、いし拾いの時の事を・・・。

「完全に監禁とは言わないまでも、これまで以上に注意が必要かと。」

なんて事を・・・。

「よろしいでしょうか?」

ダリアが手をあげた。

味方だよね?私の味方だよね?

「構わないわ。」

「それはリリアーヌの能力がないという事では、ないでしょうか?お嬢様の側仕えの担当替えを提案します。」

ふごっ・・・。
み、味方ではあるっぽいが、敵の敵は味方な感じ。

「転移陣のトラップで消えたお嬢様を、どのように守れと?」

リリアーヌが反論する。

「そもそも、貴族令嬢が、いし拾いに行くこと自体がおかしいのです。」

「・・・。」

ダリアの正論に、リリアーヌが押し黙る。

これは、方向性として私には、良くない。
なんだかんだ言って、リリアーヌは私の行動を容認してくれていた。

ま、まずい・・・。

「そうねえ、でもアウエリアの側仕えを決めたのは私ではないし。」

お母様は、そう言って、お父様の方を見た。

「リリアーヌは、よくやってくれている。変更する気はない。」

せっ、せ~ふ・・・。

「ありがとうございます。」

リリアーヌは、一礼して壁際に戻った。




夕方。
いつものように私の部屋で休憩をとる鉄仮面三姉妹。
って、いつものってなんだ?
満点とはいかないでも、高得点で紅茶をいれられる私に、特訓は必要ないんですが?

「私から、お嬢様の側仕えの役目を奪おうなどとは、浅ましい。」

リリアーヌがダリアに言った。

「監禁に賛成した、あなたが何を言うんですか?」

ダリアが反論する。

「賛成する者が他に居ないと思いまして、賛成したまでです。まさかエルミナも賛成しないとは・・・。」

「さすがに監禁はやりすぎかと。」

「奥様の側仕えとしては、賛成すべきでは?」

「お嬢様の側仕えとしては反対すべきでは?」

エルミナが即、反論した。

「お転婆なお嬢様の側仕えとしては、賛成するのが正解と私は思っています。」

リリアーヌがキッパリと言った。

「ねえ、ちょっとまって。私はお転婆なの?」

私は、疑問に思っていた事を口にした。

「「「・・・。」」」

なんでやねんっ!
私、精神年齢は、あなたたちより、上なんですけどっ!

私の心の中の絶叫が空しく響く。
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