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「お姉さま、お姉さま。」
「なあに?」
「私が作ったケーキだと、3人では食べきれません。」
「そうね。余ったのは、アーマード家の使用人に下げ渡せばいいわ。」
「なるほど~。」
「では、お嬢様が作った物は私たちが。」
後ろからリリアーヌが言ってくる。
「何、全部食べようとしてるのよ。今日の夕食後に、私が作った物は、ピザート家で食べるに決まってるじゃない。」
「なっ・・・。」
愕然とするリリアーヌ。
お母様の後ろに控えているエルミナの表情も心なしか悲しそうだ。
「あ、あの私がこさえたものは、こちらに献上した方が・・・。」
申し訳なさそうに、おっさんが申し出てきた。
「お子さんがいるんでしょ?あなたが作った物は、お土産に持って帰ってあげて。」
私がそう言うと、おっさんは申し訳なさそうに引き下がった。
「ピザート家の面々が食べても、リリアーヌとエルミナ分くらいは残るから大丈夫よ。」
コットンやモーゼスといった男性陣には我慢してもらおう。
「私もいります。」
何故か、ダリアも申し出てきた。
「えっと・・・、ダリアの分ってまだ残ってるんでは?」
「料理長と副料理長に味見として渡しました。」
そ、そうだね・・・。
あの二人には味見として必要よね。
「リ、リリアーヌ。夕食後はいい感じに調整して、切ってちょうだい。」
「畏まりました。」
多分大丈夫だろ・・・うん。
アリスは可愛い。
午後は私の部屋で昼寝をしたりする。
わたしも一緒に昼寝をする時もあるが。
そんな癒し空間をぶち壊す奴が現れた。
丸めた紙を握りしめているシェリルだ。
こいつ、商会の人間のくせに、我が物顔で私の部屋に入ってくる。
「お嬢様、ご相談がありますっ。」
「あんた、アーマード商会の人間でしょ?何、私の部屋に入って来てるの?」
「えっ?ちゃんとノックしてますよ?」
「そう言う問題じゃあないでしょ。」
「私、お嬢様担当なので。」
駄目だ。話が通じない。
「で、相談って何?」
「この度、カフェの従業員がほぼ確定しました。」
「そうみたいね。」
あの上海かすてらのおっさんも決まったみたいだし。
「相談というのは、内装のお話です。」
「内装がどうしたの?」
「カフェという物は、お嬢様が発案しました。」
「ん?まあ、そうね。」
「なので、誰もわかりませんので、内装のデザインをお願いします。」
「・・・。」
め、面倒くせぇ~・・・。
「そんな面倒くさそうにせず。」
まじか~。
うあぁ・・・、思い付きで言う物じゃあないなあ。
「厨房はどうすんのよ?」
「ピザート家の料理人と実際働く人間の意見を取り入れる予定です。」
「ふむふむ。」
「それ以外を、お嬢様がお願いします。」
そう言って、図面を広げるシェリル。
「2階建てにするの?」
「はい、1階を一般用に、2階は、富裕層向けに。」
「2階もデザインするの?」
「いえ、2階は貸し切りにも出来るようにパーテーションで区切ります。」
「パーテーションじゃあ、隣の声が聞こえるんじゃないの?」
「吸音パーテーションを使用しますので、聞こえませんよ。」
「吸音パーテーションねえ。」
確か前世にも存在したけど、完全にシャットアウトするわけじゃあ、なかったような?
「吸音素材は、サウンドサンドの皮を使っていますので、完全防音となります。」
「何それ?」
「砂漠に住む大きいトカゲです。皮が吸音素材になっており、砂に潜り無音で近づきバグっと捕食します。」
「こわっ!人も食べられるの?」
「基本、動くものは何でも、バグっ!です。ただ自分より大きい物は、襲いません。」
「そ、そうなんだ・・・。」
うん、まあいいや、砂漠に行くことは無いはずだから。
「じゃあ、一階の持ち帰り用の売り場と一般客用のレイアウトを考えればいいのね?」
「はい、こういう感じというイメージでも構いませんので。」
非常に面倒ではあるが、言い出しっぺとしては仕方がない。飴屋と上海の仕事も決まってるし、今更、やめようなんて言えない。
「あ、そうそう。生地を作ってくれるリンウェイさんの奥方も働いてもらう事になりました。」
「あれ?お子さんがいるんじゃないの?」
「ピザート家の方で、預かってもらいます。」
「へえ・・・、そうなんだ。」
使用人の為の託児所や学校っぽいのがあるって聞いてたが、そういう所へ預けるんだろうなあ。
現在、私の部屋は異様な雰囲気に包まれていた。
1つ目のテーブルには。
アリスとお針子隊が。
アリスは、アーマード家の予算計算、ブレンダは、ピザート家の家計の集計で、二人は、お仕事モード。
アンとレミは、算盤の練習だ。
で、2つ目のテーブルには私が。
そして、私を囲むようにお母様、叔母様、そしてシェリルが座っていた。
「こういう風に、ガラスケースを作って、ケーキを切った物を並べたいんだけど。」
私が提案した。
「ガラスですか?透明でいいなら、TSSはどうでしょう?」
「何それ?」
「トランスパレント・シールド・シートです。」
「透明な盾?」
「はい、トランスパレントシールドワームが吐き出す素材です。敵から逃げる時や、掘った穴の強化に使ってるようです。」
「魔物素材なのね。」
「はい、近年、養殖に成功しましたので、安定して供給されるようになりました。強度もあり、加工も簡単で、ガラスよりも安価な為、多くのガラス工房が潰れてしまいましたが。」
「何か、どっかで聞いたことあるような?」
「お嬢様、飴屋のダンウォーカーは、元々ガラス職人です。」
背後から、出来る側仕えのリリアーヌが補足してくれた。
「ああ、なるほど。」
「商売は競争原理の社会とはいえ、厳しいわね。」
叔母様がそんな事を言った。
「あら?でもそのお陰で、今や王都一、いえ、王国一の飴細工職人になれたのだから、良かったんじゃない?」
お母様が、そんな事を言った。
王国一と言っても、飴細工職人なんて、他に居ない・・・。
「じゃあ、TSSでいいから、こういう感じで作って。」
サッとデザインしたものを、シェリルに渡す。
「なるほど、切ったケーキや他の商品を並べるわけですね。」
「ええ、そうよ。」
「ホールケーキは、どうします?」
「それは予約対応ね。中々、平民でホールケーキは買えないんじゃないの?」
「確かに。」
「このショーケースだと、保存が心配じゃない?」
お母様が言った。
「ええ、なので、冷蔵に。」
「なるほど、冷蔵で保存と。」
シェリルが、そう言って私が描いた紙にメモ書きしていく。
「商品の種類も増やさないと駄目ね。」
更にお母様が提案してくれる。
「その辺は、ダリアと料理長たちに頑張って貰って。」
丸投げだ。
いちいちメニューなんて考える暇がありません。
というか社交シーズン終わったら、私は、アーマード領に行くしね。
あれ?シェリルに伝えてたっけ?
「ねえ、シェリル。」
「何でしょうか?」
「私、社交シーズン終わったら、アーマード領へ行くんだけど。」
「はあっ?何で、何もない田舎へ?何をしに?えっ?」
「田舎って、あんた、アーマード領出身違うの?」
それにアーマード領を馬鹿にされると怒りそうな癖に。
「はい、そうですが、本当に何もない田舎ですよ?」
「王都の人に田舎って言われてもいいの?」
「言い訳ありません。こういうのは地元出身の人間だから言ってもいいわけで。」
なんじゃそりゃっ。
どういう理屈なのよ・・・。
「カフェのオープンもあり、準備もあります。正気ですか?」
「そう言われても、王命だし。」
「えっ・・・。」
シェリル絶句。
まあ、そうだろう。
ぎぎぎぎっ
そんな擬音が似合いそうな感じで、シェリルはお母様の方を向いた。
「本当に、どうしてくれようかしら?ピザートとアーマードで反乱してみる?」
軽い感じで、お母様は、シェリルに提案したが、シェリルは首を大きく振って、「とんでもないっ!」と強く断った。
「なあに?」
「私が作ったケーキだと、3人では食べきれません。」
「そうね。余ったのは、アーマード家の使用人に下げ渡せばいいわ。」
「なるほど~。」
「では、お嬢様が作った物は私たちが。」
後ろからリリアーヌが言ってくる。
「何、全部食べようとしてるのよ。今日の夕食後に、私が作った物は、ピザート家で食べるに決まってるじゃない。」
「なっ・・・。」
愕然とするリリアーヌ。
お母様の後ろに控えているエルミナの表情も心なしか悲しそうだ。
「あ、あの私がこさえたものは、こちらに献上した方が・・・。」
申し訳なさそうに、おっさんが申し出てきた。
「お子さんがいるんでしょ?あなたが作った物は、お土産に持って帰ってあげて。」
私がそう言うと、おっさんは申し訳なさそうに引き下がった。
「ピザート家の面々が食べても、リリアーヌとエルミナ分くらいは残るから大丈夫よ。」
コットンやモーゼスといった男性陣には我慢してもらおう。
「私もいります。」
何故か、ダリアも申し出てきた。
「えっと・・・、ダリアの分ってまだ残ってるんでは?」
「料理長と副料理長に味見として渡しました。」
そ、そうだね・・・。
あの二人には味見として必要よね。
「リ、リリアーヌ。夕食後はいい感じに調整して、切ってちょうだい。」
「畏まりました。」
多分大丈夫だろ・・・うん。
アリスは可愛い。
午後は私の部屋で昼寝をしたりする。
わたしも一緒に昼寝をする時もあるが。
そんな癒し空間をぶち壊す奴が現れた。
丸めた紙を握りしめているシェリルだ。
こいつ、商会の人間のくせに、我が物顔で私の部屋に入ってくる。
「お嬢様、ご相談がありますっ。」
「あんた、アーマード商会の人間でしょ?何、私の部屋に入って来てるの?」
「えっ?ちゃんとノックしてますよ?」
「そう言う問題じゃあないでしょ。」
「私、お嬢様担当なので。」
駄目だ。話が通じない。
「で、相談って何?」
「この度、カフェの従業員がほぼ確定しました。」
「そうみたいね。」
あの上海かすてらのおっさんも決まったみたいだし。
「相談というのは、内装のお話です。」
「内装がどうしたの?」
「カフェという物は、お嬢様が発案しました。」
「ん?まあ、そうね。」
「なので、誰もわかりませんので、内装のデザインをお願いします。」
「・・・。」
め、面倒くせぇ~・・・。
「そんな面倒くさそうにせず。」
まじか~。
うあぁ・・・、思い付きで言う物じゃあないなあ。
「厨房はどうすんのよ?」
「ピザート家の料理人と実際働く人間の意見を取り入れる予定です。」
「ふむふむ。」
「それ以外を、お嬢様がお願いします。」
そう言って、図面を広げるシェリル。
「2階建てにするの?」
「はい、1階を一般用に、2階は、富裕層向けに。」
「2階もデザインするの?」
「いえ、2階は貸し切りにも出来るようにパーテーションで区切ります。」
「パーテーションじゃあ、隣の声が聞こえるんじゃないの?」
「吸音パーテーションを使用しますので、聞こえませんよ。」
「吸音パーテーションねえ。」
確か前世にも存在したけど、完全にシャットアウトするわけじゃあ、なかったような?
「吸音素材は、サウンドサンドの皮を使っていますので、完全防音となります。」
「何それ?」
「砂漠に住む大きいトカゲです。皮が吸音素材になっており、砂に潜り無音で近づきバグっと捕食します。」
「こわっ!人も食べられるの?」
「基本、動くものは何でも、バグっ!です。ただ自分より大きい物は、襲いません。」
「そ、そうなんだ・・・。」
うん、まあいいや、砂漠に行くことは無いはずだから。
「じゃあ、一階の持ち帰り用の売り場と一般客用のレイアウトを考えればいいのね?」
「はい、こういう感じというイメージでも構いませんので。」
非常に面倒ではあるが、言い出しっぺとしては仕方がない。飴屋と上海の仕事も決まってるし、今更、やめようなんて言えない。
「あ、そうそう。生地を作ってくれるリンウェイさんの奥方も働いてもらう事になりました。」
「あれ?お子さんがいるんじゃないの?」
「ピザート家の方で、預かってもらいます。」
「へえ・・・、そうなんだ。」
使用人の為の託児所や学校っぽいのがあるって聞いてたが、そういう所へ預けるんだろうなあ。
現在、私の部屋は異様な雰囲気に包まれていた。
1つ目のテーブルには。
アリスとお針子隊が。
アリスは、アーマード家の予算計算、ブレンダは、ピザート家の家計の集計で、二人は、お仕事モード。
アンとレミは、算盤の練習だ。
で、2つ目のテーブルには私が。
そして、私を囲むようにお母様、叔母様、そしてシェリルが座っていた。
「こういう風に、ガラスケースを作って、ケーキを切った物を並べたいんだけど。」
私が提案した。
「ガラスですか?透明でいいなら、TSSはどうでしょう?」
「何それ?」
「トランスパレント・シールド・シートです。」
「透明な盾?」
「はい、トランスパレントシールドワームが吐き出す素材です。敵から逃げる時や、掘った穴の強化に使ってるようです。」
「魔物素材なのね。」
「はい、近年、養殖に成功しましたので、安定して供給されるようになりました。強度もあり、加工も簡単で、ガラスよりも安価な為、多くのガラス工房が潰れてしまいましたが。」
「何か、どっかで聞いたことあるような?」
「お嬢様、飴屋のダンウォーカーは、元々ガラス職人です。」
背後から、出来る側仕えのリリアーヌが補足してくれた。
「ああ、なるほど。」
「商売は競争原理の社会とはいえ、厳しいわね。」
叔母様がそんな事を言った。
「あら?でもそのお陰で、今や王都一、いえ、王国一の飴細工職人になれたのだから、良かったんじゃない?」
お母様が、そんな事を言った。
王国一と言っても、飴細工職人なんて、他に居ない・・・。
「じゃあ、TSSでいいから、こういう感じで作って。」
サッとデザインしたものを、シェリルに渡す。
「なるほど、切ったケーキや他の商品を並べるわけですね。」
「ええ、そうよ。」
「ホールケーキは、どうします?」
「それは予約対応ね。中々、平民でホールケーキは買えないんじゃないの?」
「確かに。」
「このショーケースだと、保存が心配じゃない?」
お母様が言った。
「ええ、なので、冷蔵に。」
「なるほど、冷蔵で保存と。」
シェリルが、そう言って私が描いた紙にメモ書きしていく。
「商品の種類も増やさないと駄目ね。」
更にお母様が提案してくれる。
「その辺は、ダリアと料理長たちに頑張って貰って。」
丸投げだ。
いちいちメニューなんて考える暇がありません。
というか社交シーズン終わったら、私は、アーマード領に行くしね。
あれ?シェリルに伝えてたっけ?
「ねえ、シェリル。」
「何でしょうか?」
「私、社交シーズン終わったら、アーマード領へ行くんだけど。」
「はあっ?何で、何もない田舎へ?何をしに?えっ?」
「田舎って、あんた、アーマード領出身違うの?」
それにアーマード領を馬鹿にされると怒りそうな癖に。
「はい、そうですが、本当に何もない田舎ですよ?」
「王都の人に田舎って言われてもいいの?」
「言い訳ありません。こういうのは地元出身の人間だから言ってもいいわけで。」
なんじゃそりゃっ。
どういう理屈なのよ・・・。
「カフェのオープンもあり、準備もあります。正気ですか?」
「そう言われても、王命だし。」
「えっ・・・。」
シェリル絶句。
まあ、そうだろう。
ぎぎぎぎっ
そんな擬音が似合いそうな感じで、シェリルはお母様の方を向いた。
「本当に、どうしてくれようかしら?ピザートとアーマードで反乱してみる?」
軽い感じで、お母様は、シェリルに提案したが、シェリルは首を大きく振って、「とんでもないっ!」と強く断った。
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