12 / 98
第一部 失業したおっさんがVRMMOで釣りをしていたら伯爵と呼ばれるようになった理由(わけ)
朝三暮四
しおりを挟む
タイマーは悩んでいた。
自動露店のロッドをずっと見つめながら。
「タイマーさん、用件があるならメールをくれれば。」
たまたまONしてきたロッドメーカーが話しかけて来た。
「いえ、ちょっと考え事をしてただけで・・・。」
「ロッドを見ながらですか?釣りしないなんて珍しいですね?」
「もう40時間に・・・。」
「さ、さすがですね・・・。」
井戸端板では、仙人潰しとか言われていたが、タイマーはそこまで悲観していない。
何処かのお猿さんとは違って、目先だけ見てては、20年も社会で生きて行く事なんて出来ない。
2週間で考えたら80時間釣りが出来る。
前までは、56時間しか出来なかったのだから。
【俺はお猿さんとは違うのだ】
と、時野は考えているのだが、お気づきだろうか?
ちゃんと自制できる人間なら、今までなら2週で100時間は釣りが、
出来ていたのだ。
自制が出来ない時野は、お猿さんと変わりはない。
「で、何かお考えが?」
「いえ、堅松樹を使ったロッドで4層までは何とかなるんですが・・・」
「5層があると?」
「2種類ほど???がリストにあるんですよ。」
「ああ、アンコウとキンメですね。」
「えっ・・・、もう釣れてるんですか?」
「ええ、海の3層で釣れるらしいです。」
「なるほど、海にも層があるのか。」
「タイマーさんは、ずっと川ですしねえ。」
「うーん、何とか川で釣りたいなあ。」
「今のロッドでは難しいですか?」
「4層までですねえ。」
「あれ以上の感度となると、思いあたりませんが、自分の方で、
素材があるか調べておきますよ。」
「いつも、すみません。」
「いえいえ、うちのメーカーサイトにゲームのロッドのレシピを載せてるんですがね、
好評らしくてアクセス数が伸びてます。」
「なるほど、そういった手法もあるんですねえ。」
「まずは見て知って貰わない事には始まりませんから。」
「アップライスと言ったら、有名メーカーと思うんですが?」
「釣りをしてる人だけじゃなく、裾野を広げていかないと、
趣味の世界って衰退しちゃうんですよ。」
「なるほど。」
釣りが出来ないタイマーはロッドメーカーと別れて即ログアウトした。
「暇だなあ。進の奴でもからかいに行くか。」
もはや、駄目人間としかいいようがない。
「こんにちわ、春子さん、今日もお美しい。」
「あら、時野さんいらっしゃい。社長なら出掛けてますよ?」
「じゃあコーヒーでも、飲みながら春子さんを眺めてますよ。」
「はいはい。」
春子はさらりと受け流した。
「今日は、クッキーにしてみました。」
そういって、手土産のクッキーを春子に渡した。
「時野さん、無職なんだから、お気遣い要りませんよ?」
「あれ?知らないんですか春子さん。自分みたいなのをセレブ無職って
いうらしいですよ。」
「ちゃんと職安行ってるんですか?」
「もちろんですよ。月に2回ほど。」
「・・・。」
時野が会社でのんびりコーヒータイムしてる頃、波田進は街中に居た。
銀行回りのついでに得意先を回り営業もこなしていた。
「触るなっていってるだろうっ!」
若い女性の声が聞こえてきた。
「テメエ、ぶつかって来ておいて、謝りもしねえ。ふざけてんのかっ」
女子高生1人に3人のチンピラが絡んでいた。
「おいっ、お前達何してる。」
元暴走族リーダー波田は声を掛けた。
元リーダーだけあって、波田はガタイもよく、面構えも怖い。
が、
「なんだ、おっさん。死にてえのか?」
「JKの前でいいかっこしてえんじゃね?」
所詮は40代のおっさんだった。
「知り合いの娘なんだ。非があるなら俺が謝るから許してくれないか?」
「ふざけんなっ!」
「俺たちはなあ、今からこいつに礼儀を教えてやるんだよ。」
「ああ、体にたっぷりとたたき込んでやんよ。」
「どうかしました?」
スーツ姿の小柄な男性が新たに登場した。
「なんだテメエは?」
可愛らしい顔の男に1人がガンをつけた。
「お、おい。ヤバイよ。中性死亡だ。こいつ。」
「なっ・・・。」
3人が一斉に逃げ出す。
が、
1人は、手首を掴まれ捕まった。
「あれえ?君、道場で見た事あるよね?」
中性死亡と呼ばれた男性は、にこやかな顔で聞いた。
あせった男は、その場で土下座した。
「すみません。すみません。」
「最近見かけないけど?」
「か、顔を出しますんで、すみません。許して下さい。」
泣いて懇願する。
仲間の2人は、既に居ない。
「まあ、僕も仕事忙しくて、道場には、あんまり顔出してないんだけどね。」
ようやく開放された男は、何度も何度も頭を下げた後、
走って逃げて行った。
「すみません。僕が通ってる空手道場の奴が迷惑かけたみたいで。」
「い、いや、君が来てくれて助かったよ。ほら、美緒ちゃんもお礼を。」
「よけいなお世話なんだよ、おじさんも。」
「すまないね。どうも反抗期みたいで。」
「ああ、あれですよね?中二病?」
「ふざけんなっ!高校生だっ!」
「まあ似たようなもんだよ。」
中性死亡は、昼過ぎまで働いていたため、遅めの昼食を摂りに街へ出た所、
遭遇したらしい。
波田進は、御礼がしたいと申し出たが、中性死亡と呼ばれた男は名もなのらず、
去っていった。
自動露店のロッドをずっと見つめながら。
「タイマーさん、用件があるならメールをくれれば。」
たまたまONしてきたロッドメーカーが話しかけて来た。
「いえ、ちょっと考え事をしてただけで・・・。」
「ロッドを見ながらですか?釣りしないなんて珍しいですね?」
「もう40時間に・・・。」
「さ、さすがですね・・・。」
井戸端板では、仙人潰しとか言われていたが、タイマーはそこまで悲観していない。
何処かのお猿さんとは違って、目先だけ見てては、20年も社会で生きて行く事なんて出来ない。
2週間で考えたら80時間釣りが出来る。
前までは、56時間しか出来なかったのだから。
【俺はお猿さんとは違うのだ】
と、時野は考えているのだが、お気づきだろうか?
ちゃんと自制できる人間なら、今までなら2週で100時間は釣りが、
出来ていたのだ。
自制が出来ない時野は、お猿さんと変わりはない。
「で、何かお考えが?」
「いえ、堅松樹を使ったロッドで4層までは何とかなるんですが・・・」
「5層があると?」
「2種類ほど???がリストにあるんですよ。」
「ああ、アンコウとキンメですね。」
「えっ・・・、もう釣れてるんですか?」
「ええ、海の3層で釣れるらしいです。」
「なるほど、海にも層があるのか。」
「タイマーさんは、ずっと川ですしねえ。」
「うーん、何とか川で釣りたいなあ。」
「今のロッドでは難しいですか?」
「4層までですねえ。」
「あれ以上の感度となると、思いあたりませんが、自分の方で、
素材があるか調べておきますよ。」
「いつも、すみません。」
「いえいえ、うちのメーカーサイトにゲームのロッドのレシピを載せてるんですがね、
好評らしくてアクセス数が伸びてます。」
「なるほど、そういった手法もあるんですねえ。」
「まずは見て知って貰わない事には始まりませんから。」
「アップライスと言ったら、有名メーカーと思うんですが?」
「釣りをしてる人だけじゃなく、裾野を広げていかないと、
趣味の世界って衰退しちゃうんですよ。」
「なるほど。」
釣りが出来ないタイマーはロッドメーカーと別れて即ログアウトした。
「暇だなあ。進の奴でもからかいに行くか。」
もはや、駄目人間としかいいようがない。
「こんにちわ、春子さん、今日もお美しい。」
「あら、時野さんいらっしゃい。社長なら出掛けてますよ?」
「じゃあコーヒーでも、飲みながら春子さんを眺めてますよ。」
「はいはい。」
春子はさらりと受け流した。
「今日は、クッキーにしてみました。」
そういって、手土産のクッキーを春子に渡した。
「時野さん、無職なんだから、お気遣い要りませんよ?」
「あれ?知らないんですか春子さん。自分みたいなのをセレブ無職って
いうらしいですよ。」
「ちゃんと職安行ってるんですか?」
「もちろんですよ。月に2回ほど。」
「・・・。」
時野が会社でのんびりコーヒータイムしてる頃、波田進は街中に居た。
銀行回りのついでに得意先を回り営業もこなしていた。
「触るなっていってるだろうっ!」
若い女性の声が聞こえてきた。
「テメエ、ぶつかって来ておいて、謝りもしねえ。ふざけてんのかっ」
女子高生1人に3人のチンピラが絡んでいた。
「おいっ、お前達何してる。」
元暴走族リーダー波田は声を掛けた。
元リーダーだけあって、波田はガタイもよく、面構えも怖い。
が、
「なんだ、おっさん。死にてえのか?」
「JKの前でいいかっこしてえんじゃね?」
所詮は40代のおっさんだった。
「知り合いの娘なんだ。非があるなら俺が謝るから許してくれないか?」
「ふざけんなっ!」
「俺たちはなあ、今からこいつに礼儀を教えてやるんだよ。」
「ああ、体にたっぷりとたたき込んでやんよ。」
「どうかしました?」
スーツ姿の小柄な男性が新たに登場した。
「なんだテメエは?」
可愛らしい顔の男に1人がガンをつけた。
「お、おい。ヤバイよ。中性死亡だ。こいつ。」
「なっ・・・。」
3人が一斉に逃げ出す。
が、
1人は、手首を掴まれ捕まった。
「あれえ?君、道場で見た事あるよね?」
中性死亡と呼ばれた男性は、にこやかな顔で聞いた。
あせった男は、その場で土下座した。
「すみません。すみません。」
「最近見かけないけど?」
「か、顔を出しますんで、すみません。許して下さい。」
泣いて懇願する。
仲間の2人は、既に居ない。
「まあ、僕も仕事忙しくて、道場には、あんまり顔出してないんだけどね。」
ようやく開放された男は、何度も何度も頭を下げた後、
走って逃げて行った。
「すみません。僕が通ってる空手道場の奴が迷惑かけたみたいで。」
「い、いや、君が来てくれて助かったよ。ほら、美緒ちゃんもお礼を。」
「よけいなお世話なんだよ、おじさんも。」
「すまないね。どうも反抗期みたいで。」
「ああ、あれですよね?中二病?」
「ふざけんなっ!高校生だっ!」
「まあ似たようなもんだよ。」
中性死亡は、昼過ぎまで働いていたため、遅めの昼食を摂りに街へ出た所、
遭遇したらしい。
波田進は、御礼がしたいと申し出たが、中性死亡と呼ばれた男は名もなのらず、
去っていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~
黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる