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第二部 淡水の王者と虫の王者

ミミズ狩りクエスト

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「それでは、おばあ様のクエストを受けて参りますので、
皆さんは、ここでお待ちください。」
「了解~。」
カルディナが答えた。
グランマとクレインは、クエストの依頼を受けるべく、村の村長の所へ向かった。
「最近、化け物が田畑を荒らして、うちの村も相当な被害を受けている。
旅の人、知り合いに強者が居るなら、倒してくれまいか?」
村長がそう言った後、グランマの目の前にイエスかノーを選択する
ウィンドウが表示された。
「イエスを選べばいいの?」
「はい。」
グランマはイエスを選んだ。
「そいつは、助かる。しかし、いっとくが化け物は半端なく強い。
よほどの強い仲間が居ないと、相手にならいってことを十分、肝に銘じといてくれ。」
「化け物とは何ですか?」
グランマは、NPCに話しかけた。
もちろん、ちゃんと対応して話してくることはない。
「おばあ様、NPCは定型文しかしゃべりません。」
「あら、そうなの?」
「あと、化け物ですが、野槌です。見た目がミミズみたいなので、皆がミミズと呼んでます。」
「野槌なのね。体長は3mくらいかしら?」
「いえ、10mはゆうにあります。」
「それは、また、ずいぶん大物なのね。」

「おまたせしました。」
グランマとクレインの二人は、最初の集合場所へ戻ってきた。
野槌が居る場所は、ここから近く、巣は、畑の傍にある洞穴となっている。
洞穴に入ると、専用の戦闘フィールドになり、他のパーティーとも出会うことはない。
「グランマさんは、我々の後ろに待機しといてください。
クレインの様に攻撃できそうなら、してください。」
「わかりました。」
ギルバルトの説明に、グランマは返事をした。

全員が、洞穴に入ると10mは、ゆうにある野槌が現れた。
ギルバルトとカルディナが、防御力アップのスキルを発動し前に出る。
前に出たギルバルトは、更に扇動のスキルから挑発を選び、野槌のタゲを自分に向かせた。
クレインは、攻撃力アップ
ミズガルドは、魔法攻撃力アップと呪文発動時間短縮
それぞれがスキルを発動させた。
ビショップは、補助系が無いので、回復待機していた。

最初は野槌が攻撃をしかけてきた。ギルバルトに対し巨大な尻尾を振り回す。
目とかもないので、どっちが尻尾と言われれば難しいところだが、
とりあえず大きな口がある方が頭として、皆認識している。
長い尻尾は、範囲攻撃扱いなので、ギルバルトとカルディナは、二人で、盾防御した。
盾で防いだといっても、多少のダメージは削られる。
しかし、間髪いれずビショップの回復範囲魔法が発動し、二人とも体力満タンの状態に戻った。

この時、クレインは既に敵の前に出ており、連続突きのスキルを発動した。
通常の攻撃の1.2倍の攻撃が4連続繰り出されるスキルで、ボス戦等で良く使われうスキルである。

「クレイン下がれっ!」
ギルバルトが指示した時には、2回目の4連続の突きスキルを発動していた。
昔は、猪突猛進と言われていたクレインだが、パーティープレイの重要性は、
身に染みて判っているので、スキルが終わると壁職の後ろに引き下がった。
それと同時に巨大な火の竜巻が、野槌を襲う。
ミズガルドのファイヤーストームだ。

一般的なRPGで、あれば、味方が使う魔法の範囲で傷つくことはない。
味方の範囲魔法を避けるゲームなんてそうそうないだろう。
しかし、VFGXでは、巻き込まれてしまう。

開発室長曰く
「当たってるのに当たってないのは、おかしいでしょ?」
との事。

それ故に、大きな魔法が発動される場合は、アタッカー役は、一旦退避しなければならない。
激しい火柱で苦しいのか、野槌は雄叫びのようなものを発した。
「カルディナ、酸の攻撃が来るぞ、補助スキルを。」
ギルバルトがカルディナに指示した。
「あっ。」
酸の攻撃を失念していたカルディナは、急いで補助スキルを使った。
野槌の涎攻撃は、上から遠慮もなく垂れてきた。
ギルバルトとカルディナは、盾を上に向けて、ガードする。
もちろん無傷ではないが、すかさずビショップの回復が入る。

敵の攻撃が終わると、クレインは再び敵に4連続の突きを放っていた。
今回は、グランマも敵の傍まで行き、薙刀による攻撃を行った。
クレインと違いスキルは使用していない。

「二人とも下がって!」
ギルバルトの指示に、スキルを使用してないグランマは直ぐに反応した。
クレインは、2回目の4連続の突きが終わってから、引き下がった。

そして、2回目のファイヤーストームが野槌を襲う。
野槌は、断末魔をあげて、消滅した。
野槌を倒した事で、グランマのレベルが一気に5になった。
更に村長に報告すると、クエストクリアの経験値が貰え、レベルが7になった。

「随分と簡単にレベルが上がるんですね。」
グランマがそう、感想を漏らした。
「まあ、今日は、最強の魔術師が居ますからね。特に早いですよ。」
ギルバルトが答えた。
「ねえ、聞いたでしょ?ねえ?」
ミズガルドが、カルディナを突っつく。
「・・・。」
「でも、カルディナって古株なんでしょ?」
「そうだけど?」
「まだギルバルトに指示貰ってるのね。」
「団長のアレは、癖みたいなもんでしょ・・・。」
そう言った後、カルディナはある事に気が付いた。
ミミズ狩りに於いて、ギルバルトは、ビショップとミズガルドには一切指示を出していなかった。
「わ、私が未熟だと?」
「慣れの問題だ。気にするな。」
ギルバルトが大した問題でないとカルディナを慰める。
しかし、カルディナは、それが余計に腹が立った。
「まあ、私達アタッカーはギルバルトさんの指示がないと魔法が避けれませんしね。」
クレインが言った。
「クレイン、あなたはスキルを少し控えるべきよ。」
グランマがクレインに言った。
「お、おばあ様・・・。」
「あなたは気づいてないかもしれませんが、あなが下がるのが遅れた分、
ミズガルドさんが、呪文のスピードを遅くしていたのよ。」
「えっ・・・。」
「グランマさん。そういった調整も魔術師の仕事なんで、アタッカー役の人に変に気を使ってもらわなくても。」
ミズガルドが言った。
「2回目は控えた方が良かったんですか?」
クレインは、ギルバルトに聞いた。
「まあ、このメンバーならどうとでもなるから、そこまで気にしなくていい。」
「むー・・・。」
「ギルバルトさん、あなたは、全体が見えてるのね。」
グランマが感心したように言う。
「いえ、そう言う訳ではないです。全員のスキル構成は把握してますから、
動きがわかると言うだけです。」
「予測という事ね。それにしても凄い事よ。」
グランマは心底感心した。
「ミズたん、呪文唱えるのって時間調整するの?」
カルディナが聞いた。
「するわよ?だって味方燃やしたらシャレにならないでしょ?」
「そ、そうだけど・・・。」
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