ファーストキスを奪った親友は、理想の筋肉の持ち主だった

華翔誠

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バレー部最後の試合

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バレー部最後の試合は、平凡高校が例年通り、負けて終了した。
ただ、いつもと違ったのは、今年は1セット取った事。
「皆、ありがとう。最後にいい試合が出来た。」
試合後、平岡は部員に向けて言った。
「1勝も出来ず、すみません。」
2年が泣きながら言った。
「1セット取れたじゃないか、それだけでも凄い事だ。」
「主将。」
2年の部員たちは感動して泣いた。
「お前たちにバレー部が残せなかったことが悔やまれるな。」
平岡は寂しそうに言った。
「1年には、悪かったな。無理やり誘っといて。でもお前たちが居たおかげで1セット取ることが出来た。」
「俺は大した戦力になってませんから。」
浩一は冷めたように自虐的に言った。
「何言ってるんだ。港がサーブやレシーブの練習を必死にしてたのを、僕は見ていたよ。」
「しゅ、主将!」
浩一まで涙を流しながら言った。
「間壁と緑屋は、殆ど試合に出っぱなしで悪かったな。」
「いえ、全然役に経てず。」
真斗が申し訳なさそうに言った。
「何言ってるんだ、二人が居たお陰だぞ?」
「途中からブロック全然決まらなかったし。」
勇気がボソッと言った。
最初は、真斗と勇気のブロックが決まっていたのだが、相手は殆どが3年生であり、バレー経験も長い。
前衛には、真斗と勇気のどちらかしか居ないので、躱すのは容易な事だった。
「ブロックだけはなあ。どうしても経験と試合勘が必要になってくるから、一朝一夕という訳にはいかないんだ。」
「それでも勇気は俺よりは、決まってたと思うぞ?」
真斗が言った。
「勘だよ、勘。」
勇気が言うように当てずっぽという事もあるが、それ以上に敏捷性が真斗より優れていた結果といえる。

「バレー部は無くなってしまうが、間壁は安心してくれ、他の部が勧誘しないと話はつけてあるから。」
「ありがとうございます。」
真斗は、丁寧にお辞儀をした。
「俺は?」
勇気が聞いた。
「緑屋は・・・、多分大丈夫だ。」
ガキ大将気質の性格にも多少の問題はあるが、一番の問題は、女の子にしか見えないその見た目だった。
さすがに一緒に着替えたり、一緒にプレーするには男子高校生には酷と言える。

試合の帰り道、1年の3人はいつも通り仲良く歩いていた。
「浩一は、部活はどうするんだ?」
真斗が聞いた。
「他の部活に入るには今更感があるし、帰宅部にする。」
「そうか、勇気は?」
「俺も、もういい。」
「何だ、飽きたのか?」
浩一が聞いた。
「全然背が伸びなかったんだよっ!スポーツ意味ねえじゃん。」
そもそもスポーツしたからといって背が伸びるわけでもないし。
真斗も浩一も、そう思ったが口には出さなかった。
「真斗はバイトオンリーか?」
今度は浩一が聞いた。
「ああ、元から部活には入る予定にはなかったしな。」
「そうか。」
こうして、平凡高校のバレー部は短い歴史に幕を閉じた。
3人は、その後、何処の部活にも入らず、2年へと進級した。
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