秘密の多い私達。

堂島うり子

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第5章

嘘ですよね(汗)

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 今更だ。本当に今更な事考えてる。 

 こんな風に焦るのは私が落ち着いて周囲を見るようになったから。
学生から社会人になって。仕事を覚えるのに必死で目の前しか見て無くて。
 それも徐々に慣れてきて少しだけ世界が明るくなった今。

 社長と自分の立ち位置がより立体的になってずっと離れて見える。

「悩むな私。創真さんだったらどうでもいい子を側におかない」

 人を見極める目を持つ男。そして好き嫌いも激しい、はっきりしてる。
そんな中で私は彼に大事にされてる。それは紛れもない事実。

 出会いは生活費の工面に頭を下げに行くという酷いものだったけど。
 そうしなきゃ一家離散してた。まだそんな遠くない、嫌な思い出。

 落ち込むともっと落ち込む過去を呼び起こす嫌いな連鎖。



「おはようございます」
「おはようございます、戸橋さん」
「名前。覚えていてくれたんだ」
「は。はい」

 会社に入るとすぐに戸橋さん会う。同じ方向だから一緒に行くけれど
彼女から香るいい匂いとモデル並の足の長さが違いすぎて、まっすぐに正面を
見て歩くことにする。気にしたら負けだから。

こんな人が近くに居たとかなんで気づかなかったんだろう。
今後は注意力も鍛えないと。

「丘崎さんって社長と」
「え?なにか?」
「そんなに慌てなくてもいいのに。社長の身内って噂があるって聞いて」
「あ。…ああ。……そういう噂。何処からでたのかな?あはは」

 私の悪い癖でつい否定も工程もしない態度をとってしまう。
 彼女はご機嫌そうに微笑み。

「貴方って気づくと社長の近くに居るでしょう?最初は偶然かと思った。
けど、何だかひと目を考えているように思えて。だからてっきり社長を狙ってる
のかと思ってたんだけど。身内だったら話くらいするよね」
「え」
「それだけ。今日もお仕事がんばりましょうね丘崎さん」

 あれ?私何か怖い話をされたような気がする。

 あの笑みは身内だったら敵じゃない安心って意味で。
今後は社長に近づくなと釘を差された感じ?
 でも彼氏居ると思ってた。本人から聞いた訳じゃないけど。

 彼女も社長が狙い?それで私のこともしっかり見てる?

 うそぉおおおっ!?


「おはよう。どうしたの渋い顔して」
「おはようございます何でも無いです」

 関係までは気づいてない様子。社内に社長を異性として狙っている
女子が居ても全然おかしい話じゃない。
 現に昨日、秘書さんのそれっぽい話を聞いたばかりだった。

 赤点を母親に見つかった時より痛いくらい動揺してる。

 私が彼の周囲をウロウロしてるのを見られたのは初めて。
 こうなると想像してなかった私が悪いの?

 大きな会社で一つ部署が違えば会うことは少ないけど彼女は近い。
目に入る。嫌でも入る。帰るまでずっとこの調子なんだ。

いや、これからずっと?

 社長にメールをしようかと思ったけど今朝のこともあるから止めて。
彼が言うようにまずは深呼吸などして落ち着く事を優先する。
今日ほどじっとしているのが嫌な日はない。

 恒例の資料整理と運ぶ仕事を嬉々としてこなした。




「し、社長?どうかしましたか?」
「ああ、うん。ちょうどこのフロアに用事があってついでに」
「ついでに?何でしょう……抜き打ちの視察ですか?」
「ここの席の新人君は長く離席中のようだけど」
「丘崎は今隣の部屋に居てもう来ると思います。呼んできますか」
「いや。良いんだ。どうかなその丘崎君は」
「丘崎ですか?そうですね。ちょっとそそっかしい所はありますが
その分努力してるようで、教えた仕事もきちんと覚えてきているし。
最近は他の社員とも上手く馴染んでます」
「うんうん。そうだろう」
「え?あの社長??丘崎がどうかしましたか?」
「あー……。用事があったんだが軽い目眩がしてきたので失礼するよ」
「ええ?大丈夫ですか!?」
「いたたた」
「目眩…ですよね?」

 私が席に戻るとここに突然社長が来たと皆がざわついていた。
それも今帰ったらしい。用事があるという言い方だったそうだけど
詳しい理由は不明。何故か私の事を上司に聞いていったという。
 
 何より急な目眩がするって大丈夫なんだろうか。
 今朝は何処か悪そうには見えなかったけど。不安になる。

 忠告されたばかりだけど黙ってはいられない。
 
「丘崎さん?今戻ったばっかりでしょ?」
「まだ少し残りがあったんで」

 気づいたら資料の入った箱を手に廊下に出ていた。
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