秘密の多い私達。

堂島うり子

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第6章

不機嫌ご用心

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「……」

 ああ、機嫌が悪い怖い大人だ。怒ってらっしゃる。

 私は子どもの頃からお淑やかな女子ではなかったけれど、
大人に怒られる機会は大人になったほうが増えた。注意、ともいうけど。
 会社の上司から体育会系な厳し目の先輩、一部の年上女性社員さんたち。

 そこに加わる社長というパワーワード。
 ただの新人女子社員が怒られる人選じゃない。

「創真さん」
「……、タブレットを持ってくるよ。彼のインスタに上がってたはず」
「はい。見たいです」

 何時もの笑顔までは戻らなくても普通にはなった。
一旦席を立って部屋からタブレットを持って戻ってくる、
私と違ってPCもタブレットも良い品を所持のセレブ様。
 一緒に見たいからと彼の隣に移動して座った。

「これだったかな」
「英語で何って書いてるのかさっぱり」
「日々の他愛もない事だよ」

 見せてもらったログハウスは想像していたよりも大きく本格的。
ドッグラン完備のお庭やプール、ジャグジー。
 ここは日本ですか?と聞いてしまうくらいスケールが違った。

 先に私が見せたホテルが一気に安っぽい。実際かなり安いのだけど。
 その上でWEBクーポンも導入したし。

「……創真さんはこういう所じゃないと嫌なんですね」

 豪華で何もかもが凄いとは思うけど。私には不釣り合いな世界。
 狭苦しく何処を見ても荷物が置いてある家にずっと居たせいかな。

「君の居ない場所は何処も同じ。何を食べても何を見ても」
「これからはもっと料理を作」
「ほら見てご覧庭まで来た鹿だよ珍しいね」
「料理」
「たまにリスも見えるそうだ」

 意地でも作って食べさせますからね。と念を送っておいて。
話の腰を折らないように、所有者は何者ですか?と聞いた。
やっぱり別業種ではあるけど有名な会社の社長さんらしい。

 セレブの知り合いはだいたいセレブ。
 そのイレギュラーが私、というか丘崎家になるのかな。

「この方が奥さんですよね?美人だな…どちらの国の方ですか」
「ロシアだったと思う。元歌手で彼の誕生会では歌ってた」
「それなら私だって歌いますよ。そうだお誕生日に料理と歌を」
「君を嫌いになりそうだから遠慮していいかな」
「じゃあ頑張ってブランドバッグとかに……します」

 いきなりバッグは無理でもハンカチとか靴下とか。
 多分何を渡してもそんなに喜んだりはしないだろうけど。

「私の祝いなんかしなくていいのにやたらと記念日にこだわって。
興味がないと言っても聞かない所が面倒だよね君は」
「好きな人の記念日に浮かれたら駄目?そんな面倒な私は嫌い?」

 面倒じゃないもっとスマートな理想的な女性が現れたら
 私の居場所は消えてなくなる?

「君の成長に期待するしかない」
「……」
「最近よく俯くね?ちゃんと顔を見せて」

 不安が過ぎる時って無意識に顔を反らしてしまうようで。
そっと頬に触れられてハッと気づいて顔を上げ視線を戻す。

「私が成長するまで創真さんは待っていてくれるのかなって」
「君が私の心を読めたら楽になるのかな」
「好奇心はありますけど後戻りできなそうですから遠慮します」
「ははは。確かに。だけど君はもう何処へも逃げられないからね」
「ははー…何だか言い方に圧がある」

 もしかしてまだお怒りなんだろうか。

 ぼそっと小さい声でちょっと言っただけなのに、
実は根に持つタイプなんだろうか?ちらっと語られる過去は楽しく
 ないものだったようだし。そう言えば彼の一族って確か……。

「君は私との秘密を既に幾つか共有している訳だから」
「……」

 私もしかして何かされる?

「不安そうに私を見つめるね」
「創真さんが怖いこと言うから不安なんです」
「素直な返事だ」

 怖いので深く考えないでおこう。

「大人なんだし彼女を不安がらせるのは男として駄目だと思いますっ」
「確かに君の言うとおりだ。私ももっと成長しないといけないね。
ここは互いの不満や不安を水に流すということで、風呂でもどうかな?」
「え、い、一緒に!?一緒は困ります恥ずかしいから無理だから」
「不安にさせないように君が喜ぶ事だけを言うよ?」
「例えば?」

 恐る恐る尋ねると彼が私の耳元に顔を近づけて。

「…………、とか?」

 絶対わざと出しているであろう、低く甘い良い声だった。

「えっあっ…ぜっ…絶対無理ですから!1人で洗い流してくださいね!」

 顔が燃え盛るような真っ赤になった気になって慌てて立ち上がり。
私は自分の部屋へと逃げ帰った。
 この部屋のドアに鍵はかけられるから一応かけておいて。

 どうせ今頃リビングで笑ってるんだろうけど。もういい知らない。
 それから暫くしてこっそり風呂に入り、逃げるように部屋に戻る。

 彼はもう自室に居るようで静かなものだった。

 会社で起こった事件は不可解さを残しながらも無事に終わり。
何時も通りの落ち着きが戻るのだろうけど。

「……あんなの聞きながら一緒にお風呂なんて死んじゃう」

 妙なテンションになってしまった私はちゃんと眠れるか不安。
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