秘密の多い私達。

堂島うり子

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番外編

2:とある意地悪な男

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 会社に務めたらまずは3年頑張れと言われて無事達成。
社長からのご褒美も頂いたし給料も僅かながら上がった。
 同時に家賃も値上げされたけれど生活にはゆとりがある。

「先輩!おはようございます」
「丘崎先輩ぃ」
「おはよう。また遅刻ギリギリ?髪の毛凄い事になってるよ?」
「すみません。つい動画夢中でみちゃって」
「会社じゃそんな理由は通じないんだから。
適度にセーブして金曜にまとめてみるとかしなきゃね?」
「はい」

 何より私にも慕ってくれる後輩が出来た。皆とてもいい子たち。
だから余計に落ち込んだり愚痴ったりなんかできない。噂大好きの先輩とは
 もちろん今でも仲良しで秘書のお姉さんの行動には目を光らせる日々。

「そうだ。他社との交流会有るそうじゃないですか」
「あ。もうそんな時期なんだ。期待していいよ。会場は物凄く豪華だから」
「はい!あとエリートな良い男も大勢来るって聞いてます」
「でも先輩は裏方されるんですよね。せっかくなら表に出て楽しみません?」
「私あんまり得意じゃないから。食べすぎてお腹壊した経験もあるし」
「他の会社も気にはなりますけど。うちの会社も相当レベル高いですよね。
社長はルックスもスタイルも高級感有りすぎてもはや眩しいし」
「ま、まぶしい…」

 私の想像力では社長の大仏様が浮かんできて慌てて打ち消す。

 交流会は去年までは参加したけど今年からは裏方に徹する。
一見紳士に見える眩しい男に次々と群がる美女たちとの優雅なパーティ。
私といえば恐らくは流れ弾なんだろうけど個人用アドレスを書かれた
 名刺を次々と渡されて苦笑い。

 ただ相手が外国の人だった時には何も言えなくて固まって。
 持ち帰られそうになり禁断の遠隔操作で助けられた。

 もちろんその後は社長からの恐怖のお説教。

 私には大人な場面の臨機応変な対応が出来ないし、
 ゴージャスな美女が彼の体を勝手に触るのも見ていられない。
 
  そこは何年経験を積んでも一緒だと思う。

 
 席についてさあ仕事という所で内線電話で呼び出しを受けた。
 怒られる事はもうほぼ無いけど、全く無い訳じゃないのが怖い。

 呼び出しをされて行ったものの席に当人はおらず。
 隣の席の人に聞いたら「コーヒーを買いに出た」と言われてまた移動。

 彼は廊下の突き当りある自販機の所に1人でいた。

「君が送ってくれた交流会名簿。年度が幾つかのページで去年になってる」
「すみません。すぐ修正して送り直します」
「よろしく。こんな無駄で地味な作業をしなくても新規のデータベースを
構築すればいいだけなのに。システム部にはもっと新しい人材が必要だな」

 厳しい一瀬さんに渡す資料だからあれだけチェックしたのに。
 些細なミスをするなんて恥ずかしい。早く席に戻って直さなければ。

「無駄な作業が減るならいいですね。では」
「今回裏方を選んだのは何で?」
「人が多い所に疲れてしまったので」
「知ってるだろうけど俺は上司から裏方の仕切りを任されてる」
「前任者の方が適当すぎて社長にお叱りを受けたんですよね」

 その辺の事情は本人がプンプンしながら言ってたので知っている。

「俺と頻繁に会う事になると知ってて選んだ訳は?嫌なんだろ2人きり」
「仕事ですよ?嫌も何もないでしょう」
「ほう。仕事なら2人きりになってくれるんだ」
「だから仕事ですって……っとぉっ」

 彼は持っていたコーヒーの缶をひょいと私に投げる。

 つい反射的に手を伸ばしキャッチに成功!したと思ったら
 物凄く近くまで彼に距離を狭められていた。

 触れる訳じゃないけど、噂されそうな距離。

「ああ、当然仕事。妥協は嫌い。ナニすると思ったんだ?」
「……」

 意味深な距離感でそういう事を言われたら誰だって赤面する、はず。
 猛烈な恥ずかしさに視線を反らしたいけどいまさらだし。

「かぁわいい。……楽しい1日にしような、丘崎さん?」

 くくく、と笑って一瀬さんは去っていった。
 コーヒーを買いに行ったはずなのにそれを私に渡したということは。

 最初から私をからかうつもりでここに誘導したんだあの人!!

「表も地獄なら裏も地獄……ううう……もう嫌だ」
「先輩どうしたんですか?顔が真っ赤」
「コーヒー買いに行ってたんですか?」
「……あげる。2人で飲んで」
「ふ、ふたりで?」

 悔しいやら恥ずかしいやら緊張するやらでフラつきながら自分の席へ戻る。
仕事はまだまだこれからだって言うのに嫌な目にあってしまった。
 セクハラだって訴えてやろうか。でも、誰からも賛同は得られなそう。

 誰かさんと一緒で見た目が非常に麗しく表向きの評価も絶対的に高い。

「そっか。風邪で寝込めばいいんだ……駄目だ」

 ナントカは風邪をひかない。という言葉があるように。
 風邪で寝込んだなんて片手で足りる程度しかないんだった。

 深い沼にはまった気分……。

「丘崎先輩ってたまに1人で百面相してるよね」
「幾ら先輩でも会社では色々有るんだよ」
「そっかぁ大変だ」
「私達も気をつけようね」


終わり
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