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★★
続 九
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「君を抱っこしたいだけなんだ」
「ついでに記念撮影もとか仰ったら私その場で舌噛んで死にます」
「おいで律佳ちゃん」
こんな関係になってしまっても頻繁に求められる事はない。私の機嫌を伺い丁寧に誘われるのみ。
今回はちょっと強引だけど。多分過去を思い出したからだ。
「……わ…わん」
「偉いね。可愛い子犬ちゃん」
一条家の権力に物を言わせている訳でもないし暴力で脅されてもない。あたかも自然な流れのように
言うことを聞いている自分は既に智早に洗脳されているのかも。
家族から殺すと脅されるほど反対されていてしかも姉の元婚約者である男との行為なのに。
私は自分から近づいていって抱っこされる。もちろん、下半身は繋がった状態で。
「う…こ…これ、……つ…辛いです」
「もっとしっかり僕に抱きついて身を任せて良いんだよ。力まないで」
「でもこの前お任せした結果」
「ゆっくり動くからね」
「あっあ……い…い…った…ぁああ足攣るぅう……っうう」
「硬いね。ストレッチしたほうがいい」
悲鳴と嬌声を行き来する私を他所によっぽどその体位で行為がしたかったのか中々下ろそうと
はしなかった。
「あ。す、すいません。不審者かと……思って」
互いに息遣いが荒くなって気分が高まってきた所でパッと世界が明るくなる。視線の先には警備の
オジサン。手には警棒でぽかんとした顔でこっちを見てくる。それはそうだ。半裸の男女が部屋の隅
で抱き合っていたら。とっさに智早が私の体を抱きしめて隠してくれたけれど多少は見えたはず。
生きる、と宣言した後だったけど智早にしがみついている状態だったからまだマシで逆を向いて
いたら恥ずかしさに生きていけなかった。
「玄関くらいは電気をつけておけばよかった。我慢出来なかった僕が悪い。ごめん」
「警備員さんには黙っていてくれと言いましたけど。難しいですよねきっと」
離れへ向かう私達を見ていた人も居ただろうし明日の朝には広まってそう。
バスローブを着せてもらい場所を寝室に移動して話し合う。
「健全な男女の営みだよ」
「貴方に近づけば大奥様に殺されるのに」
彼女自身も死ぬと言った。姉は男と情死して。私は一条家の大奥様と死ぬなんて。
「どうせお祖母様の方が先に星になる」
「笑顔で言わないでください」
「脅しなんてらしくないことばかりしてる。あの人も変わったな…」
冷静になって恐れおののく私を他所に智早がまた抱き寄せてくる。発見されてしまい中途半端な所
で終わってはいるけれどここからまた改めてしたい気持ちは私には無い。それを察しているのか智早も
無理に続けようとはしてこない。
「私が居なくなっていても気にせず生きてください」
「やりたくなかったけど君が安心するまでは縛っておくしかないか」
「リード付けられる……」
でもむしろそれくらいの冷めた態度で居てくれたほうが大奥様は安心するんだろうか。
「君の父親の仕事を手伝って好きなだけ融資もしよう。短大にもかなりの支援をする。
君のアルバイト先にもご挨拶をしに行く」
「……」
「もし、君が居なくなったらそれらを全部徹底的に壊す」
物理的に縛る方が簡単なのに。お金も時間もかける、そういう精神的な縛り方。
智早らしい、のかも。なんて思うだけで拒否反応が出なかったのは既に麻痺しているのか。
「父や短大はともかくお店にまでご迷惑を」
「僕を信じてここに居てほしい。生きると言ってくれたようにここに居ると言ってほしい」
「居ます」
「今はこんな言葉でしか君を引き止められなくて情けないけど。何れは僕と離れたくない気持ちに
変わってくれるといいな」
「智早様と居るのが嫌だとは思いません。でも、大奥様がいる限り無理です」
「あの人は僕が誰と付き合っても嫌味を言って意地悪をする。女性って幾つになっても大変だ」
クスクスと笑いながら部屋の電気をすべて消して私を抱きしめたままベッドに寝転ぶ。
「おやすみなさい智早様」
「おやすみ」
明日世界はどうなっているのか。不安や恐れもあるけれど眠気には勝てずに意識が遠のいた。
「ついでに記念撮影もとか仰ったら私その場で舌噛んで死にます」
「おいで律佳ちゃん」
こんな関係になってしまっても頻繁に求められる事はない。私の機嫌を伺い丁寧に誘われるのみ。
今回はちょっと強引だけど。多分過去を思い出したからだ。
「……わ…わん」
「偉いね。可愛い子犬ちゃん」
一条家の権力に物を言わせている訳でもないし暴力で脅されてもない。あたかも自然な流れのように
言うことを聞いている自分は既に智早に洗脳されているのかも。
家族から殺すと脅されるほど反対されていてしかも姉の元婚約者である男との行為なのに。
私は自分から近づいていって抱っこされる。もちろん、下半身は繋がった状態で。
「う…こ…これ、……つ…辛いです」
「もっとしっかり僕に抱きついて身を任せて良いんだよ。力まないで」
「でもこの前お任せした結果」
「ゆっくり動くからね」
「あっあ……い…い…った…ぁああ足攣るぅう……っうう」
「硬いね。ストレッチしたほうがいい」
悲鳴と嬌声を行き来する私を他所によっぽどその体位で行為がしたかったのか中々下ろそうと
はしなかった。
「あ。す、すいません。不審者かと……思って」
互いに息遣いが荒くなって気分が高まってきた所でパッと世界が明るくなる。視線の先には警備の
オジサン。手には警棒でぽかんとした顔でこっちを見てくる。それはそうだ。半裸の男女が部屋の隅
で抱き合っていたら。とっさに智早が私の体を抱きしめて隠してくれたけれど多少は見えたはず。
生きる、と宣言した後だったけど智早にしがみついている状態だったからまだマシで逆を向いて
いたら恥ずかしさに生きていけなかった。
「玄関くらいは電気をつけておけばよかった。我慢出来なかった僕が悪い。ごめん」
「警備員さんには黙っていてくれと言いましたけど。難しいですよねきっと」
離れへ向かう私達を見ていた人も居ただろうし明日の朝には広まってそう。
バスローブを着せてもらい場所を寝室に移動して話し合う。
「健全な男女の営みだよ」
「貴方に近づけば大奥様に殺されるのに」
彼女自身も死ぬと言った。姉は男と情死して。私は一条家の大奥様と死ぬなんて。
「どうせお祖母様の方が先に星になる」
「笑顔で言わないでください」
「脅しなんてらしくないことばかりしてる。あの人も変わったな…」
冷静になって恐れおののく私を他所に智早がまた抱き寄せてくる。発見されてしまい中途半端な所
で終わってはいるけれどここからまた改めてしたい気持ちは私には無い。それを察しているのか智早も
無理に続けようとはしてこない。
「私が居なくなっていても気にせず生きてください」
「やりたくなかったけど君が安心するまでは縛っておくしかないか」
「リード付けられる……」
でもむしろそれくらいの冷めた態度で居てくれたほうが大奥様は安心するんだろうか。
「君の父親の仕事を手伝って好きなだけ融資もしよう。短大にもかなりの支援をする。
君のアルバイト先にもご挨拶をしに行く」
「……」
「もし、君が居なくなったらそれらを全部徹底的に壊す」
物理的に縛る方が簡単なのに。お金も時間もかける、そういう精神的な縛り方。
智早らしい、のかも。なんて思うだけで拒否反応が出なかったのは既に麻痺しているのか。
「父や短大はともかくお店にまでご迷惑を」
「僕を信じてここに居てほしい。生きると言ってくれたようにここに居ると言ってほしい」
「居ます」
「今はこんな言葉でしか君を引き止められなくて情けないけど。何れは僕と離れたくない気持ちに
変わってくれるといいな」
「智早様と居るのが嫌だとは思いません。でも、大奥様がいる限り無理です」
「あの人は僕が誰と付き合っても嫌味を言って意地悪をする。女性って幾つになっても大変だ」
クスクスと笑いながら部屋の電気をすべて消して私を抱きしめたままベッドに寝転ぶ。
「おやすみなさい智早様」
「おやすみ」
明日世界はどうなっているのか。不安や恐れもあるけれど眠気には勝てずに意識が遠のいた。
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