18 / 20
懸念
しおりを挟む
――――パシャッ。
「…………ん?」
柔らかな陽射しを受け、ぼんやり目を開き眼を擦る。それから、隣へ視線を向けると――
「……おはようございます、冬樹先輩。心地の好い朝ですね」
「……はい、おはようございま……っ!!」
――そう、柔らかな微笑で告げる美少女、藤島さんの姿が。そして、そんな彼女を認識するやいなやさっと目を――
「……ふふっ、なんで目を逸らすんですか? もう、今更ではありませんか」
「……まあ、そうなんですけど」
さっと目を逸らす僕に、可笑しそうに声を洩らし尋ねる藤島さん。……まあ、そうなんですけど。そうなんですけども……それでも、やっぱり改めて直視するのはどうにも恥ずかしくて。
と言うのも……まあ、言わずもがなかもしれないけど……今、彼女は……いや、僕もだけど……まあ、一糸纏わぬ姿なわけでして。
――ところで、それはそれとして……いや、気のせいかな。
「……ところで、藤島さん。その、大変申し上げづらいのですが……今件について、もう警察にはお伝えしていますか?」
「……へっ?」
それから、二時間ほど経て。
朝食の最中、隣へ腰掛ける藤島さんへ躊躇いつつもそう問い掛ける。尤も、円卓なので隣という表現が適切なのかどうかはさて措いて。
……正直、今の今までかなり迷った。果たして、僕の方から当件に直接触れるような発言をすべきなのかどうか。実際、藤島さん自身、初日の事情説明の時以外は殊更この件に言及していなかった。それも考慮すれば、少なくとも僕の方から口にするのは極力避けるべきだと考えていたし、今もそう思っている。
だけど……それでも、聞かずにはいられなかった。万が一にも、まだ警察に連絡していなかったら――そんな途方もない懸念が、ずっと頭から離れなかったから。
ちなみに、一応言い訳しておくと……別に、責務を放棄したいがためにこんなことを尋ねたわけじゃない。むしろ……彼女の返答に関わらず、全て解決するまで僕は責務《これ》を続けたいと本気で思っている。事情が事情なのだし、不謹慎との自覚はあるけど……それでも、少しでも藤島さんの力になれているなら本気に嬉しい――そう、心から思ってしまうから。
……だけど、僕風情がいくら意気込んだところで彼女の底知れぬ不安や恐怖が全て拭えるはずもないし……何より、例の人物が物理的に危害を加えてこようものなら、きっと僕なんかじゃ手に負えない。
もちろん、こんな僕でも藤島さんの盾になることは出来るし、僕自身望むところでもある。……だけど、当然ながらそれだけじゃ根本的解決には程遠い。そのためには、やはり警察に頼る他な――
「……えっと、それに関してなのですが――」
「……そんな、ことって……」
躊躇いがちに話す藤島さんの言葉を聞き終えた後、唖然と声を洩らす僕。彼女の説明によると、僕に相談をしたおよそ一週間前――即ち、夜道にて違和感を覚えてからほどなく、警察には本件を伝えたようで。
――だけど、警察の人はまるで取り合ってくれなかったとのこと。あまりにも状況証拠に乏しく、著しく信憑性に欠けている――そんな旨を伝えるだけで、一切の措置を講じてくれなかったとのことで。
……なに、それ。彼女は、日々こんなにも恐怖に身を震わせているというのに……そんなの、あんまりじゃないか。……そういう、ことなら――
「……ふぇっ!?」
卒然、常ならぬ上擦った声を洩らす藤島さん。……いや、常ならぬも何も、完全に僕のせいなんだけども。そりゃ、何の前触れもなく急に抱き締められたらびっくりだよね。……だけど、
「……僕自身、頼りないことは百も承知です。……それでも、貴女は……貴女だけは……僕が、絶対に守ります」
「――っ!? ……頼りないなんて、そんなことないで
す。ありがとうございます……冬樹先輩」
そう、ありったけの決意を告げる。何の保証もない、何とも弱く頼りない僕の決意。それでも……そんな僕に信頼を示すように、強く抱き締め返し感謝を告げてくれる藤島さん。そんな彼女に対し、今一度決意を固めいっそう強く抱き締めた。
「…………ん?」
柔らかな陽射しを受け、ぼんやり目を開き眼を擦る。それから、隣へ視線を向けると――
「……おはようございます、冬樹先輩。心地の好い朝ですね」
「……はい、おはようございま……っ!!」
――そう、柔らかな微笑で告げる美少女、藤島さんの姿が。そして、そんな彼女を認識するやいなやさっと目を――
「……ふふっ、なんで目を逸らすんですか? もう、今更ではありませんか」
「……まあ、そうなんですけど」
さっと目を逸らす僕に、可笑しそうに声を洩らし尋ねる藤島さん。……まあ、そうなんですけど。そうなんですけども……それでも、やっぱり改めて直視するのはどうにも恥ずかしくて。
と言うのも……まあ、言わずもがなかもしれないけど……今、彼女は……いや、僕もだけど……まあ、一糸纏わぬ姿なわけでして。
――ところで、それはそれとして……いや、気のせいかな。
「……ところで、藤島さん。その、大変申し上げづらいのですが……今件について、もう警察にはお伝えしていますか?」
「……へっ?」
それから、二時間ほど経て。
朝食の最中、隣へ腰掛ける藤島さんへ躊躇いつつもそう問い掛ける。尤も、円卓なので隣という表現が適切なのかどうかはさて措いて。
……正直、今の今までかなり迷った。果たして、僕の方から当件に直接触れるような発言をすべきなのかどうか。実際、藤島さん自身、初日の事情説明の時以外は殊更この件に言及していなかった。それも考慮すれば、少なくとも僕の方から口にするのは極力避けるべきだと考えていたし、今もそう思っている。
だけど……それでも、聞かずにはいられなかった。万が一にも、まだ警察に連絡していなかったら――そんな途方もない懸念が、ずっと頭から離れなかったから。
ちなみに、一応言い訳しておくと……別に、責務を放棄したいがためにこんなことを尋ねたわけじゃない。むしろ……彼女の返答に関わらず、全て解決するまで僕は責務《これ》を続けたいと本気で思っている。事情が事情なのだし、不謹慎との自覚はあるけど……それでも、少しでも藤島さんの力になれているなら本気に嬉しい――そう、心から思ってしまうから。
……だけど、僕風情がいくら意気込んだところで彼女の底知れぬ不安や恐怖が全て拭えるはずもないし……何より、例の人物が物理的に危害を加えてこようものなら、きっと僕なんかじゃ手に負えない。
もちろん、こんな僕でも藤島さんの盾になることは出来るし、僕自身望むところでもある。……だけど、当然ながらそれだけじゃ根本的解決には程遠い。そのためには、やはり警察に頼る他な――
「……えっと、それに関してなのですが――」
「……そんな、ことって……」
躊躇いがちに話す藤島さんの言葉を聞き終えた後、唖然と声を洩らす僕。彼女の説明によると、僕に相談をしたおよそ一週間前――即ち、夜道にて違和感を覚えてからほどなく、警察には本件を伝えたようで。
――だけど、警察の人はまるで取り合ってくれなかったとのこと。あまりにも状況証拠に乏しく、著しく信憑性に欠けている――そんな旨を伝えるだけで、一切の措置を講じてくれなかったとのことで。
……なに、それ。彼女は、日々こんなにも恐怖に身を震わせているというのに……そんなの、あんまりじゃないか。……そういう、ことなら――
「……ふぇっ!?」
卒然、常ならぬ上擦った声を洩らす藤島さん。……いや、常ならぬも何も、完全に僕のせいなんだけども。そりゃ、何の前触れもなく急に抱き締められたらびっくりだよね。……だけど、
「……僕自身、頼りないことは百も承知です。……それでも、貴女は……貴女だけは……僕が、絶対に守ります」
「――っ!? ……頼りないなんて、そんなことないで
す。ありがとうございます……冬樹先輩」
そう、ありったけの決意を告げる。何の保証もない、何とも弱く頼りない僕の決意。それでも……そんな僕に信頼を示すように、強く抱き締め返し感謝を告げてくれる藤島さん。そんな彼女に対し、今一度決意を固めいっそう強く抱き締めた。
0
あなたにおすすめの小説
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる