36 / 53
罪悪の念
しおりを挟む
「――本日はありがとうございます、高月さん。とても楽しい時間でした」
「……いえ、こちらこそ今日はありがとうございます、岡島さん」
それから、2時間ほど経て。
閑散とした住宅街の交差点にて、柔らかな笑顔でそう告げてくれる岡島さん。失礼とは承知だけれど……ほんと、物好きな人ね。私との時間が楽しいなんて。
さて、あの後だけれど――まあ、改めて説明するほどのこともなく。基本コミュ障で無愛想な私にも笑顔で会話を引っ張ってくれて……この辺りは、彼と似ているところが……いや、そうでもないかな。
「……ところで、高月さん。本当に良いのですか? もうすっかり暗くなっていますし、もし遠慮なさっているのなら――」
「……いえ、決して遠慮などでは。本当に、もうすぐそこですので……お気遣い、ありがとうございます岡島さん」
「……そう、ですか。それでは、お気をつけて。お休みなさい、高月さん」
「……ええ、お休みなさい」
その後、挨拶を交わし反対方向へと歩いていく。伝えた通り、ほどなく到着する家へと足を進める最中、今日のことを思い起こす。
……やっぱり、申し訳ないよね。彼は、私との時間を楽しみに来てくれた。そして、実際に楽しんでもくれていた……と思う。なのに……私は、そうじゃなくて。私はただ、利用しただけ。言ってみれば、戸波くんに対する当てつけのために彼を利用しただけ。彼は、また誘ってくれると言っていたけど――もう、応じるべきではないだろう。もちろん、こんな言い分が適切だとは思わないけど……それでも、彼のために私が出来るとすればこれが唯一の――
「――――っ!!」
刹那、パッと振り返る。だけど、視界に映るは仄かに灯る住宅街――先ほどまでと同じく、人ひとりいない閑散とした風景で。……気の、せい? いや、でも……そう言えば、あの時も――
「…………」
……いや、駄目だよね。うん、流石に申し訳なさすぎる。そもそも、もう部屋はすぐそこ。入ってしまえば流石に危険はないだろうし、そこから警察に連絡するなりすれば十分に対処可能で……なのに、そんな思考とは裏腹に私の手は右ポケットへと伸びていく。そして――
「――ねえ、戸波くん。その……本当に、申し訳ないのだけど――」
「……いえ、こちらこそ今日はありがとうございます、岡島さん」
それから、2時間ほど経て。
閑散とした住宅街の交差点にて、柔らかな笑顔でそう告げてくれる岡島さん。失礼とは承知だけれど……ほんと、物好きな人ね。私との時間が楽しいなんて。
さて、あの後だけれど――まあ、改めて説明するほどのこともなく。基本コミュ障で無愛想な私にも笑顔で会話を引っ張ってくれて……この辺りは、彼と似ているところが……いや、そうでもないかな。
「……ところで、高月さん。本当に良いのですか? もうすっかり暗くなっていますし、もし遠慮なさっているのなら――」
「……いえ、決して遠慮などでは。本当に、もうすぐそこですので……お気遣い、ありがとうございます岡島さん」
「……そう、ですか。それでは、お気をつけて。お休みなさい、高月さん」
「……ええ、お休みなさい」
その後、挨拶を交わし反対方向へと歩いていく。伝えた通り、ほどなく到着する家へと足を進める最中、今日のことを思い起こす。
……やっぱり、申し訳ないよね。彼は、私との時間を楽しみに来てくれた。そして、実際に楽しんでもくれていた……と思う。なのに……私は、そうじゃなくて。私はただ、利用しただけ。言ってみれば、戸波くんに対する当てつけのために彼を利用しただけ。彼は、また誘ってくれると言っていたけど――もう、応じるべきではないだろう。もちろん、こんな言い分が適切だとは思わないけど……それでも、彼のために私が出来るとすればこれが唯一の――
「――――っ!!」
刹那、パッと振り返る。だけど、視界に映るは仄かに灯る住宅街――先ほどまでと同じく、人ひとりいない閑散とした風景で。……気の、せい? いや、でも……そう言えば、あの時も――
「…………」
……いや、駄目だよね。うん、流石に申し訳なさすぎる。そもそも、もう部屋はすぐそこ。入ってしまえば流石に危険はないだろうし、そこから警察に連絡するなりすれば十分に対処可能で……なのに、そんな思考とは裏腹に私の手は右ポケットへと伸びていく。そして――
「――ねえ、戸波くん。その……本当に、申し訳ないのだけど――」
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜
来栖れいな
恋愛
「覚醒しなければ、生きられない———
しかし、覚醒すれば滅びの呪いが発動する」
100年前、ヴァンパイアの王家は滅び、純血種は絶えたはずだった。
しかし、その血を引く最後の姫ルナフィエラは古城の影で静かに息を潜めていた。
戦う術を持たぬ彼女は紅き月の夜に覚醒しなければ命を落とすという宿命を背負っていた。
しかし、覚醒すれば王族を滅ぼした「呪い」が発動するかもしれない———。
そんな彼女の前に現れたのは4人の騎士たち。
「100年間、貴女を探し続けていた———
もう二度と離れない」
ヴィクトル・エーベルヴァイン(ヴァンパイア)
——忠誠と本能の狭間で揺れる、王家の騎士。
「君が目覚めたとき、世界はどう変わるのか......僕はそれを見届けたい」
ユリウス・フォン・エルム(エルフ)
——知的な観察者として接近し、次第に執着を深めていく魔法騎士。
「お前は弱い。だから、俺が守る」
シグ・ヴァルガス(魔族)
——かつてルナフィエラに助けられた恩を返すため、寡黙に寄り添う戦士。
「君が苦しむくらいなら、僕が全部引き受ける」
フィン・ローゼン(人間)
——人間社会を捨てて、彼女のそばにいることを選んだ治癒魔法使い。
それぞれの想いを抱えてルナフィエラの騎士となる彼ら。
忠誠か、執着か。
守護か、支配か。
愛か、呪いか——。
運命の紅き月の夜、ルナフィエラは「覚醒」か「死」かの選択を迫られる。
その先に待つのは、破滅か、それとも奇跡か———。
——紅き誓いが交わされるとき、彼らの運命は交差する。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
偽姫ー身代わりの嫁入りー
水戸けい
恋愛
フェリスは、王女のメイドだった。敗戦国となってしまい、王女を差し出さねばならなくなった国王は、娘可愛さのあまりフェリスを騙して王女の身代わりとし、戦勝国へ差し出すことを思いつき、フェリスは偽の王女として過ごさなければならなくなった。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる