古民家カフェで紡ぐ恋〜年上部下は犬系男子?〜

暦海

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気配

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「……いやー今日は特に忙しかったすね先輩。でも、それがなんか楽しくもあったり」
「ええ、そうね戸波となみくん。流石に少し疲れたけれど、それがむしろ充実感に繋がっていたように思う」
「そう、そうなんすよ! 流石先輩!」


 それから、およそ半日ほど経て。
 すっかり夜の帷が下りた帰り道を、未だ残る昂揚感と共に歩いていく私達。この会話が示すように、今日は本当に忙しかった。それで、仕込みなどの時間も後にずれ込んでしまい、結果として閉店作業も平時より遅くなってしまい……まあ、良いんだけどね。彼の言うように楽しかったし、お客さんがたくさん来てくれるのはありがたいし嬉しいから。……ただ、それはそれとして――


「――ところで、いつまで付いてくるつもりっすか?」

 すると、ふと振り返りそう問い掛ける戸波くん。それは、私に対して……ではなく。そもそも私は隣にいるのだし。それでは、誰に対してかと言うと――

「…………あっ、えっと、その……」


 少し後方、電柱の陰でオロオロする華やかな顔立ちの女性――カフェ『TAKATSUKI』の大事な戦力たる大学生スタッフ、藤巻ふじまきさんに対してで。


 ――ここ数日、何度か気配は感じていた。そして、彼女である可能性もあるとは思っていた。だからこそ、通報することは避けたわけだし。

「……あっ、えっと、その……ごめんなさい!」
「あっ、ちょっと待っ――すみません、先に帰っててください先輩!」
「……へっ? あっ、ちょっと待っ――」


 すると、困惑の様子でそう言い残し脱兎の如く去っていく藤巻さん。そして、そんな彼女を一心不乱に追っていく戸波くん。……まあ、そうなるよね。流石にこのまま逃がすわけにもいかないし。


 ともあれ、このまま佇んでいても仕方がないのでそのまま帰路を進むことに。……それにしても、可能性は考慮していたものの……正直、違っててほしかったという思いはあって。尤も、理由はおおかた察せられるけ――


「――――っ!!」

 刹那、背筋が凍る。どうしてか、去ったはずの……いや、違う。これは、もっと異質べつの――

 ……そもそも、どうして気付かなかった。あの日――戸波くんに来てもらった日に感じた視線は……恐怖は、ここ数日の――さっきの比なんかじゃなかった。……つまりは、彼女とは別の――


「――――っ!!」


 瞬間、口が何かに覆われる。そして、ほどなく意識が途絶え――



 



 
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