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帝さまはご心配?
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「――やぁ、更衣。見る限り、今日は随分と体調が良さそうだね」
「あっ、帝さま。はい、お陰さまで」
それから、およそ二週間経て。
中島にて、鶯の鳴き声に耳を澄ませながら透き通る水の流れを眺めていると、ふと橋の方から柔らかな声音が優しく届く。視線を向けると、そこには声音に違わぬ柔らかな微笑を湛える帝の姿が。
あ、ちなみに中島とは庭園内の池に囲まれた島のことで、それ以外の部分とは橋で繫がっていて……うん、今更ながらすごいね。こんなのが家の敷地にあるとか。
まあ、それはそれとして――帝の言うように、ここ最近はわりと体調が良いと自分でも思う。……いや、そもそも帆弥の方は元より病気でも何でもないけども。
とは言え――こちらに来てまだ三週間ほどではあるけど、本作にて描かれているような被害を毎日のように受けようものなら、流石に私とて気丈ではいられなくなるだろう。
あと……実害ではないものの、宮中を歩くたび四方八方から妬み嫉みの視線は依然として……うん、ほんと滅入る。まあ、この程度なら現代でも慣れて……いや、流石にここまで酷くはなかったけども。
ともあれ、繰り返しになるけど私の体調がわりと良い理由は――やはり、完全とは言わずとも最小限くらいには実害を抑えられている点にあって。
あの夜、女御と交わした約束を後日、他数人とも交わすことに成功――まあ、あまり帝の負担になっちゃ悪いので数人に留めているけども。
とは言え――たった数人で、数多のお妃達の嫌がらせを食い止めるなど到底不可能……いや、そもそも自ら加担しないだけで、別に嫌がらせを食い止めるくれるわけでもないし。
だけど、存外そうでも――全く以て不可能というわけでもなく。と言うのも――桐壺を最も憎むべき敵と看做す点で、彼女らは一心同体だった。それが、あの夜を境に状況は一気に変わった。
たかが一人――されど、一人の裏切りを皮切りにお妃達の中で疑心が生じた。あいつも、いやこいつも裏切り者では――そんな疑念が蔓延し、互いが互いを信じられなくなっていく。一枚岩だったはずの彼女らに、修復し得ない程の亀裂が生じたわけで。
そういうわけで――完全とは言えないものの、私は今や嫌がらせはほぼ受けて……いや、帆弥の方は元よりほぼ受けてないんだけどね。
「……それにしても、本当に良かった」
「……帝さま?」
ふと、私の隣でそっと呟く帝。いったい、何が良かったの――
「……もちろん、元凶たる私が言えた義理でないことは分かっているつもりたが……それでも、以前のような苦痛に耐え忍ぶ貴女を見るのは、私としても本当に辛く、胸が張り裂けるような思いだった。だから……今のような、陽だまりのように穏やかな微笑みを湛える貴女の姿を見て、本当に良かったと心から思うよ」
「……帝さま」
そう、私の瞳を真摯に見つめ伝える帝。そんな彼の瞳には、うっすら涙すら浮かんでいて。
……うん、分かってはいたけど……ほんとに、好きなんだなぁ。本当に、桐壺のことを誰よりも深く――
「……ところで、更衣。実は、貴女に関し一つ気掛かりなことがあってね」
「……気掛かり、でしょうか……?」
一人沁み沁みとしていると、ふと憂慮を浮かべそう口にする帝。……いったい、どうしたのだろう。彼自身そう言ったように、ここ最近は何ら問題なんて――
「……あくまで、宮中での噂に過ぎないのだけど……最近、貴女らしくもなく口調が乱れているとの――」
「いえそんなことはありゃしませんわおほほほほ!」
「更衣!?」
「あっ、帝さま。はい、お陰さまで」
それから、およそ二週間経て。
中島にて、鶯の鳴き声に耳を澄ませながら透き通る水の流れを眺めていると、ふと橋の方から柔らかな声音が優しく届く。視線を向けると、そこには声音に違わぬ柔らかな微笑を湛える帝の姿が。
あ、ちなみに中島とは庭園内の池に囲まれた島のことで、それ以外の部分とは橋で繫がっていて……うん、今更ながらすごいね。こんなのが家の敷地にあるとか。
まあ、それはそれとして――帝の言うように、ここ最近はわりと体調が良いと自分でも思う。……いや、そもそも帆弥の方は元より病気でも何でもないけども。
とは言え――こちらに来てまだ三週間ほどではあるけど、本作にて描かれているような被害を毎日のように受けようものなら、流石に私とて気丈ではいられなくなるだろう。
あと……実害ではないものの、宮中を歩くたび四方八方から妬み嫉みの視線は依然として……うん、ほんと滅入る。まあ、この程度なら現代でも慣れて……いや、流石にここまで酷くはなかったけども。
ともあれ、繰り返しになるけど私の体調がわりと良い理由は――やはり、完全とは言わずとも最小限くらいには実害を抑えられている点にあって。
あの夜、女御と交わした約束を後日、他数人とも交わすことに成功――まあ、あまり帝の負担になっちゃ悪いので数人に留めているけども。
とは言え――たった数人で、数多のお妃達の嫌がらせを食い止めるなど到底不可能……いや、そもそも自ら加担しないだけで、別に嫌がらせを食い止めるくれるわけでもないし。
だけど、存外そうでも――全く以て不可能というわけでもなく。と言うのも――桐壺を最も憎むべき敵と看做す点で、彼女らは一心同体だった。それが、あの夜を境に状況は一気に変わった。
たかが一人――されど、一人の裏切りを皮切りにお妃達の中で疑心が生じた。あいつも、いやこいつも裏切り者では――そんな疑念が蔓延し、互いが互いを信じられなくなっていく。一枚岩だったはずの彼女らに、修復し得ない程の亀裂が生じたわけで。
そういうわけで――完全とは言えないものの、私は今や嫌がらせはほぼ受けて……いや、帆弥の方は元よりほぼ受けてないんだけどね。
「……それにしても、本当に良かった」
「……帝さま?」
ふと、私の隣でそっと呟く帝。いったい、何が良かったの――
「……もちろん、元凶たる私が言えた義理でないことは分かっているつもりたが……それでも、以前のような苦痛に耐え忍ぶ貴女を見るのは、私としても本当に辛く、胸が張り裂けるような思いだった。だから……今のような、陽だまりのように穏やかな微笑みを湛える貴女の姿を見て、本当に良かったと心から思うよ」
「……帝さま」
そう、私の瞳を真摯に見つめ伝える帝。そんな彼の瞳には、うっすら涙すら浮かんでいて。
……うん、分かってはいたけど……ほんとに、好きなんだなぁ。本当に、桐壺のことを誰よりも深く――
「……ところで、更衣。実は、貴女に関し一つ気掛かりなことがあってね」
「……気掛かり、でしょうか……?」
一人沁み沁みとしていると、ふと憂慮を浮かべそう口にする帝。……いったい、どうしたのだろう。彼自身そう言ったように、ここ最近は何ら問題なんて――
「……あくまで、宮中での噂に過ぎないのだけど……最近、貴女らしくもなく口調が乱れているとの――」
「いえそんなことはありゃしませんわおほほほほ!」
「更衣!?」
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