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源ちゃんのお悩み?
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「――ねえ、源ちゃん。気のせいかもしれないけど……最近、元気ない?」
「…………え?」
それから、二週間ほど経て。
柔らかな風が竹籤を揺らす朝、御簾越しにそう問い掛けてみる。直接顔を合わせられていないので、はっきりそうだとは言えないが……それでも……こう、雰囲気や声音から何処か憂いている感じがして。
ところで……二週間とは言ったものの、それはあくまで私の体感――この世界においては、例の如く幾許か月日が経過しているようで……うん、全く余韻に浸らせてくれないよね。
まあ、その辺りの不服は次回会った際にでも存分にぶちまけることとして……ともかく、今は源ちゃん――我が愛息の憂いについて。もちろん、藤壺と逢えないからというのは大いにあるのだろうけど……心做しか、それ以外の理由もなくはないような――
「……その、女御さまに申し上げるべきことかどうか定かでないのですが……その、どうにも妻から相手にされていないような気がしまして」
すると、ややあって逡巡の窺える口調で答える源ちゃん。妻というのは、左大臣の姫君たる葵の上のことで間違いないだろう。元服を機に婚姻を結んだ、彼より四つ歳上の綺麗な女の子だったはず。ともあれ、そんな彼に対し私は――
「……なるほど」
そう、ポツリと呟く。別段、驚くことじゃない。むしろ、本作通りと言っていい。……まあ、言わば政略結婚だしね。すんなり上手くいく方が珍しいだろう。お義兄さん――頭中将とは、比較的仲が良いみたいなんだけどね。……だけど――
「……心配ないよ、源ちゃん。今は、少し心の距離があるかもしれないけど……でも、いつかちゃんと想い合える日が来るから。だから、これからも辛抱強く彼女のことを見ていてあげてほしいな」
「……女御、さま……」
御簾越しに、ポツリとそんな呟きが届く。きっと思いも寄らず、また俄には信じ難い返答だったことだろう。
だけど、私としてはただ希望的観測を述べているつもりもなく。繰り返しになるけど、お世辞にも二人は上手くいっているとは言い難い。
だけど……私の記憶だと、彼女の――葵の上の懐妊を機に、彼女に対する源ちゃんの愛情は確かなものになっていったはず。悲しいことに、彼女は彼の愛人――六条の御息所という女性により、帰らぬ人となってしまったのだけど……あの件がなければ、存外その後の二人の絆は深まっていったのではないかと思う。
あ、ちなみにこの何とも恐ろしい話の経緯だけど……こう、六条さんの生霊が彼女へ乗り移って、こう……うん、やっぱり止めよ。なんか、馬鹿みたいな説明になりそうだし。
ともあれ、そういうわけで――もし、あのまま葵の上が生きていたら……ん、そういうことなら――
「……ねえ、源ちゃん。一応、聞いておきたいんだけどさ……今、藤壺と葵の上さま以外に、その……特に想いを寄せている女の人はいないよね?」
「…………へっ?」
……うん、この聞き方で良かったのだろうか。……いや、それ以前に藤壺は一応この子の母親――こんなことを聞かれても、どう答えて良いやらという感じだろう。
だけど、私とて何も好奇心でこんな野暮な詮索をしているわけではない。これでも、私なりに彼のためを想ってのこと。返答次第では、事前に何かしら手を打てる可能性もあ――
「……えっと、その、少々申し上げづらいのですが……その、最近、六条さまのお所へ――」
…………うん、遅かったか。
「…………え?」
それから、二週間ほど経て。
柔らかな風が竹籤を揺らす朝、御簾越しにそう問い掛けてみる。直接顔を合わせられていないので、はっきりそうだとは言えないが……それでも……こう、雰囲気や声音から何処か憂いている感じがして。
ところで……二週間とは言ったものの、それはあくまで私の体感――この世界においては、例の如く幾許か月日が経過しているようで……うん、全く余韻に浸らせてくれないよね。
まあ、その辺りの不服は次回会った際にでも存分にぶちまけることとして……ともかく、今は源ちゃん――我が愛息の憂いについて。もちろん、藤壺と逢えないからというのは大いにあるのだろうけど……心做しか、それ以外の理由もなくはないような――
「……その、女御さまに申し上げるべきことかどうか定かでないのですが……その、どうにも妻から相手にされていないような気がしまして」
すると、ややあって逡巡の窺える口調で答える源ちゃん。妻というのは、左大臣の姫君たる葵の上のことで間違いないだろう。元服を機に婚姻を結んだ、彼より四つ歳上の綺麗な女の子だったはず。ともあれ、そんな彼に対し私は――
「……なるほど」
そう、ポツリと呟く。別段、驚くことじゃない。むしろ、本作通りと言っていい。……まあ、言わば政略結婚だしね。すんなり上手くいく方が珍しいだろう。お義兄さん――頭中将とは、比較的仲が良いみたいなんだけどね。……だけど――
「……心配ないよ、源ちゃん。今は、少し心の距離があるかもしれないけど……でも、いつかちゃんと想い合える日が来るから。だから、これからも辛抱強く彼女のことを見ていてあげてほしいな」
「……女御、さま……」
御簾越しに、ポツリとそんな呟きが届く。きっと思いも寄らず、また俄には信じ難い返答だったことだろう。
だけど、私としてはただ希望的観測を述べているつもりもなく。繰り返しになるけど、お世辞にも二人は上手くいっているとは言い難い。
だけど……私の記憶だと、彼女の――葵の上の懐妊を機に、彼女に対する源ちゃんの愛情は確かなものになっていったはず。悲しいことに、彼女は彼の愛人――六条の御息所という女性により、帰らぬ人となってしまったのだけど……あの件がなければ、存外その後の二人の絆は深まっていったのではないかと思う。
あ、ちなみにこの何とも恐ろしい話の経緯だけど……こう、六条さんの生霊が彼女へ乗り移って、こう……うん、やっぱり止めよ。なんか、馬鹿みたいな説明になりそうだし。
ともあれ、そういうわけで――もし、あのまま葵の上が生きていたら……ん、そういうことなら――
「……ねえ、源ちゃん。一応、聞いておきたいんだけどさ……今、藤壺と葵の上さま以外に、その……特に想いを寄せている女の人はいないよね?」
「…………へっ?」
……うん、この聞き方で良かったのだろうか。……いや、それ以前に藤壺は一応この子の母親――こんなことを聞かれても、どう答えて良いやらという感じだろう。
だけど、私とて何も好奇心でこんな野暮な詮索をしているわけではない。これでも、私なりに彼のためを想ってのこと。返答次第では、事前に何かしら手を打てる可能性もあ――
「……えっと、その、少々申し上げづらいのですが……その、最近、六条さまのお所へ――」
…………うん、遅かったか。
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