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お部屋デート?
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「おかえり、李…………へっ?」
「……その、お邪魔致します。律明高校三年四組、外崎玲里と申します」
「あ、えっと……はい、李星の母でございます」
それから、20分ほど経て。
玄関にて、私を迎えに来てくれたであろう母が呆気に取られた表情に。まさしく、鳩が豆鉄砲を食ったような表情で。……まあ、そうなるでしょうね。突然、我が娘が息を呑むほどの美少年を家に連れてきたとあらば。
「それでは、行きましょうか先輩。私の部屋はこちらです」
「あ、えっと……」
ともあれ、呆然とする母を横目に先輩を案内する私。一方、先輩は私と母を交互に見つつ戸惑った様子。あのまま放っておいて良いのか――大方、そんな心配をしているのでしょう。ですが、構いません。色々と聞き出されても面倒ですし。
「……あの、八雲さん。その、お母さまはあのままで良かったのでしょうか?」
「ああ、一向に構いませんよ先輩。母には、後から私の方から説明しておきますし」
その後、私の部屋にて予想通りの懸念を口にする外崎先輩。私達の関係について伝えなかったのは、恐らく私のため――その件を母に伝えるか否かについて、私側の意向が定かでなかったからでしょう。まあ、正直のところ私としてはどちらでも構いませんが。問われれば答える、くらいの感じで良いかなと。……まあ、それはともあれ――
「――さて、外崎先輩。一つの部屋に、仲睦まじい恋人が二人きり――となると、することは一つでしょう?」
「――そうですね、ここは余事象を利用する方が良いかと。正攻法でも解けないわけではないですが、あまりにも計算が煩わしいでしょうし」
「……はい、ご丁寧にありがとうございます」
それから、暫くして。
そう、丁寧に説明してくださる外崎先輩に謝意を告げる私。……ええ、それはそうでしょう。試験前なのですし、恋人同士が共に部屋で勉強するのは至極自然な流れでしょう。ええ、不満など何一つありません。
「……あの、八雲さん。もしかして、何か貴女のご気分を害することをしてしまいましたか? 僕」
「…………いえ、別に」
「……さて、そろそろ休憩にしましょうか」
「……えっ? まだ二時間くらいしか経ってないと思いますけど」
「いや二時間も経ってるんですよ。むしろ、その間ただの一度も手を止めないとか、いったいどんな集中力してるんですか」
「えっ、でも問題を読んでる時とか手は止まって――」
「そういう話はしちゃいませんが!?」
入室から、およそ二時間経て。
私の真っ当な――至極真っ当なはずの提案に、どうしてかちょこんと首を傾げ答える外崎先輩。いや、可愛いですけどね? 可愛いんですけども……えっと、意外と天然? まあ、恐らく他の人は知らないであろう先輩の一面をこうして間近で見られるというのはやはり役得なのでしょうけども。
「……ともかく、休憩ったら休憩です。リビングからお茶菓子を取ってきますので、先輩はゆっくり休んでてください。ベッドとかで」
「……いえ、絨毯で大丈夫ですけど。でも、わざわざ申し訳な――」
ともあれ、申し訳なさそうに話す先輩の言葉が終わらぬ間にいったん部屋を後にする私。少し申し訳ない気もしますが、ここで気遣いの応酬をしても仕方がないですし。
それから、リビングにいた母からの質問に適当に答えつつお茶菓子を持って再び部屋へ。……いや、申し訳ないとは思いますよ? ですが、後できちんとお答えしますので今はご了承を。
「…………美味しい、ですね」
「ふふっ、それなら良かったです。どうぞ、遠慮なさらずどんどん召し上がってくださいね?」
「あ、ありがとうございます……」
ともあれ、数分後。
私の部屋にて、謝意を告げつつ手に取ったチョコクッキーを口にしそんな感想を洩らす外崎先輩。尤も、彼ならどんな味でもそう言ってくれたことでしょうけど……この様子を見るに、本心からそう思ってくださっているのでしょう。……ふぅ、良かった。昨晩、丹精込めてお作りした甲斐があるというものです。それでは、私も一枚――
「「…………あっ」」
ふと、声が重なる。……いえ、その前に手が――互いにクッキーを取ろうとした手が重なったためです。それから、少し間があって――
「……っ!! も、申し訳ありません!」
「……いえ、こちらこそ」
慌てて手を引き謝意を述べる先輩に、些かたどたどしく答える私。……ええ、何ともベタなやり取りです。ですが、実際にこういう展開になるとこうなるものなのですね。貴重な経験です。
……ですが、それはそれとして――
「……あの、申し訳ありません、八雲さん」
「……いえ、こちらこそ」
すると、再び謝意を告げる外崎先輩に同じ答えを返す私。ですが、双方ともに先ほどの意味合いとは異なっていて。
「……その、お邪魔致します。律明高校三年四組、外崎玲里と申します」
「あ、えっと……はい、李星の母でございます」
それから、20分ほど経て。
玄関にて、私を迎えに来てくれたであろう母が呆気に取られた表情に。まさしく、鳩が豆鉄砲を食ったような表情で。……まあ、そうなるでしょうね。突然、我が娘が息を呑むほどの美少年を家に連れてきたとあらば。
「それでは、行きましょうか先輩。私の部屋はこちらです」
「あ、えっと……」
ともあれ、呆然とする母を横目に先輩を案内する私。一方、先輩は私と母を交互に見つつ戸惑った様子。あのまま放っておいて良いのか――大方、そんな心配をしているのでしょう。ですが、構いません。色々と聞き出されても面倒ですし。
「……あの、八雲さん。その、お母さまはあのままで良かったのでしょうか?」
「ああ、一向に構いませんよ先輩。母には、後から私の方から説明しておきますし」
その後、私の部屋にて予想通りの懸念を口にする外崎先輩。私達の関係について伝えなかったのは、恐らく私のため――その件を母に伝えるか否かについて、私側の意向が定かでなかったからでしょう。まあ、正直のところ私としてはどちらでも構いませんが。問われれば答える、くらいの感じで良いかなと。……まあ、それはともあれ――
「――さて、外崎先輩。一つの部屋に、仲睦まじい恋人が二人きり――となると、することは一つでしょう?」
「――そうですね、ここは余事象を利用する方が良いかと。正攻法でも解けないわけではないですが、あまりにも計算が煩わしいでしょうし」
「……はい、ご丁寧にありがとうございます」
それから、暫くして。
そう、丁寧に説明してくださる外崎先輩に謝意を告げる私。……ええ、それはそうでしょう。試験前なのですし、恋人同士が共に部屋で勉強するのは至極自然な流れでしょう。ええ、不満など何一つありません。
「……あの、八雲さん。もしかして、何か貴女のご気分を害することをしてしまいましたか? 僕」
「…………いえ、別に」
「……さて、そろそろ休憩にしましょうか」
「……えっ? まだ二時間くらいしか経ってないと思いますけど」
「いや二時間も経ってるんですよ。むしろ、その間ただの一度も手を止めないとか、いったいどんな集中力してるんですか」
「えっ、でも問題を読んでる時とか手は止まって――」
「そういう話はしちゃいませんが!?」
入室から、およそ二時間経て。
私の真っ当な――至極真っ当なはずの提案に、どうしてかちょこんと首を傾げ答える外崎先輩。いや、可愛いですけどね? 可愛いんですけども……えっと、意外と天然? まあ、恐らく他の人は知らないであろう先輩の一面をこうして間近で見られるというのはやはり役得なのでしょうけども。
「……ともかく、休憩ったら休憩です。リビングからお茶菓子を取ってきますので、先輩はゆっくり休んでてください。ベッドとかで」
「……いえ、絨毯で大丈夫ですけど。でも、わざわざ申し訳な――」
ともあれ、申し訳なさそうに話す先輩の言葉が終わらぬ間にいったん部屋を後にする私。少し申し訳ない気もしますが、ここで気遣いの応酬をしても仕方がないですし。
それから、リビングにいた母からの質問に適当に答えつつお茶菓子を持って再び部屋へ。……いや、申し訳ないとは思いますよ? ですが、後できちんとお答えしますので今はご了承を。
「…………美味しい、ですね」
「ふふっ、それなら良かったです。どうぞ、遠慮なさらずどんどん召し上がってくださいね?」
「あ、ありがとうございます……」
ともあれ、数分後。
私の部屋にて、謝意を告げつつ手に取ったチョコクッキーを口にしそんな感想を洩らす外崎先輩。尤も、彼ならどんな味でもそう言ってくれたことでしょうけど……この様子を見るに、本心からそう思ってくださっているのでしょう。……ふぅ、良かった。昨晩、丹精込めてお作りした甲斐があるというものです。それでは、私も一枚――
「「…………あっ」」
ふと、声が重なる。……いえ、その前に手が――互いにクッキーを取ろうとした手が重なったためです。それから、少し間があって――
「……っ!! も、申し訳ありません!」
「……いえ、こちらこそ」
慌てて手を引き謝意を述べる先輩に、些かたどたどしく答える私。……ええ、何ともベタなやり取りです。ですが、実際にこういう展開になるとこうなるものなのですね。貴重な経験です。
……ですが、それはそれとして――
「……あの、申し訳ありません、八雲さん」
「……いえ、こちらこそ」
すると、再び謝意を告げる外崎先輩に同じ答えを返す私。ですが、双方ともに先ほどの意味合いとは異なっていて。
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