噂によると、女性がお嫌いとのことですが――それって、私も含まれていますか?

暦海

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部活見学です。

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(……ねえ、あれって……)
(……うん、例の外崎とざき先輩の……)
(……こんなとこまで来て、彼女アピールのつもり?)


 それから、二週間ほど経過した六月下旬。
 放課後にて、微かに届く女子生徒達の会話。まあ、微かにではあってもはっきりくっきり耳に入ってくるのですけど。そして、その理由は単純――彼女らが、きちんと私に聞こえるように話しているから。……うん、だったらもういっそはっきり言えば良いのにね。

 ともあれ、私がいるのは柔らかな和の風情漂う素朴な一室――外崎先輩の所属先たる、茶道部が使用する一室で。


 さて、今しがたあの会話を交わしていたのは同じく茶道部の部員達。どうやら、わざわざ部室まで来て彼女アピールをする私がたいそう気に入らないようで。……いや、関係ないか。そもそも、外崎先輩の恋人である時点で相当に気に入らないのでしょうし。

 ……あと、ついでに申すと――別に必要ないのですけどね、そんなアピール。そんな無駄なことせずとも、既に校内にて周知の事実なわけですし。

 まあ、それはともあれ……ちらと、視線を移す。そこには、この柔らかな空間に溶け込むように穏やかな表情で茶道具を手入れする外崎先輩の姿。思わず息を呑むようなその美しい姿に、改めて見蕩れてしまいます。

 すると、私の視線に気が付いたのか、少し心配そうな表情の外崎先輩。それでも、私が微笑みかけると、彼もまた穏やかな微笑を浮かべてくれて。……ふふっ、ほんとに役得ですね。




「……お待たせしました、八雲やくもさん。すみません、こんなに遅くまで」
「いえ、お気になさらず。そもそも、私が勝手に見学していただけですし」


 それから、およそ二時間後。
 まだ青空が広がる帰り道、やはり申し訳なさそうに話す外崎先輩に首を横に振り答える私。もちろん、彼が申し訳なく思う必要などありません。言わずもがな、見学してほしいと彼から言われたわけでもないですし。言ってほしいですけど、言われたわけでもないですし。


「……ところで、このようなことを申し上げるのは大変気が引けるのですが……もう、見学にはいらっしゃらない方が良いかと……」

 すると、ほどなくそう口にする外崎先輩。仮にも恋人に対し、自身の部活の見学に来るなとは中々にひどい言いようですけど……まあ、私のために仰ってくれているのは明白で。

 と言うのも……まあ、部室内での私への視線が刺さる刺さる。とは言っても、流石に部活中は部員の皆さん集中していらっしゃるようで。なので、ここでの視線と言うのは、私と同じく部活動……いえ、外崎先輩の見学に訪れた数多の生徒達からの視線のことで。……まあ、ですけど――

「どうか、お気になさらないでください。そもそも、このような状況は部室内に限らず教室――いえ、校内の至るところで既に経験しています。そして、それは校内随一の人気を博す外崎先輩と交際を結ぶとなれば、きっと避けては通れない道なので」
「……八雲さん」
「なので、先輩。間違っても、私のためを思って別れるなんて選択はなさらないでくださいね?」
「……はい、分かりました」

 そう、念を押すように伝える。尤も、の契約にて私達は三ヶ月はこの関係が保たれるのは保証されていますので、心配はないとは思いますが……それでも、私のためであれば約束を違えてでも、と考える可能性は捨てきれませんし。


「――それにしても、見学しててもどうせあんな感じなら、いっそもう私も入部しちゃいましょうか」
「…………へっ?」
「あっ、まだ心配してくださってます? ですが先ほども申したように、私なら大丈夫ですよ」
「あっ、いえ、確かに心配ではあるのですが……その、同じ部に恋人がいるというのが、単純に恥ずかしいと言いますか……」
「普通に拒否られてた!?」

 そう、控えめに話す外崎先輩に驚愕の声を上げる私。いや普通に拒否られてた!? ……いや、まあ言ってることは分からなくはないですが――

「あっ、ですが……もし、八雲さんが茶道に興味を持ってくださり、それで入部したいとお考えになったのであれば、部長としてもちろん貴女を歓迎致します」
「……先輩」

 すると、ふっと穏やかに微笑み告げる外崎先輩。部長として、というところが何とも彼らしいですね。ともあれ、そんな彼に対し――

「……そうですね。本日の光景は、大変感銘を受けるものでしたし……是非とも、前向きに検討したいと思っています」
「……はい、いつでもお待ちしています」

 そう伝えると、先輩はいつもの優しい笑顔で答えてくれました。




 

 

 
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