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思わぬ申し出?
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「ところで、先輩は普段お菓子作りとかなさいます?」
「……うーん、そうですね。和菓子なら少し」
「ああ、なんかそういうイメージはあります。先輩、茶道部ですし」
そんなやり取りを交わしつつ、卵、砂糖、バター、薄力粉、ココアパウダーなどの準備をする私達。材料からお察しかもしれませんが、これから作るのはクッキーです。理由は……まあ、先輩が以前美味しいと言ってくれたからで。
それと、もう一つ挙げるとすれば……どちらかと言えば、先輩は和のイメージ――こういった洋菓子は、あまり作ったことはないかと。実際、先ほどの彼の返答もおおかた予想通りのものでしたし。なので……ここで改めて私がその技量をお見せすれば、必ずや先輩は私の魅力に気付くはずなのです。
――それから、およそ二時間経て。
「……ねえ、外崎先輩」
「ん? どうかなさいましたか八雲さん」
外崎先輩――そして、先輩の手前を交互に見ながら呟く私。正確には、先輩の手前にある非常に色の良いクッキーを。……うん、なんか前にも似たようなことがあった気が。気がしますが――
「――いやだからめっちゃ上手いじゃないですか!!」
「…………へっ? 僕が、ですか……?」
「いやもういいわそのパターン!! 実は意外と不器用で真っ黒に焦がしちゃった先輩に、私が『おやおや、仕方ないですね~』なんて言って優しく手取り足取り教えて差し上げるという完璧なプランが台無しではありませんか!!」
「そんな馬鹿みたいなプランあったの!?」
そんな心からの叫びに、ありありと目を見開きツッコミを入れる外崎先輩。先輩がツッコミ側に回るとは何とも珍しく、彼の新しい一面を見られたことは良しとしますが……うん、分かってはいたものの、やっぱり器用ですね先輩。……あと、今しれっと馬鹿みたいとか言いました?
……ただ、そうは言っても――
「……ですが、先輩。肝心なのは、やはりお味です。人と同じで、いくら見た目が良くても中身が伴わなければ意味が…………うん、美味しい」
「……そうですか、それは良かった」
彼のクッキーを口へと含みそう伝えると、ほっと安堵した微笑を浮かべる外崎先輩。……うん、美味しい。まあ、好みの問題もあるとはいえこの見た目で美味しくなかったら逆に奇跡的ですし。
ともあれ、ご自身でも是非という私の勧めに応じ、控えめにクッキーを口へと含む先輩。まあ、ご自身で作ったものですし、おおかた味の予想は出来るかもしれませんが――
「……そうですね。やはり、以前八雲さんが作ってくれたクッキーの方が断然美味しいですね。是非、お一つ頂いても宜しいですか?」
「……先輩」
すると、柔らかな微笑でそう口にする外崎先輩。お世辞……というわけではなさそうですね。これでも、一応は恋人――それくらいは、そろそろ私にも判別できるようになってきたつもりですし。なので――
「――はい、一つと言わずいくつでも!」
「――ありがとうございます、八雲さん。今日も、本当に楽しかったです」
「ふふっ、そう言っていただけて嬉しいです、外崎先輩。こちらこそ、本当に楽しかったです」
それから、数十分後。
玄関にて、いつもの柔らかな微笑でそう告げてくださる外崎先輩。正直、私としてはまだまだもの足りない気持ちはあるのですが……もう、外はすっかり黄昏色。遅くまで他人様の家に残ることを良しとしない人ですからね、先輩は。
もちろん、それが他人様に迷惑を掛けないようにという彼の配慮であることは重々承知しているのですが……ですが、こちらとしては何一つとして迷惑などないのですけどね。それこそ、泊まっていってくださっても……まあ、流石に言いませんけどね。警戒されたり――ましてや、嫌われたりしてしまった日には生きていける気がしないですし。
……ところで、それはそれとして――
「……あの、外崎先輩、その……」
「ん、どうかしましたか八雲さん」
「……あ、いえ、その……その、お気をつけて帰ってくださいね!」
「……はい、ありがとうございます八雲さん」
何ともたどたどしくそう伝えると、仄かに微笑み謝意を告げる外崎先輩。……いったい、何を言おうと……いえ、何をしようとしたのでしょう、私は。そんな困惑の中、伸ばしかけた手をそっと戻し――
「……その、八雲さん。その、もし宜しければ……今度は、僕の家に来ませんか?」
「…………へっ?」
「……うーん、そうですね。和菓子なら少し」
「ああ、なんかそういうイメージはあります。先輩、茶道部ですし」
そんなやり取りを交わしつつ、卵、砂糖、バター、薄力粉、ココアパウダーなどの準備をする私達。材料からお察しかもしれませんが、これから作るのはクッキーです。理由は……まあ、先輩が以前美味しいと言ってくれたからで。
それと、もう一つ挙げるとすれば……どちらかと言えば、先輩は和のイメージ――こういった洋菓子は、あまり作ったことはないかと。実際、先ほどの彼の返答もおおかた予想通りのものでしたし。なので……ここで改めて私がその技量をお見せすれば、必ずや先輩は私の魅力に気付くはずなのです。
――それから、およそ二時間経て。
「……ねえ、外崎先輩」
「ん? どうかなさいましたか八雲さん」
外崎先輩――そして、先輩の手前を交互に見ながら呟く私。正確には、先輩の手前にある非常に色の良いクッキーを。……うん、なんか前にも似たようなことがあった気が。気がしますが――
「――いやだからめっちゃ上手いじゃないですか!!」
「…………へっ? 僕が、ですか……?」
「いやもういいわそのパターン!! 実は意外と不器用で真っ黒に焦がしちゃった先輩に、私が『おやおや、仕方ないですね~』なんて言って優しく手取り足取り教えて差し上げるという完璧なプランが台無しではありませんか!!」
「そんな馬鹿みたいなプランあったの!?」
そんな心からの叫びに、ありありと目を見開きツッコミを入れる外崎先輩。先輩がツッコミ側に回るとは何とも珍しく、彼の新しい一面を見られたことは良しとしますが……うん、分かってはいたものの、やっぱり器用ですね先輩。……あと、今しれっと馬鹿みたいとか言いました?
……ただ、そうは言っても――
「……ですが、先輩。肝心なのは、やはりお味です。人と同じで、いくら見た目が良くても中身が伴わなければ意味が…………うん、美味しい」
「……そうですか、それは良かった」
彼のクッキーを口へと含みそう伝えると、ほっと安堵した微笑を浮かべる外崎先輩。……うん、美味しい。まあ、好みの問題もあるとはいえこの見た目で美味しくなかったら逆に奇跡的ですし。
ともあれ、ご自身でも是非という私の勧めに応じ、控えめにクッキーを口へと含む先輩。まあ、ご自身で作ったものですし、おおかた味の予想は出来るかもしれませんが――
「……そうですね。やはり、以前八雲さんが作ってくれたクッキーの方が断然美味しいですね。是非、お一つ頂いても宜しいですか?」
「……先輩」
すると、柔らかな微笑でそう口にする外崎先輩。お世辞……というわけではなさそうですね。これでも、一応は恋人――それくらいは、そろそろ私にも判別できるようになってきたつもりですし。なので――
「――はい、一つと言わずいくつでも!」
「――ありがとうございます、八雲さん。今日も、本当に楽しかったです」
「ふふっ、そう言っていただけて嬉しいです、外崎先輩。こちらこそ、本当に楽しかったです」
それから、数十分後。
玄関にて、いつもの柔らかな微笑でそう告げてくださる外崎先輩。正直、私としてはまだまだもの足りない気持ちはあるのですが……もう、外はすっかり黄昏色。遅くまで他人様の家に残ることを良しとしない人ですからね、先輩は。
もちろん、それが他人様に迷惑を掛けないようにという彼の配慮であることは重々承知しているのですが……ですが、こちらとしては何一つとして迷惑などないのですけどね。それこそ、泊まっていってくださっても……まあ、流石に言いませんけどね。警戒されたり――ましてや、嫌われたりしてしまった日には生きていける気がしないですし。
……ところで、それはそれとして――
「……あの、外崎先輩、その……」
「ん、どうかしましたか八雲さん」
「……あ、いえ、その……その、お気をつけて帰ってくださいね!」
「……はい、ありがとうございます八雲さん」
何ともたどたどしくそう伝えると、仄かに微笑み謝意を告げる外崎先輩。……いったい、何を言おうと……いえ、何をしようとしたのでしょう、私は。そんな困惑の中、伸ばしかけた手をそっと戻し――
「……その、八雲さん。その、もし宜しければ……今度は、僕の家に来ませんか?」
「…………へっ?」
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