噂によると、女性がお嫌いとのことですが――それって、私も含まれていますか?

暦海

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足掻き

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「……あの、どうかしましたか外崎とざき先輩」
「……へっ? あ、いえ、何でも……」
「……そう、ですか。あ、私は結婚することになりました。なので、ご祝儀をくださいな」
「あ、はい、おめでとうございます。……えっと、こちらが五枚と――」


 それから、一週間ほど経て。
 空がすっかり茜色に染まる頃。
 私の部屋にて、サイコロを振り終え声を掛けると、ややあって少し目を逸らし答える先輩。やはり、見た通りぼうっとしていたようで。

 ところで、本日は平日――彼の所属する、茶道部の活動がある日です。なので、本来なら彼が自宅ここにいる日ではありません。
 ですが、今は八月初旬――ご多分に洩れず、我らが律命高校も夏休みに入っているわけで。なので、14時くらいに部活を終えその足で我が家へ訪れてくださったわけで……うん、お疲れ様です。そして、ありがとうございます先輩。


 ただ、それはそうと……うん、ゲームとはいえ少し複雑ですね。私の結婚に、彼の口からおめでとうと言われるのは。


 まあ、それはさておき――彼のこの様子には、まるで見当が付かないわけでもなく。実は、本日に限らずここ二週間――まあ、彼にもご予定がありますし、それほど会う機会に恵まれたわけでもありませんが――ここ二週間、彼のこのような様子は幾度か目にしていて。……そして、恐らくその理由は――


「……あの、八雲やくもさん。その……実は、お話ししたいことが――」
「――駄目です」


 そう、躊躇いつつも意を決した表情かおで口を開く外崎先輩。ですが、その言葉は私に遮られ……ありありと困惑を浮かべる彼に、私は再び口を開き――


「……駄目ですよ、先輩。ご存知の通り、契約の期間はまだ残っています。だから……別れるなんて、絶対に認めません。……少なくとも、今はまだ」
「…………八雲さん」


 そう、彼のを見つめ伝える。すると、茫然と私の名を口にする外崎先輩。……まあ、こう言われてしまえば彼としてはなにも言えませんよね。


 ……もちろん、分かっています。これが、仮初めの足掻きでしかないことも。……それでも、私は――



「……ありがとうございます、八雲さん。本日も、とても楽しかったです」
「……はい、私の方こそ。是非、またお越しくださいね先輩」
「……はい、もちろん」

 それから、ほどなくして。
 玄関にて、穏やかな微笑で告げる外崎先輩。そんな彼に、私も笑顔で答えます。互いに、何処かぎこちない笑顔で。

 その後、少し外に出る私。そして、去り行く先輩の背中を見送る。……あと一ヶ月、か。きっと、あっという間なのでしょう。なので、どうにかその間に先輩と――



 ……ですが、そんな勘案は一時中断せざるを得ないことに。と言うのも――数日後、不意に先輩との連絡が途絶えたから。

 

 
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