20 / 52
はぐれた?
しおりを挟む
「――いやーやっぱり勝負の味は格別だねっ」
「ははっ、それは良かったです」
その後、ほどなくして。
賑わいの中に戻り、ほのぼのとそんなやり取りを交わし歩く僕ら。彼女の言う勝利の味とは、もちろん例の最後の一つのことで。……うん、もうすっかり冷めちゃってたけど……でも、きっとそういう問題ではないのだろう。いずれにせよ、楽しそうで何よりです。
ところで……賑わい、とは言ったけど、一時間ほど前――公園に行く前ほどの往来は、今はもうなくて。もう帰っちゃった――わけではきっとなくて。きっと、移動したのだろう。もうすぐ始まる、祭りにおける定番たるあの行事のた――
「…………あれ?」
ふと、ポツリと呟く。と言うのも――
「……あの、風奈さん……?」
そう、茫然と尋ねる。だけど、返答など届くはずもなく。だって、先ほどまで隣にいたはずの彼女がどうしてか――
「――風奈さん!」
刹那、声と共に駆け出す。はぐれた? いつの間に? 確かに、さっきまでは……いや、そんなことはいい。とにかく、まずは彼女を見つけなきゃ!
その後、しばし駆け回る僕。幸い、今は往来が少なく誰かにぶつかる心配はほとんどない。だけど……だからこそ、どうしてはぐれてしまったのかが――
「――っ!! 風奈さん!」
卒然、叫びを上げる僕。……いや、この距離だし叫ばなくても良かったんだけど、つい。でも、ともあれ見つかって良かっ――
「…………えっと……あたし?」
「…………へっ?」
刹那、唖然と声を洩らす僕。だけど、驚いているのは僕だけでなく――
「……えっと、人違い、だと思うんだけど。あたし、ふうなって人じゃないし……」
「……あ、その……すみません……」
半身ほど向きを変え、甚く戸惑った様子で告げる少女。……まあ、それはそうだよね。彼女が、風奈さんでなければ。そして、実際に風奈さんじゃないのだろう。一人称がいつもと違うし……それに、こうして見ると少し違うし。
ただ……ほんとに、似てるなぁ。……いや、だから間違えて良いわけもないんだけど……それでも、後ろ姿だけじゃほぼ……それに、こうして顔を見てもほんとにそっくりで。それこそ、出会った頃だときっと見分けがつかなかっ……いや、僕の目が悪いのかな?
「……あの、君――」
「――あっ、はい仰る通り人違いです本当にすみませんでした!」
突如、彼女の言葉を遮り謝意を述べる僕。……しまった、よくないよねこういうの。ただでさえ失礼なことをしてしまったのに、より不快にさせ――
「あっ、そうじゃなくて……その、もしかして君、どこかで会ったことある? あたしと」
「……へっ?」
「……その、どっかで見たことあるかな、って。……でも、やっぱり気のせいかな。それじゃ、あたしはもう行くね。友達待たせちゃってるから」
「……あ、えっと……はい」
すると、そう言い残し軽く手を振り去っていく少女。一方、そんな彼女を茫然と見送る僕。……えっと、会ったことない、よね? たぶん、あったら覚えてると思うし。……ただ、それにしても本当に――
「――あっ、陶夜くん!」
「……あっ」
そんな思考の最中、不意に届いた明るい声。確認せずとも分かる、僕のよく知る大好きな声。ゆっくりとその方向――声の方向へと向き直り、徐に口を開き言葉を紡ぐ。
「……よかった、本物の風奈さんだ」
「偽物がいたの!?」
「ははっ、それは良かったです」
その後、ほどなくして。
賑わいの中に戻り、ほのぼのとそんなやり取りを交わし歩く僕ら。彼女の言う勝利の味とは、もちろん例の最後の一つのことで。……うん、もうすっかり冷めちゃってたけど……でも、きっとそういう問題ではないのだろう。いずれにせよ、楽しそうで何よりです。
ところで……賑わい、とは言ったけど、一時間ほど前――公園に行く前ほどの往来は、今はもうなくて。もう帰っちゃった――わけではきっとなくて。きっと、移動したのだろう。もうすぐ始まる、祭りにおける定番たるあの行事のた――
「…………あれ?」
ふと、ポツリと呟く。と言うのも――
「……あの、風奈さん……?」
そう、茫然と尋ねる。だけど、返答など届くはずもなく。だって、先ほどまで隣にいたはずの彼女がどうしてか――
「――風奈さん!」
刹那、声と共に駆け出す。はぐれた? いつの間に? 確かに、さっきまでは……いや、そんなことはいい。とにかく、まずは彼女を見つけなきゃ!
その後、しばし駆け回る僕。幸い、今は往来が少なく誰かにぶつかる心配はほとんどない。だけど……だからこそ、どうしてはぐれてしまったのかが――
「――っ!! 風奈さん!」
卒然、叫びを上げる僕。……いや、この距離だし叫ばなくても良かったんだけど、つい。でも、ともあれ見つかって良かっ――
「…………えっと……あたし?」
「…………へっ?」
刹那、唖然と声を洩らす僕。だけど、驚いているのは僕だけでなく――
「……えっと、人違い、だと思うんだけど。あたし、ふうなって人じゃないし……」
「……あ、その……すみません……」
半身ほど向きを変え、甚く戸惑った様子で告げる少女。……まあ、それはそうだよね。彼女が、風奈さんでなければ。そして、実際に風奈さんじゃないのだろう。一人称がいつもと違うし……それに、こうして見ると少し違うし。
ただ……ほんとに、似てるなぁ。……いや、だから間違えて良いわけもないんだけど……それでも、後ろ姿だけじゃほぼ……それに、こうして顔を見てもほんとにそっくりで。それこそ、出会った頃だときっと見分けがつかなかっ……いや、僕の目が悪いのかな?
「……あの、君――」
「――あっ、はい仰る通り人違いです本当にすみませんでした!」
突如、彼女の言葉を遮り謝意を述べる僕。……しまった、よくないよねこういうの。ただでさえ失礼なことをしてしまったのに、より不快にさせ――
「あっ、そうじゃなくて……その、もしかして君、どこかで会ったことある? あたしと」
「……へっ?」
「……その、どっかで見たことあるかな、って。……でも、やっぱり気のせいかな。それじゃ、あたしはもう行くね。友達待たせちゃってるから」
「……あ、えっと……はい」
すると、そう言い残し軽く手を振り去っていく少女。一方、そんな彼女を茫然と見送る僕。……えっと、会ったことない、よね? たぶん、あったら覚えてると思うし。……ただ、それにしても本当に――
「――あっ、陶夜くん!」
「……あっ」
そんな思考の最中、不意に届いた明るい声。確認せずとも分かる、僕のよく知る大好きな声。ゆっくりとその方向――声の方向へと向き直り、徐に口を開き言葉を紡ぐ。
「……よかった、本物の風奈さんだ」
「偽物がいたの!?」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※特別編4が完結しました!(2026.2.22)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる