神様へと祈りを込めて

暦海

文字の大きさ
26 / 52

さあ、今日は投げるよ!

しおりを挟む
「――さあ、今日は投げるよ陶夜とうやくん!」
「……あの、風奈ふうなさん。そのフォームでは間違いなく危険かと」


 それから、二週間ほど経て。
 夏休みが終わり二学期に入るも、尚も茹だるような暑さの続く九月上旬。
 空の手で投げるフォームを披露しつつ、朗らかな笑顔で告げる風奈さん。もちろん、その仕草も笑顔も全てがとても愛らしい。愛らしい、のだけども……それ、ピッチャーのフォームですよね? 間違いなく危険ではないかと……主に、貴女の肩が。


 さて、今いるのはリア充の方々ご用達のレジャー施設たるボーリング場……あれ、偏見かな?


 あっ、余談ですが風奈さんの夏休みの宿題は二人で分担してどうにか最終日に終わらせました。その際、ご自身のことを追い込まれると本気出すタイプなんて言ってたけど……うん、願わくば追い込まれなくとも本気を出していただけたらと。


「――それにしても、本当に楽しみです。初めてなので、是非とも手取り足取り手解きいただけたらと存じます、陶夜さん?」
「あっ、はいもちろんです! ……ですが、正直のところ僕もほとんど経験がなく……なので、きちんとお教え出来るかどうか……」
「なるほど、そうでしたか。つまりは、陶夜さんもほぼ初めてと考えて差し支えないのですね?」
「……はい、恥ずかしながら……すみません」
「いえ、羞恥も謝罪も必要ありません。でしたら、共に励まし合い上達していけば良いだけのことです。二人で協力して、一歩ずつ階段を登って行きましょう。そう、成長へと導く大人の階段を――」



「――いやなんかおかしいよねぇ!!」


 すると、不意に届いた叫びの声。瞬間、周囲の視線がいっそう集まった気もするけど、それはともあれ――


「……あの、どうかしましたか風奈さん?」
「いやおかしいよ陶夜くんも!! 何がかはよく分かんないけどどう考えてもなんかおかしいよ!!」
「いや分かんないんかい」


 いや分かんないんかい。何がおかしいのか分かんないんかい。じゃあやっぱり何もおかしくないんじゃ――


「……とにかく、これ以上陶夜くんを揶揄からかうなら帰ってもらうよ……光里ひかり


 すると、呆れたように告げる風奈さん。一方、告げられた側――光里さんは、何のことかといった様子できょとんと首を傾げ微笑む。まあ、揶揄からかっていた様子もなかったしね。むしろ、どうして風奈さんはそう思ったのだろう?

 ともあれ、今日は風奈さんの妹さんたる光里さんも一緒で。放課後、帰り道にボーリングに行こうという話になり施設に向かっていると、なんと偶然にも光里さんと遭遇。そして、どこに行くのかという彼女の問いにボーリングと答え、それなら是非私もという流れでこうして三人でこちらに来たわけでして。うん、なんか新鮮で楽しい。楽しいの、だけど――


「……あの、ところで光里さん。そのご格好は、いったい……」

 今更ながら、逡巡しつつ問いかけてみる。いや、人様の格好にどうこう言うつもりはないけど……でも、流石に何も言わずにはいられなくて。俗世も俗世たるこの場所に、さながら天照あまてらす様のような格好の子がいたら。


「……へっ? ひょっとしてご存じないのですか陶夜さん? これは神御衣かんみそと呼ばれる、文字通り神様の纏う衣装で――」
「……いえ、そういうことではなくてですね」


 すると、またまたきょとんと首を傾げ尋ねる光里さん。うん、大変可愛らしいのだけど……だけども、なんと言うか……ただ、すっごく目立つというか……さっきから、不思議そうな視線がちらほら届いているというか……あと、神御衣っていうんだね、それ。勉強になりました。

 ……まあ、そうは言っても――

「……ですが、すごくお似合いです光里さん。今日に限った話ではありませんが、とてもお綺麗です」
「……へっ? あっ、その……ありがとう、ございます」

 そう伝えると、さっと顔を逸らし答える光里さん。僕自身、目立つのは相当に苦手だけど……でも、それで他の人の服装にどうこう言うのも違うよね。本当に駄目な場所もあるけど、少なくともここでは何を着ても良いわけだし。……しかし、それにしても本当に良く似合――


「……ねえ陶夜くん、今から私も巫女に着替――」
「すみませんそれは控えてください」
「ひどくない!?」


 その後、僕の返答に差別だなんだと抗議を続ける風奈さん。いや、何を着ても良いと言った手前どうかとも思うのですが……その、奇抜な方はせめて一箇所につきお一人までにしていただけると。




 



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

背徳のミラールージュ(母と子 それぞれが年の差恋愛にのめり込んでいく鏡写し)

MisakiNonagase
恋愛
24歳の市役所職員・中村洋平には、自慢の恋人がいた。2歳年上の小学校教師、夏海。誰もが羨む「正解」の幸せの中にいたはずだった。 しかし、50歳になる母・美鈴が21歳の青年・翔吾と恋に落ちたとき、歯車は狂い出す。 ​母の恋路を「不潔だ」と蔑んでいた洋平だったが、気づけば自分もまた、抗えない引力に引き寄せられていた。  その相手は、母の恋人の母親であり、二回りも年上の柳田悦子。 ​純愛か、背徳か。4年付き合った恋人を捨ててまで、なぜ僕は「彼女」を求めてしまうのか。 交差する二組の親子。歪な四角関係の果てに、彼らが見つける愛の形とは――。

処理中です...