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何でも叶いますよ?
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「……はぁ、まあ貴方らしいですけど……別に、遠慮せずいつでも来てくれていいのですよ? 私もいるんですし」
「……はは、ありがとうございます光里さん。ですが、やはり少し躊躇ってしまって」
それから、ほどなくして。
例の縁側にて、暖かな緑茶を嗜みつつそんな会話を交わす僕ら。まあ、実際のところ断られるとはほぼ思ってなかったけど……それでも、こうして暖かく迎えてもらえることに改めて……うん、ありがとうございます光里さん。
「……ところで、光里さん。少し前からから思っていたのですが……お二人って、どうやって依月家から出てるんですか?」
「……へっ? それはもちろんあの神聖な鳥居からですよ? ふふっ、陶夜さんったら可笑しな人ですね」
「……へっ? いえいえそんな光里さんほどではありませんよ! ともあれ、僕が聞きたかったのは外に人がいる時間はどう――」
「うん、何も褒めちゃいませんからねそれ?」
その後、雑談もそこそこにそんな問いを掛けてみる。いや、これも雑談なんだろうけどそれはともあれ……あれ、ひょっとしてご不満? 僕としては最大級に褒めたつもりなんだけども。
「……ですが、なるほどそういうことでしたか。陶夜さん同様、姉さんもその状況では出られません。ご存知の通り、姉さんは依月家からはあの辺りにしか出られませんから。なので、登校時などほぼ確実に人がいるような時間は、私が姉さんと共に山中など人のいない辺りにワープするようにしています」
「……なるほど、大変ですね…………あれっ? でも、風奈さんは出られなくて光里さんはどこでも出られるんですか?」
「はい、もちろんです。なにせ、私は神様――たかだか巫女の姉さんとは、格が違いますから」
「……はぁ、そうなのですね。でも、流石にその言い方はどうかと」
そう、ビシッと胸を張り告げる光里さん。まあ、神様なのかどうかはさて措き……あの、そんなこと言ったら怒られますよ? 風奈さんにも、全国の巫女さんにも。
「…………ん?」
「ん? どうかなさいましたか陶夜さん」
「……あっ、いえ……ただ、それならあの日も、光里さんが僕を人のいないところにワープさせることも出来たのかな、と」
ふと、そう口にする。あの日、とはもちろん依月家から出られず泊めていただくことになった日のこと。……いや、もちろん不服などなく感謝しかないのだけど……でも、ただ少し疑問に思っただけで――
「――ええ、もちろん出来ます。出来ますけど……まあ、折角なので?」
すると、悪戯っぽく微笑み告げる風奈さん。……うん、なんか納得。何とも光里さんっぽいし。だから、そこは納得なんだけど……だったら、彼女はどうして何も言わなかったのだろう?
その後も、ほのぼのと他愛もない会話に花を咲かせる僕ら。気付けば、もう空には黒のカーテンが掛かっていて。……しまった、あまりに楽しくて時間が――
「……あの、僕はそろそろ――」
「……へっ、どうしてですか?」
そろそろお暇を――そう伝えようとするも、きょとんとした表情で尋ねる光里さん。……いや、流石に時間も時間だしこれ以上はご迷惑かなと――
「――ところで、陶夜さん。突然ですが、そろそろ何か思い付きましたか?」
「…………へっ?」
そう、不意に尋ねる光里さん。……えっと、思い付くとはいったい――
「……だから、例のお願いのことですよ。以前、申し上げたでしょう?」
「……ああ、そう言えば」
すると、少し呆れたように尋ねる光里さん。……ああ、そう言えばあったね、そんな話。ほんとにすっかり忘れてた。
でも、以前も言ったけどお願いなんてない。それに、仮にあったとしても願望を叶えるためには確か発動条件が……いや、そもそもそれ以前に――
「……どうやら、まだ信じていないようですね。正真正銘、私は神様だというのに」
「……あ、いや……」
すると、僕の様子から何か察したようで不服そうに告げる光里さん。そして、更に距離を詰め僕の耳元へと口を……あれ、なんで? 一方、僕の困惑を余所に光里さんは続けて言葉を紡ぐ。
「ほんとに、何でも叶いますよ? そう、例えば――」
「――何をやっとんじゃお前らはあぁ!!!!」
「…………へ?」
すると、不意に前方から響く鋭い声。だけど、驚いたのは突然の叫び以上に、声そのものに対してで。……いや、だって――
「……あの、どうしてここにいるのでしょう……風奈さん」
そう、戸惑いつつ尋ねる。……えっと、どうして彼女がここに――
「どうして? いや、ここ私の家だよ? 知ってると思うけど」
「……いや、まあそれはそうなのですが……あの、まだ旅行中でしたよね?」
すると、僕の問いにありありと不満を湛え告げる風奈さん。……いや、それはそうなのですが……あの、確かまだ旅行中では? それとも、僕が日程を勘違いして――
「……うーん、何と言うか……うん、なんか退屈だったし帰ってきちゃった」
「帰ってきちゃった!?」
すると、何とも悪戯っぽい笑顔でそんなことを言う風奈さん。……いや、帰ってきちゃったって。折角の、皆で作る思い出の……いや、でも仕方ないか。退屈だったのなら仕方ない。正直、僕もあんまり楽しめる気しないし、修学旅行。
「……はは、ありがとうございます光里さん。ですが、やはり少し躊躇ってしまって」
それから、ほどなくして。
例の縁側にて、暖かな緑茶を嗜みつつそんな会話を交わす僕ら。まあ、実際のところ断られるとはほぼ思ってなかったけど……それでも、こうして暖かく迎えてもらえることに改めて……うん、ありがとうございます光里さん。
「……ところで、光里さん。少し前からから思っていたのですが……お二人って、どうやって依月家から出てるんですか?」
「……へっ? それはもちろんあの神聖な鳥居からですよ? ふふっ、陶夜さんったら可笑しな人ですね」
「……へっ? いえいえそんな光里さんほどではありませんよ! ともあれ、僕が聞きたかったのは外に人がいる時間はどう――」
「うん、何も褒めちゃいませんからねそれ?」
その後、雑談もそこそこにそんな問いを掛けてみる。いや、これも雑談なんだろうけどそれはともあれ……あれ、ひょっとしてご不満? 僕としては最大級に褒めたつもりなんだけども。
「……ですが、なるほどそういうことでしたか。陶夜さん同様、姉さんもその状況では出られません。ご存知の通り、姉さんは依月家からはあの辺りにしか出られませんから。なので、登校時などほぼ確実に人がいるような時間は、私が姉さんと共に山中など人のいない辺りにワープするようにしています」
「……なるほど、大変ですね…………あれっ? でも、風奈さんは出られなくて光里さんはどこでも出られるんですか?」
「はい、もちろんです。なにせ、私は神様――たかだか巫女の姉さんとは、格が違いますから」
「……はぁ、そうなのですね。でも、流石にその言い方はどうかと」
そう、ビシッと胸を張り告げる光里さん。まあ、神様なのかどうかはさて措き……あの、そんなこと言ったら怒られますよ? 風奈さんにも、全国の巫女さんにも。
「…………ん?」
「ん? どうかなさいましたか陶夜さん」
「……あっ、いえ……ただ、それならあの日も、光里さんが僕を人のいないところにワープさせることも出来たのかな、と」
ふと、そう口にする。あの日、とはもちろん依月家から出られず泊めていただくことになった日のこと。……いや、もちろん不服などなく感謝しかないのだけど……でも、ただ少し疑問に思っただけで――
「――ええ、もちろん出来ます。出来ますけど……まあ、折角なので?」
すると、悪戯っぽく微笑み告げる風奈さん。……うん、なんか納得。何とも光里さんっぽいし。だから、そこは納得なんだけど……だったら、彼女はどうして何も言わなかったのだろう?
その後も、ほのぼのと他愛もない会話に花を咲かせる僕ら。気付けば、もう空には黒のカーテンが掛かっていて。……しまった、あまりに楽しくて時間が――
「……あの、僕はそろそろ――」
「……へっ、どうしてですか?」
そろそろお暇を――そう伝えようとするも、きょとんとした表情で尋ねる光里さん。……いや、流石に時間も時間だしこれ以上はご迷惑かなと――
「――ところで、陶夜さん。突然ですが、そろそろ何か思い付きましたか?」
「…………へっ?」
そう、不意に尋ねる光里さん。……えっと、思い付くとはいったい――
「……だから、例のお願いのことですよ。以前、申し上げたでしょう?」
「……ああ、そう言えば」
すると、少し呆れたように尋ねる光里さん。……ああ、そう言えばあったね、そんな話。ほんとにすっかり忘れてた。
でも、以前も言ったけどお願いなんてない。それに、仮にあったとしても願望を叶えるためには確か発動条件が……いや、そもそもそれ以前に――
「……どうやら、まだ信じていないようですね。正真正銘、私は神様だというのに」
「……あ、いや……」
すると、僕の様子から何か察したようで不服そうに告げる光里さん。そして、更に距離を詰め僕の耳元へと口を……あれ、なんで? 一方、僕の困惑を余所に光里さんは続けて言葉を紡ぐ。
「ほんとに、何でも叶いますよ? そう、例えば――」
「――何をやっとんじゃお前らはあぁ!!!!」
「…………へ?」
すると、不意に前方から響く鋭い声。だけど、驚いたのは突然の叫び以上に、声そのものに対してで。……いや、だって――
「……あの、どうしてここにいるのでしょう……風奈さん」
そう、戸惑いつつ尋ねる。……えっと、どうして彼女がここに――
「どうして? いや、ここ私の家だよ? 知ってると思うけど」
「……いや、まあそれはそうなのですが……あの、まだ旅行中でしたよね?」
すると、僕の問いにありありと不満を湛え告げる風奈さん。……いや、それはそうなのですが……あの、確かまだ旅行中では? それとも、僕が日程を勘違いして――
「……うーん、何と言うか……うん、なんか退屈だったし帰ってきちゃった」
「帰ってきちゃった!?」
すると、何とも悪戯っぽい笑顔でそんなことを言う風奈さん。……いや、帰ってきちゃったって。折角の、皆で作る思い出の……いや、でも仕方ないか。退屈だったのなら仕方ない。正直、僕もあんまり楽しめる気しないし、修学旅行。
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