玲瓏たる月の下、命懸けの恋を貴方と

暦海

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宣言

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「……ど、どうかな?」
「……はい、とても気持ち良いです」
「……ほんとに?」
「……はい、もちろんです」


 それから、十数分経て。
 そう、問い掛けてみる。だけど、やはり声音や表情からあまり手応えも……と言うか、さっきもしたよね、このやり取り。それも、一字一句同じような。

 ともあれ、今しているのは『紅葉もみじ合わせ』と呼ばれる技。端的に言うと、両方の乳房で陰茎を挟み刺激するという、多くのお客さまから人気のある技の一つで。

 だけど、幾度こすってみてもやはりさほど喜んでいる様子はない。これまた、私だけが快感を覚えている状態で。一応、固くはなっているので身体的には反応しているようだけど……でも、だからといって喜んでくれているとは言えない。生理的な反応が、即ち心の快楽に必ずしも繋がるとは限らないから。


 その後も、あれこれ色々してみるもかんばしい反応は得られず。そして、時間ももう残り少なく……やっぱり、駄目なのかな? やっぱり、私なんかじゃ――


「……申し訳ありません、鈴珠すずさん」
「……へっ?」
「……鈴珠さんは、何も悪くありません。先ほども申したように、貴女はとても魅力的で素敵な御方です。責任は、全て僕にあります。なので……どうか、そのような表情かおをなさらないでください」
「…………深影みかげさん」


 すると、ふと口にする深影さん。責任、とは彼の状態――恐らくは、満足からほど遠い彼の心の状態について話しているのだろう。喜びを感じられていないのは全て深影じぶん責任せいであり、鈴珠わたしは何も悪くない――そう、伝えてくれているのだろう。……ほんと、優しいなぁこの人は。

 ……でも、よくよく考えるとそれは事実なのかもしれない。いや、もちろん彼に責任があるとかそういう話ではないけど……それでも、彼が喜びを感じられていない原因が、他ならぬ彼自身にあるというのは一定の事実を孕んでいるように思えて。
 と言うのも――まだまだ未熟ながら、私だってこれまで多くのお客さまに喜んでもらっていた……はず。責任逃れをするつもりは毛頭ないけれど……それでも、他のお客さまと違い彼だけが喜んでいないとなると、それは私でなく彼側に何かしらの主たる原因がある可能性も否めなくて。……だけど、


「……ありがと、深影さん。そして、ごめんね。喜ばせてあげられなくて」
「………いえ、貴女が謝ることでは――」
「――でも、このままで終わるつもりも全くない。いつか必ず、心の底から喜ばせてみせるから……だから、覚悟しててね? 深影さん」
「……鈴珠さん」


 そう、ビシッと指を差し……うん、今更ながら失礼だよね。でも、気付いたらつい。

 でも、この宣言は本心で。彼の言うように、本当に全てが彼の責任で、私は何も悪くなかったとしても関係ない。だって、これでも遊女プロ――大切なお客さまに喜んでもらえないなどと、そんな情けない状況に甘んじるつもりなんて毛頭ない。今日はもう無理かもしれない……と言うか無理だろうけど、それでもいつか絶対に……まあ、今後も来てくれることが前提なんだけども。






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