9 / 32
宣言
しおりを挟む
「……ど、どうかな?」
「……はい、とても気持ち良いです」
「……ほんとに?」
「……はい、もちろんです」
それから、十数分経て。
そう、問い掛けてみる。だけど、やはり声音や表情からあまり手応えも……と言うか、さっきもしたよね、このやり取り。それも、一字一句同じような。
ともあれ、今しているのは『紅葉合わせ』と呼ばれる技。端的に言うと、両方の乳房で陰茎を挟み刺激するという、多くのお客さまから人気のある技の一つで。
だけど、幾度こすってみてもやはりさほど喜んでいる様子はない。これまた、私だけが快感を覚えている状態で。一応、固くはなっているので身体的には反応しているようだけど……でも、だからといって喜んでくれているとは言えない。生理的な反応が、即ち心の快楽に必ずしも繋がるとは限らないから。
その後も、あれこれ色々してみるも芳しい反応は得られず。そして、時間ももう残り少なく……やっぱり、駄目なのかな? やっぱり、私なんかじゃ――
「……申し訳ありません、鈴珠さん」
「……へっ?」
「……鈴珠さんは、何も悪くありません。先ほども申したように、貴女はとても魅力的で素敵な御方です。責任は、全て僕にあります。なので……どうか、そのような表情をなさらないでください」
「…………深影さん」
すると、ふと口にする深影さん。責任、とは彼の状態――恐らくは、満足からほど遠い彼の心の状態について話しているのだろう。喜びを感じられていないのは全て深影の責任であり、鈴珠は何も悪くない――そう、伝えてくれているのだろう。……ほんと、優しいなぁこの人は。
……でも、よくよく考えるとそれは事実なのかもしれない。いや、もちろん彼に責任があるとかそういう話ではないけど……それでも、彼が喜びを感じられていない原因が、他ならぬ彼自身にあるというのは一定の事実を孕んでいるように思えて。
と言うのも――まだまだ未熟ながら、私だってこれまで多くのお客さまに喜んでもらっていた……はず。責任逃れをするつもりは毛頭ないけれど……それでも、他のお客さまと違い彼だけが喜んでいないとなると、それは私でなく彼側に何かしらの主たる原因がある可能性も否めなくて。……だけど、
「……ありがと、深影さん。そして、ごめんね。喜ばせてあげられなくて」
「………いえ、貴女が謝ることでは――」
「――でも、このままで終わるつもりも全くない。いつか必ず、心の底から喜ばせてみせるから……だから、覚悟しててね? 深影さん」
「……鈴珠さん」
そう、ビシッと指を差し……うん、今更ながら失礼だよね。でも、気付いたらつい。
でも、この宣言は本心で。彼の言うように、本当に全てが彼の責任で、私は何も悪くなかったとしても関係ない。だって、これでも遊女――大切なお客さまに喜んでもらえないなどと、そんな情けない状況に甘んじるつもりなんて毛頭ない。今日はもう無理かもしれない……と言うか無理だろうけど、それでもいつか絶対に……まあ、今後も来てくれることが前提なんだけども。
「……はい、とても気持ち良いです」
「……ほんとに?」
「……はい、もちろんです」
それから、十数分経て。
そう、問い掛けてみる。だけど、やはり声音や表情からあまり手応えも……と言うか、さっきもしたよね、このやり取り。それも、一字一句同じような。
ともあれ、今しているのは『紅葉合わせ』と呼ばれる技。端的に言うと、両方の乳房で陰茎を挟み刺激するという、多くのお客さまから人気のある技の一つで。
だけど、幾度こすってみてもやはりさほど喜んでいる様子はない。これまた、私だけが快感を覚えている状態で。一応、固くはなっているので身体的には反応しているようだけど……でも、だからといって喜んでくれているとは言えない。生理的な反応が、即ち心の快楽に必ずしも繋がるとは限らないから。
その後も、あれこれ色々してみるも芳しい反応は得られず。そして、時間ももう残り少なく……やっぱり、駄目なのかな? やっぱり、私なんかじゃ――
「……申し訳ありません、鈴珠さん」
「……へっ?」
「……鈴珠さんは、何も悪くありません。先ほども申したように、貴女はとても魅力的で素敵な御方です。責任は、全て僕にあります。なので……どうか、そのような表情をなさらないでください」
「…………深影さん」
すると、ふと口にする深影さん。責任、とは彼の状態――恐らくは、満足からほど遠い彼の心の状態について話しているのだろう。喜びを感じられていないのは全て深影の責任であり、鈴珠は何も悪くない――そう、伝えてくれているのだろう。……ほんと、優しいなぁこの人は。
……でも、よくよく考えるとそれは事実なのかもしれない。いや、もちろん彼に責任があるとかそういう話ではないけど……それでも、彼が喜びを感じられていない原因が、他ならぬ彼自身にあるというのは一定の事実を孕んでいるように思えて。
と言うのも――まだまだ未熟ながら、私だってこれまで多くのお客さまに喜んでもらっていた……はず。責任逃れをするつもりは毛頭ないけれど……それでも、他のお客さまと違い彼だけが喜んでいないとなると、それは私でなく彼側に何かしらの主たる原因がある可能性も否めなくて。……だけど、
「……ありがと、深影さん。そして、ごめんね。喜ばせてあげられなくて」
「………いえ、貴女が謝ることでは――」
「――でも、このままで終わるつもりも全くない。いつか必ず、心の底から喜ばせてみせるから……だから、覚悟しててね? 深影さん」
「……鈴珠さん」
そう、ビシッと指を差し……うん、今更ながら失礼だよね。でも、気付いたらつい。
でも、この宣言は本心で。彼の言うように、本当に全てが彼の責任で、私は何も悪くなかったとしても関係ない。だって、これでも遊女――大切なお客さまに喜んでもらえないなどと、そんな情けない状況に甘んじるつもりなんて毛頭ない。今日はもう無理かもしれない……と言うか無理だろうけど、それでもいつか絶対に……まあ、今後も来てくれることが前提なんだけども。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―
MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」
「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」
失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。
46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。
還暦妻と若い彼 継承される情熱
MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。
しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。
母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。
同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる