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嫌がらせ
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「――あら、ごめんなさい? でも、そんなところにぼおっと突っ立ってる貴女も悪いんじゃないかしら?」
「……申し訳ありません、千代さん」
それから、二週間ほど経て。
宴会場へと向かう廊下にて、尻餅を着く私に何とも愉しそうな笑顔でそんなことを宣う華麗な女性。改めてだけど、20代半ばの先輩遊女たる千代さんで。
さて、何が起こったのかと言うと――前方から歩いてきた千代さんと偶然ぶつかってしまい、こうして両手を着いて倒れてしまっているわけで……いや、突っ立ってなかったけどね。お互いそのまま真っ直ぐ進んでたらまずぶつからないよう、普通に歩いていたはずなんだけどね。
ちなみに、このようなことは今日だけでなく――更に言えば、彼女に限ったことでもなく。……まあ、理由なんて分かってるけども。
「……ほんとにごめんね、鈴珠。姉のような立場でありながら、貴女を護ってあげられなくて」
「……へっ? あっ、いえお姉さまが謝ることなんて何もありません! むしろ、この程度で済んでいるのはお姉さまのお陰で……その、今更ながらありがとうございます」
「……鈴珠」
その日の夜のこと。
上品な華やかさが彩るお部屋にて、お言葉の通り申し訳なさそうに告げる詩多お姉さま。何に対してかというと――ここ二週間というもの、先ほどの千代さんとの件みたく幾度も嫌がらせを受けていることについてで。
だけど、当然のこと彼女が謝る必要なんてどこにもない。どころか、この程度で済んでいるのはお姉さまのお陰――花魁たるお姉さまの存在が、彼女の妹分たる私への危害を最低限に抑えてくれているのは疑う余地のないことで。……うん、本当にありがとうございます、お姉さま。
「……申し訳ありません、千代さん」
それから、二週間ほど経て。
宴会場へと向かう廊下にて、尻餅を着く私に何とも愉しそうな笑顔でそんなことを宣う華麗な女性。改めてだけど、20代半ばの先輩遊女たる千代さんで。
さて、何が起こったのかと言うと――前方から歩いてきた千代さんと偶然ぶつかってしまい、こうして両手を着いて倒れてしまっているわけで……いや、突っ立ってなかったけどね。お互いそのまま真っ直ぐ進んでたらまずぶつからないよう、普通に歩いていたはずなんだけどね。
ちなみに、このようなことは今日だけでなく――更に言えば、彼女に限ったことでもなく。……まあ、理由なんて分かってるけども。
「……ほんとにごめんね、鈴珠。姉のような立場でありながら、貴女を護ってあげられなくて」
「……へっ? あっ、いえお姉さまが謝ることなんて何もありません! むしろ、この程度で済んでいるのはお姉さまのお陰で……その、今更ながらありがとうございます」
「……鈴珠」
その日の夜のこと。
上品な華やかさが彩るお部屋にて、お言葉の通り申し訳なさそうに告げる詩多お姉さま。何に対してかというと――ここ二週間というもの、先ほどの千代さんとの件みたく幾度も嫌がらせを受けていることについてで。
だけど、当然のこと彼女が謝る必要なんてどこにもない。どころか、この程度で済んでいるのはお姉さまのお陰――花魁たるお姉さまの存在が、彼女の妹分たる私への危害を最低限に抑えてくれているのは疑う余地のないことで。……うん、本当にありがとうございます、お姉さま。
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