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平和な解決法
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「……それにしても、困ったものね。もちろん、あのお客さまに非があるわけじゃないし、悪く言うつもりは全くないんだけど……」
「……お姉さま」
それからややあって、お言葉の通り悩ましげな表表でそう口にするお姉さま。あのお客さま、とはあの類稀なる美男子、深影さんのことで。
さて、どういうことかと言うと――あの日以降、約束通り彼は何度も妓楼に足を運んでくれた。そして、目的はもちろん――
……ただ、これが今の状況の原因だったり。そろそろしつこいかもしれないけど、深影さんはハッと息を呑むほどの――それこそ、この世のものとは思えないほどの美男子であるからして、そんな彼の相手たる私への妬み嫉みが凄いこと凄いこと。……まあ、流石に分かってたけどね、こうなることくらい。
とは言え、今お姉さまも言った通り何ら彼が悪いわけでもない。そして、このような状況は誰にも起こりうること。そう、今回はたまたま私だっただけで――
「……ねえ、鈴珠。なんだったら、代わろうか?」
「…………へっ?」
すると、ふと鼓膜を揺らすお姉さまの問い。……えっと、代わる? いったい、何のはな――
「……ほんとは、私もこんなことはしたくないんだけどね。誰に対してもだけど、特に鈴珠からお客さまを奪うなんてことは。
でも、情けない話だけど、鈴珠のために今出来るとしたらこれくらいかなって。もちろん本来は変更なんてご法度だし、これでも花魁という立場だから本来なら代金は高くなるけど――今回は完全に遊女側の事情での変更だし、お客さまには決して不利益のないよう私が取り計らうから安心して」
「……お姉さま」
そんな困惑の最中、柔らかな声音で滔々と説明してくださるお姉さま。そして、流石にその意図は理解できないはずもなく。
つまりは、私をこの状況から救うため深影さんの相手を自分がする、と仰ってくれているわけで。確かに、ここ吉原の頂点たる花魁の詩多お姉さまなら、例え妬み嫉みを受けたとしても私のように嫌がらせを受けることはまずないと断言できる。なので、これは最も平和な解決法――お姉さまのご厚意を無下にしないと意味でも、断る理由なんてきっとない。……ないの、だけど――
「…………そんなの、嫌……」
「……へっ?」
「…………あっ! いえ、その、申し訳ありませんお姉さま! その今のは……」
我知らず、ポツリと声が。その後、ややあってしどろもどろに弁解を……しまった、お姉さまに対しなんて不躾な――
「……ふふっ」
「……へっ?」
「……ふふっ、うん、そうだよね。やっぱり奪っちゃ駄目だよね、鈴珠の大切なお客さまを」
「……あ、その……はい」
すると、ふと可笑しそうに声を洩らすお姉さま。そして、どこか揶揄うような……そして、何とも嬉しそうな微笑でそう口に……うん、どうやら気付かれてたみたいで……むぅ、いじわる。
「……お姉さま」
それからややあって、お言葉の通り悩ましげな表表でそう口にするお姉さま。あのお客さま、とはあの類稀なる美男子、深影さんのことで。
さて、どういうことかと言うと――あの日以降、約束通り彼は何度も妓楼に足を運んでくれた。そして、目的はもちろん――
……ただ、これが今の状況の原因だったり。そろそろしつこいかもしれないけど、深影さんはハッと息を呑むほどの――それこそ、この世のものとは思えないほどの美男子であるからして、そんな彼の相手たる私への妬み嫉みが凄いこと凄いこと。……まあ、流石に分かってたけどね、こうなることくらい。
とは言え、今お姉さまも言った通り何ら彼が悪いわけでもない。そして、このような状況は誰にも起こりうること。そう、今回はたまたま私だっただけで――
「……ねえ、鈴珠。なんだったら、代わろうか?」
「…………へっ?」
すると、ふと鼓膜を揺らすお姉さまの問い。……えっと、代わる? いったい、何のはな――
「……ほんとは、私もこんなことはしたくないんだけどね。誰に対してもだけど、特に鈴珠からお客さまを奪うなんてことは。
でも、情けない話だけど、鈴珠のために今出来るとしたらこれくらいかなって。もちろん本来は変更なんてご法度だし、これでも花魁という立場だから本来なら代金は高くなるけど――今回は完全に遊女側の事情での変更だし、お客さまには決して不利益のないよう私が取り計らうから安心して」
「……お姉さま」
そんな困惑の最中、柔らかな声音で滔々と説明してくださるお姉さま。そして、流石にその意図は理解できないはずもなく。
つまりは、私をこの状況から救うため深影さんの相手を自分がする、と仰ってくれているわけで。確かに、ここ吉原の頂点たる花魁の詩多お姉さまなら、例え妬み嫉みを受けたとしても私のように嫌がらせを受けることはまずないと断言できる。なので、これは最も平和な解決法――お姉さまのご厚意を無下にしないと意味でも、断る理由なんてきっとない。……ないの、だけど――
「…………そんなの、嫌……」
「……へっ?」
「…………あっ! いえ、その、申し訳ありませんお姉さま! その今のは……」
我知らず、ポツリと声が。その後、ややあってしどろもどろに弁解を……しまった、お姉さまに対しなんて不躾な――
「……ふふっ」
「……へっ?」
「……ふふっ、うん、そうだよね。やっぱり奪っちゃ駄目だよね、鈴珠の大切なお客さまを」
「……あ、その……はい」
すると、ふと可笑しそうに声を洩らすお姉さま。そして、どこか揶揄うような……そして、何とも嬉しそうな微笑でそう口に……うん、どうやら気付かれてたみたいで……むぅ、いじわる。
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