玲瓏たる月の下、命懸けの恋を貴方と

暦海

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衝撃

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「……さて、どうしようかな」


 そう、ポツリと呟く。あの後、美味しいお茶を堪能しつつ義郎よしろうさんや菊乃きくのさんと少しお話しして、それから初めましてのお蕎麦屋さんに行って、それから……さて、どうしよ。そもそも、休みでさえも遊郭ここからは出られないので目新しい景色があるわけでもなく……うん、もう帰ろうかな?

「…………あ」

 ふと、ポツリと声が。そんな私の視界には、何ともご立派な瓦の邸宅……なんだけど、声が洩れたのはそれが理由ではなく。

 あれは、もう随分と前――遊郭ここに連れて来られて間もない頃、この場所の一角に小さな……それでも、幼心にもぐっと心を惹く茅葺き屋根の素朴な庵があって。だけど、次に来たときは時には既に……うん、ほんとショックだった。こう、途方もない喪失感があったというか。

 ……まあ、ないものは仕方がない。未だ淋しい気持ちはあるけれど、私にどうにか出来ることでもないし。ともあれ、後はどうし――

「…………へっ?」

 刹那、思考が止まる。と言うのも、ふと視線を変えた私の視界には映ったのは、この世のものとは思えないあの端麗な男性で――


「……深影みかげ、さん……」


 しばし、茫然と立ち尽くす。……いや、別におかしなことじゃない。広い遊郭くるわの中とはいえ、決してお客さまと出会さないほどの広さではないし、今までだって何度かある。だから、こうして彼を目にすること自体はさほど驚きでもないし……それに、正直のところ望んでもない。もしかしたら、どこかで会えるかな……なんて。
 
 だけど……今、視界に映るは私が望んでいた光景ものとはとても言い難く。……いや、だって、だって――


「…………なに、あの女性ひと……」





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