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お休み
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「…………さて、どうしようかな」
穏やかな風が頰を撫でる、ある秋の日のこと。
そう、ポツリと呟く。そんな私がいるのは、瓦や茅葺きの家屋がゆったりと並ぶ風情溢れる街の中。こうしてのんびりこういう景色を見ながら歩くのも、もう数ヶ月ぶりのことで。と言うのも……まあ、文字通り毎日が仕事だから。
そして、今日は久方振りのお休み――年に二日ある公休の内の一日で。……いや、少ないよ休日。まあ、公休以外にも申し出が認められれば休みが取れなくもないけど……いや、いずれにせよ極めて少ないことには変わりなく……うん、せめて今日だけでものんびり過ごそ。
さて、話は戻るけど……さて、どうしようかな。このまま宛もなく歩いていてもいいんだけど、やっぱり行きたい場所がないわけでもなく。……なので――
「……うん、やっぱりあそこかな」
「――おお、久しぶりだな鈴珠ちゃん! 今日はお休みかい?」
「はい、ご無沙汰です義郎さん。いつものでお願いできますか?」
「おう、ちょっと待ってな!」
それから、数十分経て。
和の風情漂う素朴なお店『明葉』にて、快活な笑顔で挨拶をしてくれる精悍な男性。その明るい笑顔やお人柄に、こちらまで明るくなる気がして。
さて、こちらは行きつけの水茶屋さん――温かなお茶を出してくれる簡素な休憩所で、彼は水茶屋の店主さんで。……いや、行きつけと言うほど来てない……と言うか、来れないけど。そもそも、年に二回しか休みないんだし。
「――どうぞ、鈴珠さん。お久しぶりね、来てくれて嬉しいわ」
「はい、ご無沙汰です。ありがとうございます、菊乃さん」
それから、数分経て。
そう、柔らかな微笑で温かなお茶を差し出してくれるのは、華やかな衣装を纏う若い女性。驚くほどに綺麗な女性で、数多のお客さまが見蕩れているであろうことが見なくても察せられる。そして、それもそのはず。と言うのも、彼女はこの辺りでもひときわ評判の綺麗な女性で、そもそも彼女に会いたいがために来店なさるお客さまも数多くいるみたいで……あっ、私は違うよ? もちろん菊乃さんは好きだけど、義郎さんも明葉のお茶も好きで……うん、誰に言い訳してんるだろ。
「……うん、美味しい」
ともあれ、数ヶ月ぶりのお茶をゆっくりと頂く。義郎さんの淹れてくれた、芳醇な香りが鼻腔をくすぐる温かなお茶を。……うん、やっぱり美味しい。妓楼とは雲泥の……いや、比較すること自体失礼極まりないか。
……ただ、それはそうと……今、何してるのかな。いつか、一緒に来れたり……なんて、まあ無理だけど。
穏やかな風が頰を撫でる、ある秋の日のこと。
そう、ポツリと呟く。そんな私がいるのは、瓦や茅葺きの家屋がゆったりと並ぶ風情溢れる街の中。こうしてのんびりこういう景色を見ながら歩くのも、もう数ヶ月ぶりのことで。と言うのも……まあ、文字通り毎日が仕事だから。
そして、今日は久方振りのお休み――年に二日ある公休の内の一日で。……いや、少ないよ休日。まあ、公休以外にも申し出が認められれば休みが取れなくもないけど……いや、いずれにせよ極めて少ないことには変わりなく……うん、せめて今日だけでものんびり過ごそ。
さて、話は戻るけど……さて、どうしようかな。このまま宛もなく歩いていてもいいんだけど、やっぱり行きたい場所がないわけでもなく。……なので――
「……うん、やっぱりあそこかな」
「――おお、久しぶりだな鈴珠ちゃん! 今日はお休みかい?」
「はい、ご無沙汰です義郎さん。いつものでお願いできますか?」
「おう、ちょっと待ってな!」
それから、数十分経て。
和の風情漂う素朴なお店『明葉』にて、快活な笑顔で挨拶をしてくれる精悍な男性。その明るい笑顔やお人柄に、こちらまで明るくなる気がして。
さて、こちらは行きつけの水茶屋さん――温かなお茶を出してくれる簡素な休憩所で、彼は水茶屋の店主さんで。……いや、行きつけと言うほど来てない……と言うか、来れないけど。そもそも、年に二回しか休みないんだし。
「――どうぞ、鈴珠さん。お久しぶりね、来てくれて嬉しいわ」
「はい、ご無沙汰です。ありがとうございます、菊乃さん」
それから、数分経て。
そう、柔らかな微笑で温かなお茶を差し出してくれるのは、華やかな衣装を纏う若い女性。驚くほどに綺麗な女性で、数多のお客さまが見蕩れているであろうことが見なくても察せられる。そして、それもそのはず。と言うのも、彼女はこの辺りでもひときわ評判の綺麗な女性で、そもそも彼女に会いたいがために来店なさるお客さまも数多くいるみたいで……あっ、私は違うよ? もちろん菊乃さんは好きだけど、義郎さんも明葉のお茶も好きで……うん、誰に言い訳してんるだろ。
「……うん、美味しい」
ともあれ、数ヶ月ぶりのお茶をゆっくりと頂く。義郎さんの淹れてくれた、芳醇な香りが鼻腔をくすぐる温かなお茶を。……うん、やっぱり美味しい。妓楼とは雲泥の……いや、比較すること自体失礼極まりないか。
……ただ、それはそうと……今、何してるのかな。いつか、一緒に来れたり……なんて、まあ無理だけど。
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