玲瓏たる月の下、命懸けの恋を貴方と

暦海

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きっかけ

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「……ところでさ、深影みかげさんってどうして大工さんになろうと思ったの?」
「……へっ? ……ああ、そうですね……」
「……あっ、ごめん疲れてるよね? その、無理に答えなくても――」
「いえ、お気になさらず鈴珠すずさん。ただ、少し呼吸を整えさせていただけたらと」


 それから、しばらくして。
 休憩中、ふとそう問い掛けてみる。すると、少し息を切らしつつ呟く深影さん。……ちょっと、いじめすぎたかな? いや、あまりに嬉しすぎてつい歯止めが利かなくなって……うん、反省。


 ともあれ、深く息を整える深影さんの返事を待つ。そして、少しの間があった後ゆっくりと口を開き言葉を紡ぐ。


「……そう、ですね……ご近所に、幼少から憧れの大工の方がいたんです。その方はとても優しく、何処の誰かも知れない僕に建築について数多のことをを丁寧に教えてくださいました。そして、いつかその方のように素敵な家を建てたくて、まだまだ未熟な身ながら現在いまも続けている次第です」
「……へぇ、そうなんだ。……うん、すっごく素敵だと思う」
「ありがとうございます、鈴珠さん。はい、あの方は本当に――」
「ああ、もちろんその人もだけど……今、私が言ったのは深影さんのこと。そうやって、明確な目標を持って頑張って……そして、今もずっと続けていて……そういうの、ほんとに素敵だと思う」
「…………鈴珠さん」

 柔らかな声音で鼓膜を揺らす深影さんの話に、沁み沁みと感嘆の念を覚える私。……うん、本当に素敵だと思う。そして……僅かながら、話す時にふと垣間見せる少年のようなに胸がドキッと――


(……でも、それだけではないんですけどね)
「……ん?」
「……いえ、何でも」

 すると、ふと何か口を口にする深影さん。だけど、その言葉はほとんど聞き取れ……えっと、なんて言ったのかな? ……うん、まあいっか。話したくなったら、また言ってくれるだろうし。




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