セフレはお友達に含まれませんか?

暦海

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第2章

お仕事開始です。

「……あの、三崎みさきくん。改めてだけど……その、本当にいいの?」
「……もちろん、不安ですよね。貴店のスタッフでもない僕が、差し出がましくも皆さんの仕事場に――」
「あっ、ううんそうじゃないの! ……そりゃ、その辺りの不安が全くないとは言わないけど……でも、こう言うと申し訳ないかもだけど、正直猫の手も借りたい状況だったから、出来ることだけでも手伝ってくれたら本当に助かるから。……ただ、単純に申し訳ないなぁって」
「……ああ、そういうことでしたか。ですが、ご心配には及びません、狭山さやまさん。微力ながら皆さんのお力になれたらと、僕が勝手に思っているだけですので」
「……そっか、ありがとね三崎くん」


 それから、10分ほど経て。
 キッチンの奥の方――お客さまから最も距離のある辺りで、なるべく控えめな声でそんなやり取りを交わす狭山さんと僕。出しゃばってはみたものの、貴店にて何の経験もない僕であるからしてお断りされても不思議でない……というか拒否それが当然だったとも思うけれど、なんと幸いにもご承諾の旨を頂けて。……まあ、昨今はそういう――働き手不足を補うため、その仕事の経験のない人でも出来そうなことをしてもらうべく単発で募集することも多々あるわけだしね。


 ……とは言え、そもそも名前も顔を知らない新参者であるからして、当然のこと誰もが歓迎してくださるわけもなく――


「……おい千夏ちなつ。まさかとは思うが本気で当てにしてんのか? そんなチビ。いくら状況が状況だからって、店のことを何も知らねえヤツなんかいたって普通に邪魔になるだけだろ」
「ちょっと隆也たかや、そんな言い方――」
「いえ、いいんです狭山さん。貴店のスタッフでもない僕ですから、邪魔だと思われるのは当然のことです」
「……三崎くん」

 狭山さんから手短な説明を受けている最中さなか、ふと届いたのは露骨に苛立ちを孕んだ声。そこには、声音に違わぬ鋭い……いや、もはや敵意すら感じる視線を僕へと向ける長身の若い男性。そして、そんな彼に強い口調で反論しようとしてくれた狭山さんを言葉を被せる形でとどめる僕。もちろん、彼女のお気持ちは大変ありがたいのだけど……それでも、ここで口論になりチームワークが乱れるような事態は何としても避けたいから。……ところで、それはそれとして――


「……ひょっとして、彼は桐里きりさと隆也さんでしょうか?」
「あれ、なんで知って……ああ、そういうことね」

 そう尋ねると、目を丸くしたもののほどなく納得の様子を見せる狭山さん。きっと、僕が白河しらかわさんと一緒に来ていたことから何かを察したのだろう。

 さて、もはや説明不要かもしれないけど――彼、桐里さんこそが白河さんに熱心にアプローチを掛けているという男性スタッフで。そして、白河さんと僕が一緒にいるところも見ていたのだろう、僕に対する彼の視線は単なる邪魔者に対する種のものとは明らかに違って。そんな彼に、僕は――


「――初めまして、桐里隆也さん。僕は三崎奏良そうらと申します。右も左も分からぬ身ではありますが、微力ながらお役に立てればと思っていますのでどうぞ宜しくお願いします」
「……っ!! ……ちっ、邪魔だけはすんなよ」
「……ありがとうございます、桐里さん」

 そう、深く頭を下げ告げる。すると、尚も苛立たし気ではあるものの、それでも仕事この場にいることを認めてくださる桐里さん。……うん、ありがとうございます。


 その後、一通りの説明を受け終え指定の――主に調理の補助を担当する位置へと着く僕。そして、深く呼吸を整えて……よし、頑張ろう!



 

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