福音よ来たれ

りりっと

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04-01 虚ろな*

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 その日彼女は、数年ぶりに思考をした。



 よく分からない男が転がり込んできた。管理番号はあの忌々しいEから始まる三桁。
 同類だ。エヴァンジルとかいう失敗作。すぐに死ぬ、出来損ないの兵士。


「そうだ、トコエ。爪が伸びすぎだよ?ヤスリを持ってきたから整えさせて」


 その男は、ルザはわたしを、トコエと呼ぶ。
 どこかで聞いたことのある名前だった。


「そう、できれば後ろからぎゅって、させて欲しいんだけど……」


 ベッドでゴロゴロするわたしを見下ろして、男はそう言う。
 爪なんて伸びてても何の問題もない。剥がれれば新しいものが生えてくる。そんなことを言う気にもなれず、彼に背を向けるように寝返りを打つ。

 マットレスの一部がわずかに傾く。息遣いが近くなって、彼がまたベッドに手をかけているのだと知る。


「トコエ」


 耳元で声が聞こえて、押し返すように手をその顔に伸ばす。押しのけようとされているのに、男は嬉しそうに笑うばかりだった。手に頬擦りをして、手のひらに何度もキスをされれば、さすがに手を引っ込めた。


「ダメだよ。重要度の低い再生はエネルギー消費の無駄だ。爪一枚作るのにも、燃費によってはけっこうかかるんだから」


 ルザはなぜか、わたしを生かそうとする。
 どうせ未来など変えられないのに。どうせみんな死ぬのに。


「ほら、起きて」


 脇に腕が差し込まれ、そのまま引っ張られる。後ろから抱え込まれると、丁寧にルザは爪を削り、磨いていく。


「あの頃はあんなに大きく思えた君の手が、今じゃこんなに小さく思えるなんてね」


 ちゅっと音を立てて耳元にキスが降ってくる。髪に頰を寄せて、耳に熱い吐息が何度もかかる。


 鬱陶しい。

 この温もりを、突き放したくて堪らなかった。何かを思い出してしまいそうになるから。
 けれど居る分には便利だった。飯が不味いからいらないと言えばもっと旨いものを作って食べさせてくるし、着替えも必要なものも何でも持ってくる。掃除も勝手にするし、洗濯だってする。


「手が終わったら足もしようね……そしたら今夜も一緒に良くなろう」


 するりとその手が下腹部を撫でる。いつしかここまで触られても、抵抗する気になれなかった。

 ルザの奉仕は、蕩けるほど気持ちが良かったのだ。


「ねぇ、トコエ。君が許してくれるなら、僕はいつだって君と一つになれるよ」
「…………」
「手や舌だけじゃ限界がある。どんなにじっくりやっても、一割も回復しないなんて効率が悪いよ」
「…………」
「まぁ僕は何時間だってしても構わないけど。でも出撃のタイミングだって分からないし、いつエネルギーが切れるとも分からない。いっつも二割から三割くらいの残量で戦いに出るのはとってもリスキーだ」


 返事をせずに黙っていると、かぷりと耳を甘噛みされる。ぐいっと尻に当てているものを主張して、後ろからゆっくりと覆いかぶさってくる。


「トコエの燃費はけっこう悪いんだから、僕がついてないと……ね?奥まで一つになって良いところを刺激しあって、きっとすごく気持ちいいよ」


 するりと下着が脱がされる感覚がする。やすりを手放したかと思えば、いやらしい手つきで胸を触ってくる。服をずらして露わになったそこを優しく鷲掴みにされる。先端を指先で柔く扱き、ぴんと張り詰めたそれを愛おしそうに撫でる。


 下着を脱がされ露わになった下腹部をもう片方の手が撫でる。ゆっくりと下に這い降りて、割れ目をそっと愛でていく。くりくりと陰核を扱けば、流石に身体の奥が疼き始める。


「トコエ……、トコエ……」
「っ、ん……」
「ああ、濡れてきちゃったね……。トコエ、ここをこうされるの、大好きだからね」


 薄い肩口を舐められて甘く噛み付かれる。くちゅ、と指一本濡れそぼった膣内に入り込んで、最近覚えさせられた良い場所を刺激し始める。


「中もきもちいね、トコエ。今日は、もっと奥で感じてみようか……?」
「ぁ、っ」
「またトコエのいいところ、見つけてあげるよ。そしたらきっと……指だけじゃ満足できなくなるよ」


 ぐっと奥まで侵入した指が弄るように内壁を押し上げる。反応をしっかりと見ながら一際感じる場所を探しているようだ。


「……、あっ、ん」
「は、ここかな……」


 ぐちぐちと何度もそこを嬲られれば、腰が重くなって鈍い快感が走る。存外すぐに高く昇ってしまいそうになって、やめさせるようにその手を掴んだ。


「抵抗するってことはここなんだね。うん、じゃあ、もっと良くなろう」


 胸を弄っていた手が下りてきて、きゅうっと陰核を摘む。


「んっあぁっ」
「すぐイっちゃいそう?両方でイったら、今度は中だけでイってみようか」
「だめ、どうじはだめっ、やっ」
「可愛いっ、トコエかわいいっ、もっと僕に触られておかしくなって」
「やだっ、あぁ、っあ、うぅ、きちゃう、んんっ、あぁあっ……!」


 ぷしっとそこが潮を吹いて、ルザはくつくつと喉で笑う。きゅうきゅうと締め付ける中で指の感触がはっきりと伝わってくる。
 奥が、疼く。座っているのすら煩わしくて、ころりとベッドに横向きに転がる。
 離れた指が糸を引いて、それを彼はすぐに口にした。艶かしく愛液を舐めとって、じゅぶじゅぶと口で咥える。


「次は二本で」


 身体を仰向けにされ、開かれた足の間の穴へと細くしなやかな指がまた入ってくる。完全に弱い場所を覚えられ、強弱をつけながら、そして中を広げながらまた啼かされる。
 中を弄られるだけかと思いきや、彼は胸にかぶり付く。大きくもなんともないのに、幸せそうな顔で乳頭をしゃぶり、鬱血跡をつけていく。


「はぁっ、トコエっ、んん、ん……っ、綺麗だよ……」


 異音がする。視界の端で放り捨てられたのはベルトか。見せ付けるように身体を起こして、男は徐に股座から剛直を取り出した。


「これで、気持ちいいところがんがんされたいよね?奥に熱いの、いっぱいほしいよね?」


 だらだらと流れる先走りを伸ばして自身の手で昂りを慰め始める。涎を垂らして、その先端を内腿に擦り付ける。


「またっトコエに手で、撫でてほしいっ、はぁっ、トコエの小さい口に咥えられたら、僕我慢できないかも……っ、ああっ、はやくしたい……!!」
「あぅっ、はぁ、あっ、んっ、んんっ、うぅっ」


 激しくなっていく快楽にもう逃れられなくなる。下半身に広がるそれが身体の芯を駆け巡っていくように伝播させていく。


「ん、あぁっ!」
「トコエっ、は、ぁ……っ!」


 内腿に擦り付けられていたそれが収縮する割れ目に向けられる。びゅ、びゅっと吐き出された精液がべったりとそこを汚していく。
 ずるりと指を引き抜いて、ルザは今度こそと言わんばかりに足のちょうど間に座り込んだ。


「もう、いいよね……セックスしちゃおう」


 とっくに再起を済ませ精液に塗れた男根で、同じ白濁で汚された陰唇をゆっくりとなぞる。奥へと繋がる穴へと鈴口を定め、ぐっと力を入れていく。


「こんなに精液でべったり汚れてるのに、トコエの中に入っちゃうなんて……」


 感極まった様子でルザは呟く。ぐちゅりと、ほんの少し先端が中に埋まった。


「!」


 放り投げていた身体に力が戻ってくる。予兆のように感じ取った襲撃の気配に、すぐさま身体を起こした。


「えっ、トコエ……!?」


 下着を履くこともないまま、股から精液を垂れ流しながら部屋を飛び出す。


「トコエ!せめて下着を……ーー」


 声はあっさりと遠ざかる。

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