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09-03 鎧袖一触
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ルザはいてもたってもいられず、戦闘中継モニタのある大広間へと向かう。そこには他の兵士たちもいて、皆一様に彼女の戦闘を見守っていた。
薄暗いモニタに映ったのは、ルザも見たことのない異形の姿だった。
奴らは皆空からやってくる。小型の奴は素早いが搭載火力が低い。中型の性能は平均的で、大型の奴は遅いものの耐久力も火力もある。
そして今回の相手は、軍団だ。目視できる限りで大型五、中型十以上、小型は数えきれない。
更に最奥。大型よりも数倍ある巨体が、不気味に浮遊していた。
「またあいつだ……」
「ベルも流石に今回は……それに単騎なんて」
周囲の呟きに、更に不安が膨らんでいく。
既に戦闘は始まっている。豆粒のような白い影が、いつものように皿を伝って侵略者を迎撃する。だが彼女の華奢な身体は、強い風によって常に煽られているようで不安定だ。
掌から射出される杭も、強風で狙いが外れる。対して敵は弾幕で彼女を追い詰めていっている。誰が見ても、トコエの劣勢は明らかだ。
ルザは人目も気にせずいつものように手を合わせる。頭の中で必死に、神に希った。
「(かみさま、僕からトコエまでとらないでください、おねがいします……)」
そこで兵士の間でざわめきが起こる。視線を上げれば、煙に包まれた白い影は風に吹き飛ばさるまま落下して行く。敵の攻撃が命中したのか。
「トコエ……!」
そのまま画面外に影は消えて行く。兵士の間のざわめきが大きくなり、皆終わりの時を囁く。
彼女の元へ駆けつけようとルザは踵を返す。その腕を、とっさに誰かに掴まれた。
後ろを振り向けば、そこにはカーリャが居た。
「離してくれ」
「落ち着いてルザ。今外に出たって……」
「離せ……!」
恐ろしい剣幕でルザは怒鳴る。しかしカーリャも彼の身を案じてか引こうとしない。
「あ、おい、あれ!」
誰かがそう叫んだ。皆の視線が一斉にモニターに向けられる。
暗がりの中を、チラチラと光の線のようなものが横切って行く。その度に一機、また一機と敵が断末魔を上げながら墜落して行く。
またぴかっと線が走る。手前にいた中型を貫くと、破裂するように内側から数多の杭が出現し中身を飛び散らせる。
飛来する杭の数は増して行く。降りかかる弾幕ごと消し飛ばしながら、確実に敵を撃滅して行く。
「すげぇ、これなら」
誰もが静かにその戦いの行く末を見つめた。そうしているうちにも、敵の数は数えられるほどにまで減っていった。
ただし、一番奥の巨体だけは、未だ無傷だ。
「あの、一番大きな敵は……」
「防衛線に現れる、多分一番強い奴。エヴァンジルでも青持ちでも、あれの装甲は簡単には抜けないの」
カーリャは緊張した面持ちを崩さずに答えた。
「いつも嵐と一緒にあいつは来る。だからラゾは、シュガールって呼んでる」
そう説明しているうちに、遂にシュガール以外の敵は墜落する。同じように光の線はシュガールにも何本も向かうが、そのどれもが浅い部分で破裂するばかりだ。
シュガールの腹にある砲門のような場所が鈍く光る。次の瞬間にはぴかっと辺りを照らすほどの光量を持ったそれが、恐らくはトコエの居る場所に向かって放たれる。
落雷のようなすさまじい爆音がする。あれをモロに喰らったならばいくらエヴァンジルといえど粉微塵だろう。
杭の応撃が止まる。まさかトコエに命中してしまったのかと、そう思った。
ふとフロントの足場に備え付けられているらしいカメラのモニタに、人間の右足のようなものが映る。
『風…、うっと………い』
ガサガサという風の音とともに、聴き慣れた少女の声がする。それと同時に、ガン、ガンと何かを叩くような音が聞こえた。
瞬間、全てのモニターがブラックアウトする。それと時を同じくして悍しい叫び声が要塞内にも響いてくる。
『あ、貫通した』
クリアな音声だけがモニターから響く。いつしか外の音を拾っていたスピーカーから、風雨のものらしきノイズが消えていた。
数秒ほどして一番大きなモニターが映る。だがそれはさっきまで映していた景色と違う、別のカメラからの映像のようだった。そこから見える景色は、何故か雲にぽっかりと大穴が空いている。雨も風も止んでいるようで、穴からは真っ青な空が覗いている。
嵐ごと、あの巨体を撃ち抜いたというのか。
『――戦闘、終了』
ラゾの声がそう告げた。数秒ほどの沈黙を経て、兵士たちは互いの顔を見合わせ、湧き上がってきた勝利の実感に喜びの声を上げ始める。
はっとなったルザはカーリャの腕を振り払うとフロントへと繋がるフロアへと走った。同様にカーリャも、今回の戦闘の功労者を称賛しようとする者たちも、同じように移動を開始する。
ルザの視界に鉄の扉が映るくらいの距離になったところで、扉は鈍い音を立てて開いた。そこから現れた人物に、ルザは喜びを噛みしめた。
五体満足だ。どこも欠けていない。白金の少女は何事もなかったように戻ってきた。
「とこ……!、え……」
抱きつこうとしたところでぴたりとルザは止まる。
彼の行動を停止させたのは今の彼女の格好だ。
嵐の中戦ったのだ。傘も合羽もない。そのため、今の彼女はずぶ濡れだった。おかげで白のワンピースは艶かしく肌に張り付き、桃色の乳頭を布越しに晒してしまっている。
更には被弾の影響なのだろう。ワンピースの裾が左臀部あたりから斜めに破れている。そして戦闘中に脱げたというのか、下着の布は破れた服の隙間からは見えず、鼠蹊部辺りが丸見えだった。案の定、破れた裾がぴったりと股座に張り付き、その輪郭を露わにしていた。
透けた服の上からデレイが見える。それは彼にとって見覚えのある、二割ほどの模様が残っているばかりだった。ちょうど戦闘限界を迎えた後のリカバリーが、それくらいの回復量だったはず。
「ベルー!」
「ありがとな、ベル!」
「わああ!!」
背後から他の兵士が来て、慌ててルザはトコエを抱き上げ、特に身体の前面を隠す。口々に彼女に礼を言う兵士たちを睨みつけ、部屋に戻ろうと踵を返した。
「こっちを見るな、見たら殺す……!」
「はは、ははは……」
突然腕の中のトコエが笑い始める。頭でも打ったのだろうかと心配になって彼女を見れば、戦闘前に見せたのと同じ優しい笑みで彼女は言う。
「こんなの初めてだ。勝ててよかったね、ルザ」
ちゃんと彼女が自分の名前を呼んだことにより、彼は感激したように破顔した。
「あーはいはい、イチャイチャするのは後!ほらルザ、ベルが風邪引いちゃうから早くお風呂に入れてあげて」
がばっとカーリャがトコエにシーツを被せてくれる。確かに彼女の身体は結構な時間風雨に晒されていたせいで冷え切ってしまっていた。
「ごめん、ありがとう」
「はいはい。みんなも解散。おつかれー」
上手くカーリャが場を収めている内に、トコエを連れて部屋へと戻った。
すぐにシャワー室の前で下ろすと、彼女の張り付いた服を脱がせる。ちなみに本当に下着は履いていなかった。
「おなかすいた」
「シャワー浴びてる内に作っておくから。まずはあっためないと……」
そこでぐいっとトコエに胸ぐらを引っ張られる。何事かと思う前に、冷たい唇が自身の唇と触れ合った。
キスが終わって、ルザは呆然とトコエを見つめた。そうしていると、彼女の手がそっと彼の股座を撫で始める。
「“おなかすいた”」
「っ……!」
先程と同じ言葉を、彼女は繰り返す。それは決して空腹を訴えたものではなかった。
「人は命の危険を感じると、したくなるんだろう?」
「ああ、そうだね……」
そう言ってルザは自分の服を脱いだ。それもまた、彼女を抱き上げたときに濡れてしまったのだが。
「僕も君が欲しいよ」
「ん、じゃあ決まりだ」
薄暗いモニタに映ったのは、ルザも見たことのない異形の姿だった。
奴らは皆空からやってくる。小型の奴は素早いが搭載火力が低い。中型の性能は平均的で、大型の奴は遅いものの耐久力も火力もある。
そして今回の相手は、軍団だ。目視できる限りで大型五、中型十以上、小型は数えきれない。
更に最奥。大型よりも数倍ある巨体が、不気味に浮遊していた。
「またあいつだ……」
「ベルも流石に今回は……それに単騎なんて」
周囲の呟きに、更に不安が膨らんでいく。
既に戦闘は始まっている。豆粒のような白い影が、いつものように皿を伝って侵略者を迎撃する。だが彼女の華奢な身体は、強い風によって常に煽られているようで不安定だ。
掌から射出される杭も、強風で狙いが外れる。対して敵は弾幕で彼女を追い詰めていっている。誰が見ても、トコエの劣勢は明らかだ。
ルザは人目も気にせずいつものように手を合わせる。頭の中で必死に、神に希った。
「(かみさま、僕からトコエまでとらないでください、おねがいします……)」
そこで兵士の間でざわめきが起こる。視線を上げれば、煙に包まれた白い影は風に吹き飛ばさるまま落下して行く。敵の攻撃が命中したのか。
「トコエ……!」
そのまま画面外に影は消えて行く。兵士の間のざわめきが大きくなり、皆終わりの時を囁く。
彼女の元へ駆けつけようとルザは踵を返す。その腕を、とっさに誰かに掴まれた。
後ろを振り向けば、そこにはカーリャが居た。
「離してくれ」
「落ち着いてルザ。今外に出たって……」
「離せ……!」
恐ろしい剣幕でルザは怒鳴る。しかしカーリャも彼の身を案じてか引こうとしない。
「あ、おい、あれ!」
誰かがそう叫んだ。皆の視線が一斉にモニターに向けられる。
暗がりの中を、チラチラと光の線のようなものが横切って行く。その度に一機、また一機と敵が断末魔を上げながら墜落して行く。
またぴかっと線が走る。手前にいた中型を貫くと、破裂するように内側から数多の杭が出現し中身を飛び散らせる。
飛来する杭の数は増して行く。降りかかる弾幕ごと消し飛ばしながら、確実に敵を撃滅して行く。
「すげぇ、これなら」
誰もが静かにその戦いの行く末を見つめた。そうしているうちにも、敵の数は数えられるほどにまで減っていった。
ただし、一番奥の巨体だけは、未だ無傷だ。
「あの、一番大きな敵は……」
「防衛線に現れる、多分一番強い奴。エヴァンジルでも青持ちでも、あれの装甲は簡単には抜けないの」
カーリャは緊張した面持ちを崩さずに答えた。
「いつも嵐と一緒にあいつは来る。だからラゾは、シュガールって呼んでる」
そう説明しているうちに、遂にシュガール以外の敵は墜落する。同じように光の線はシュガールにも何本も向かうが、そのどれもが浅い部分で破裂するばかりだ。
シュガールの腹にある砲門のような場所が鈍く光る。次の瞬間にはぴかっと辺りを照らすほどの光量を持ったそれが、恐らくはトコエの居る場所に向かって放たれる。
落雷のようなすさまじい爆音がする。あれをモロに喰らったならばいくらエヴァンジルといえど粉微塵だろう。
杭の応撃が止まる。まさかトコエに命中してしまったのかと、そう思った。
ふとフロントの足場に備え付けられているらしいカメラのモニタに、人間の右足のようなものが映る。
『風…、うっと………い』
ガサガサという風の音とともに、聴き慣れた少女の声がする。それと同時に、ガン、ガンと何かを叩くような音が聞こえた。
瞬間、全てのモニターがブラックアウトする。それと時を同じくして悍しい叫び声が要塞内にも響いてくる。
『あ、貫通した』
クリアな音声だけがモニターから響く。いつしか外の音を拾っていたスピーカーから、風雨のものらしきノイズが消えていた。
数秒ほどして一番大きなモニターが映る。だがそれはさっきまで映していた景色と違う、別のカメラからの映像のようだった。そこから見える景色は、何故か雲にぽっかりと大穴が空いている。雨も風も止んでいるようで、穴からは真っ青な空が覗いている。
嵐ごと、あの巨体を撃ち抜いたというのか。
『――戦闘、終了』
ラゾの声がそう告げた。数秒ほどの沈黙を経て、兵士たちは互いの顔を見合わせ、湧き上がってきた勝利の実感に喜びの声を上げ始める。
はっとなったルザはカーリャの腕を振り払うとフロントへと繋がるフロアへと走った。同様にカーリャも、今回の戦闘の功労者を称賛しようとする者たちも、同じように移動を開始する。
ルザの視界に鉄の扉が映るくらいの距離になったところで、扉は鈍い音を立てて開いた。そこから現れた人物に、ルザは喜びを噛みしめた。
五体満足だ。どこも欠けていない。白金の少女は何事もなかったように戻ってきた。
「とこ……!、え……」
抱きつこうとしたところでぴたりとルザは止まる。
彼の行動を停止させたのは今の彼女の格好だ。
嵐の中戦ったのだ。傘も合羽もない。そのため、今の彼女はずぶ濡れだった。おかげで白のワンピースは艶かしく肌に張り付き、桃色の乳頭を布越しに晒してしまっている。
更には被弾の影響なのだろう。ワンピースの裾が左臀部あたりから斜めに破れている。そして戦闘中に脱げたというのか、下着の布は破れた服の隙間からは見えず、鼠蹊部辺りが丸見えだった。案の定、破れた裾がぴったりと股座に張り付き、その輪郭を露わにしていた。
透けた服の上からデレイが見える。それは彼にとって見覚えのある、二割ほどの模様が残っているばかりだった。ちょうど戦闘限界を迎えた後のリカバリーが、それくらいの回復量だったはず。
「ベルー!」
「ありがとな、ベル!」
「わああ!!」
背後から他の兵士が来て、慌ててルザはトコエを抱き上げ、特に身体の前面を隠す。口々に彼女に礼を言う兵士たちを睨みつけ、部屋に戻ろうと踵を返した。
「こっちを見るな、見たら殺す……!」
「はは、ははは……」
突然腕の中のトコエが笑い始める。頭でも打ったのだろうかと心配になって彼女を見れば、戦闘前に見せたのと同じ優しい笑みで彼女は言う。
「こんなの初めてだ。勝ててよかったね、ルザ」
ちゃんと彼女が自分の名前を呼んだことにより、彼は感激したように破顔した。
「あーはいはい、イチャイチャするのは後!ほらルザ、ベルが風邪引いちゃうから早くお風呂に入れてあげて」
がばっとカーリャがトコエにシーツを被せてくれる。確かに彼女の身体は結構な時間風雨に晒されていたせいで冷え切ってしまっていた。
「ごめん、ありがとう」
「はいはい。みんなも解散。おつかれー」
上手くカーリャが場を収めている内に、トコエを連れて部屋へと戻った。
すぐにシャワー室の前で下ろすと、彼女の張り付いた服を脱がせる。ちなみに本当に下着は履いていなかった。
「おなかすいた」
「シャワー浴びてる内に作っておくから。まずはあっためないと……」
そこでぐいっとトコエに胸ぐらを引っ張られる。何事かと思う前に、冷たい唇が自身の唇と触れ合った。
キスが終わって、ルザは呆然とトコエを見つめた。そうしていると、彼女の手がそっと彼の股座を撫で始める。
「“おなかすいた”」
「っ……!」
先程と同じ言葉を、彼女は繰り返す。それは決して空腹を訴えたものではなかった。
「人は命の危険を感じると、したくなるんだろう?」
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