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08-10 見送り(一)*

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 今日を終えればしばらく触れ合うことが無いと分かっているからか、セーリスの目から見てもヘニルの興奮振りは今までのものを超えていたように思えた。すぐに彼女の服を脱がせ下着を剥ぎ押し倒すと、その性急な動きに反してじっくりとその身体に触れ始めた。


「姫様……」


 先程の軽い口付けではなく、深く舌を交わらせる口付けが降ってくる。互いの唾液を混じらせながら、彼女の口内を好きに舐め回していく。ざらりと上顎を舐め、尖らせた舌先で歯列をなぞった後、ざらついた舌の表面を合わせて、そのまま扱くように絡めていく。

 そうしている間に片手は秘裂へと伸ばされ、敏感な芯を捏ね回すように触れる。指先で押しつぶして、くるくると円を描くように撫でて、そんな甘やかな刺激にセーリスは喉の奥から甘い声を漏らし、腰をくねらせる。


「ん、ふ……んぁ、んんっ」
「……っ、ん……姫様、気持ちいい、ですか」


 なぜそんなことを聞くのかと思いながらも、羞恥に耐えながら彼女はぎこちなく頷く。それにヘニルは嬉しそうに笑って、少しだけ後ろへと下がった。

 陰核への責めはそのままに、今度はべろりと白い首筋を舐める。跡は付けずにちゅ、ちゅっと音を立ててキスをして、それをゆっくりと下へ施す。薄い胸元にも同様に口付けて、もう片方の大きな手でじっくりと乳房に触れながら、空いた方を舐め回した。


「んぅ、ひ、あっ」
「相変わらず、ん、エロい声ですね……もうナニが爆発しそうです」


 一度ヘニルは身体を起こすと、自分の服を脱ぎ始める。鍛えられた身体が露わになると同時に、下着を下ろせばだらだらと先走りを垂らす剛直が視界に入ってくる。


「も、もう挿れるの……?」
「まさか。俺はそんなせっかちじゃないですよ」


 再び横になったセーリスの上に覆いかぶさって、再度乳房にかぶりつき、股座を弄る。ちゅうっと乳頭に吸い付き、ぺろぺろと舌で舐めまわされる感触に痺れのような快楽が奔って、セーリスは僅かに身体を震わせる。

 そして自分の身体にしゃぶりついているヘニルの姿に、腹の奥がきゅんと疼くような気がした。


「ん、あ、あんっ、うぅ、まって、やっぱ、恥かし……っ」
「もう何度ヤってると思ってるんですか。今更カマトトぶらなくても、俺は別に気にしませんよ?」
「んやっ、ちがう、その……ぁ、んっ、ヘニルの指でそこ、弄られてイくのが、恥ずかしい……」


 予想していなかった言葉にヘニルは手は止めずに目を閉じ沈黙する。しかしすぐに笑みを浮かべて、より一層芯を弄り回す指を激しくする。二本の指で挟んで擦り合わせれば、びくびくと敏感に反応したセーリスの足が震える。


「なんか良く分からないですけど、グッと来ました」
「なん、っで」
「恥ずかしいってことはイイってことですよね。一人でやる時より気持ちいんですかぁ?」


 そうはっきりと問われれば確かに一人で慰める時よりも感じてしまっていて、彼女は顔を真っ赤にする。その反応を見たヘニルはニヤニヤといやらしく笑って、くいくいと果てさせるように絶え間なくそこを擦り上げる。


「やっ、やだっ、んん、ぁあっ、ヘニルっ」
「姫様はほんと……はぁ、どんだけ俺の性癖開拓すれば気が済むんですかって」
「ん、だめ、いくっ、イっちゃうっ、んぁあっ」


 仕上げのようにきゅうっと陰核を摘まれ、セーリスは容易く果ててしまう。絶頂の余韻に浸っている最中もヘニルの指が敏感になったそこを撫でて、小刻みに腰が揺れてしまう。


「前戯とか、あんま興味無かったんですけど……姫様にだったらどんだけしても楽しめる自信がありますよ」


 そう言ってヘニルはまた後退り、彼女の股座の前で身体を伏せる。


「え……」
「まだまだ可愛がって差し上げますよ」


 赤く熟れたそこを舌で舐め上げられ、すぐに強く吸いつかれる。絶頂を迎えたばかりのそこは激しく悶え、セーリスは驚きと快楽に啼いてしまう。


「んやっ、だめ、そんなとこ舐めちゃだめっ」


 しっかりと彼女の太腿を抱え、休む暇を与えることなく芯を舐め続ける。皮から僅かに覗く場所を執拗に舌先で弄べば、再度身体は限界へと至りがくがくと快感に震える。


「もう、んぁっ、いってるから、だめ、んっ、戻って、これない、ぁあっ」


 果てても愛撫は止まず、セーリスは彼の頭を抑えながらも甘い嬌声を漏らし続ける。身体は絶頂に近い快楽を吐き出したまま行ったり来たりを繰り返すような、そんな壊れた感覚から抜け出せられない。

 セーリスの声が甘く蕩けきって、たまにびくりと身体を震わせるようになった頃、ようやくヘニルはそこから口を離す。視線を一切触れていない秘裂に向ければ、そこはだらだらと涎を垂らして男を求めているようだった。


「……」


 何も言わずそこにも口付けを落とし、そっと舌を差し込む。そうすればどろりと更に愛液が溢れて、じゅるじゅると音を立ててヘニルはそれを啜る。


「だ、め、きたないの、そんな、とこっ」
「汚くなんかないですよ。ん……、やっぱここは、挿れた方が気持ちいいですかね……」


 最後にぺろりと溢れた愛液を舐め取り、ヘニルは身体を起こす。愛液に塗れた唇を艶かしく舌で拭って、じっと堪えていた屹立をようやく彼女の中へと突き立てようとする。


「挿れますよ……今日はじっくり、味わわせてください」
「へ、んぅ……あっ」


 初めてを差し出した時のように、ゆっくりとした動きでそれが中に入ってくる。長い前戯でぬかるんだそこは、まるで何度も身体を重ねた後のようにいやらしい水音を立て、ようやく与えられる雄の感触を彼女に伝えてくる。

 内壁を押しひろげ、身体と同様に逞しいそれはすぐさま絡みつく彼女の身体を優しく愛撫する。そう感じてしまうほど、この行為の始まりは穏やかだった。


「ん、んぁ……っ」
「はぁ……っ、中、とろとろ、ですね、相変わらずきっつい、んですけど……っ、一回だけ、なんですから姫様、もうちょっと、優しくしてください……」


 ぐわっと迫り上がってくる射精欲を堪えているのか、途切れ途切れの言葉を彼は口にする。そこでようやくお互いの下生えが触れ合って、隙間なく二つの性が重なり合う。


「無茶言わない、で……なんかなか、動いちゃうの……」
「すごいですよ、もううねって、は……辛抱辛いです、もう出したいくらい……」


 その言葉でヘニルは何か思い付いたのか、大きく息をつく。そしてセーリスの手に自分の手を重ねると、まだ自身を動かすことなく口を開く。


「その、ですね……ちゃんと説明してなかったんですけど、神族にとっての子作りは、人間のそれとは違います」
「いきなり、なに……?」
「ええっと、前からずっと中に出すのをやめろと、そう言われてたんで」
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