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ディアナ

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「ヒロ○の処分はお任せしていいでしょうか?」書斎から男の声が聞こえる。

「ああ、俺達はそれを生業にしている。事故に見せかけて解らないように始末してやるよ」それは聞き覚えのある声であった。

「しかし、貴方達の組織は本当に不思議ですね。どこにも存在しないとは、貴方達が事を起こしても、警察も軍隊さえも対応する事が出来ないなんて……、そして決して後を残さない。私達のような依頼者には理想的な取引相手です」

「ふん、褒めても何も出ないぞ……、誰だ!?」男が書斎の扉を勢いよく開ける。ただ、そこには誰の姿もなかった。

「気のせいか……」扉を閉めると男は書斎の中に姿を消した。



 暗闇の中でヒロは目を覚ます。辺りに人の気配を感じて身構えた。どうやら怯えている様子であった。

「誰かいるのか!?」ヒロは声をかける。

「……」返答は無いが確かに人がいる。暗闇にゆっくりと目が慣れてくる。どうやら部屋の中の壁に添うように十数人の人がいるようであった。よく見るとその全てが十五~十七位の女性ばかりであった。

「あなたも……、拐《さら》われて来たの?」その中の一人の女性が恐る恐る聞いてきた。

「そうみたいだね」少し話しかけてきた女性に近づく。

「ここにいる人は皆誘拐されてきたのか?」ヒロが訪ねると女性達は頷いた。

「ディアナという女が私達を誘拐したの。お前たちは自分のコレクションっだって言って……」不安そうな声であった。

「俺はヒロ、君の名前は?」

「私はユーリ、あなた男の子なの?」ユーリはヒロの口調に違和感を感じたようだ。

「ああ、ちょっと事情があってね・・・・・・。安心してくれ俺が君達を助ける」ヒロその言葉で一瞬空気が緩む。「だから協力してくれ。とにかくしばらくの間は今までと同じように振る舞ってくれ。俺は様子を確認する」小さな声で皆に告げると皆一斉に頷いたようであった。

「あらあら、子猫ちゃん達。ご機嫌は如何かしら」高慢《こうまん》をそのまま表現したような女の声が響くり、それを合図にしたかのように部屋の中の明かりが灯る。
 ヒロ達がいる場所には、太い鋼で作られた檻がはめ込まれており人の力で破壊出来るものではないようであった。

 目の前に立つ女。ディアナは露出の激しい服に最低限の急所を守るように配置された金色の鎧を纏《まと》っていた。その下品なほど凹凸のある体にヒロはげんなりとした。

「やっぱりあなた綺麗ね。今までで最高よ。あなたに名前をつけてあげるわ。そうね……アプロディーテ。あなたは今日からアプロディーテよ」言いながらヒロを指差した。

「俺の名前は、ヒロだ!」

「ふふふふ、顔に似合わず粗野《そや》なのね。気に入ったわアプロディーテ。あなたは私の妹にしてあげるわ」ディアナがそういうと部屋の天井から鎖が飛び出してヒロの四肢に絡み付いた。

「うっ!」ヒロの顔が苦痛に歪む。

「あら、その表情も素敵……」ディアナはうっとりした顔でヒロを見つめた。ヒロの体は吊り上げられた状態で上に上昇し、別の部屋へと移動されていった。

「あっ……」残された少女達はその光景を唖然とした目で見つめるだけであった。
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