上 下
31 / 69

再 会

しおりを挟む
「あら、アプロディーテちゃんじゃないの?お元気!」その声を聞いてヒロは頭を抱えた。

「どうして……」ヒロは少しだけ恨めしそうな顔をしてオリオンを見た。

「いや、彼女もあの砂漠の近くで居を構えていたから、ハルピュアの事はよく知ってるそうなんだ。それとヒロに宝石を破壊されてから邪心は無くなったようだ。しかし、記憶は残っているようなんだが……」オリオンは少し苦笑いをする。

「あのアプロディーテちゃんを鎖で吊り下げて服を剥いちゃおうって、時に地震が起きたのを覚えていないかしら?」ディアナは椅子に座り足を組む。相変わらず露出を優先した下品な格好である。あれは邪心のせいではなくて生まれ持った感性のようである。

「えっ?」オリオンはその話は初耳のようで聞き返す。

「いや、あ、ああ、あの地震がなければもしかすると俺は逃げられなかったかもしれない」ヒロは少し誤魔化すように会話を続ける。あの地震が起きたお陰でディアナは外に飛び出していき、注意を反らす事が出来たのだ。

「あの揺れはハルピュアが巣の中で暴れたのよ。ハルピュアが地下で暴れると結構な確率で地上は大きな地震が起きるの」ディアナが続ける。「ハルピュアは女の上半身に獣の体。それに刃の羽を持っているの知性は……、期待しない方がいいわ」ディアナは、ぶっきらぼうに呟く。

「弱点はないのか?」

「そうね、確か美しい乙女の歌声を聞くと大人しくなるような事を聞いた事があるわ」

「乙女の歌声か……」それはカルディアに任せようとヒロは考えていた。

「他には情報はないのか?」オリオンが質問を追加する。

「そうね……、時期によってハルピュアの体の色が変わる事があると聞いたわ、これはあまり関係ないかしら」

「そうか」

「アプロディーテちゃん。もしも、あなたが私の妹になってくれるなら……、私も手伝ってもいいわよ。私のスフィンクスもきっと役に立つと思うわよ」ディアナは言いながら足を組み換える。

「せっかくですがご辞退いたします」ヒロは丁寧にお断りする。

「もう、アプロディーテちゃんは冷たいんだから、でも、そこがまた可愛いのよね」

「オリオン、行きましょう」ディアナの声を無視するようにヒロは出ていった。

「あ、ああ」オリオンには二人の会話がよく理解出来ない世界の話のような気がした。
しおりを挟む

処理中です...