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滝 壺

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 それは大きな滝の近く。突然の襲撃であった。

 オリオン暗殺の使命をアルゴスが失敗した尻拭いと逃亡者カルディア、裏切り者のヒロ二人の粛正が目的のようだ。
 オリオン達がアテナイの城に戻る前に全てを終わらせようと、アサシンの里から五人の先鋭暗殺者が派遣されたようだ。

 既に、二人の男はオリオンとヒロがそれぞれ仕留めた。

「カルディア!覚悟!!」カルディアと戦っているのは、彼女の幼馴染みであるアナトと言う女アサシンであった。

「アナト!!どうしてあなたが!」カルディアは動揺している。

「男にうつつを抜かして里を裏切る女に言うことはないわ!しかし、剣精と呼ばれたカルディアも腕が落ちたものね。それとも私が強いのかしら」アナトは不適な笑いをあげながら剣をカルディアに切りつける。アルゴスとの戦いの時に一旦切り落とされたカルディアの腕は、イオの力によって修復はしたが、以前のようには動かなかった。ゆえに彼女は剣精と呼ばれていた時の剣技を失っていた。

「アラーニェ!カルディアの動きを止めて!」アナトの使い魔王大きなタランチュラであった。それは白い糸を吹き出すとカルディアの足元めがけて噴出される。彼女は華麗に回転を繰り返しそれをかわす。

「逃げるのだけは昔のままね!」ルイがタランチュラに襲いかかる。その背中に乗るカカが指から繰り出す炎でタランチュラの糸を焼ききっていく。

「この裏切り者、いやお前はネーレウスが拾ってきた余所者だったな!」司令塔らしい男が不適な笑いを浮かべる。アウラとイオが加勢している。

「ああ、俺はもうアサシンではない!」男の剣を受けると、その頭上を別のアサシンが飛び越えてヒロの背中に斬りかかる。アウラが黄色い障壁でヒロの体を守る。

「アウラ!ありがとう!!」振り返り背後の男を横に真っ二つに切る。そして先ほどの男の内蔵を目掛けて真っ直ぐに剣を突き刺した。

「お、おのれ……」二人の男は絶命する。

「カルディアは!?」ヒロはカルディアの姿を探す。アナトという女とタランチュラの攻撃に苦戦しているようであった。
 ヒロはカルディアに加勢する。二人は得意のコンビネーションを駆使してアナトの攻撃を防ぐ。

「アラーニェ!何をやっているの!?こっちを加勢して!!」ルイとカカを相手にしていたタランチュラが振り返りカルディアに向けて糸を吐いた。その瞬間の隙を見逃さずルイはタランチュラの体を食いちぎった。
 カルディアが注意をしていなかった方向からタランチュラの最後の糸が攻撃してくる。

「危ない!」ヒロはカルディアの盾になるように糸を浴びてしまう。「うわー!」手足の自由を奪われたヒロはそのまま滝壺に落ちていく。途中の岩に体を激突させてから水中に沈みこんだ。

「ヒロ!!」カルディアは落ちていくヒロの姿を悲痛な表情で追った。「貴様!!!」彼女は今まで誰にも見せた事の無いほと怒涛の表情で剣をふるい、アナトの体を十文字に切り裂いた。

「あ、ああ、やはりカルディア……、あなたは私の憧れた……剣精……」アナトはその場で絶命した。
「ヒロ、ヒロ!!」カルディアは叫ぶとヒロを追うように滝壺の中に飛び込んでいった。

「カルディア様!!」カカは心配そうに滝の下を見つめる。ルイは背中にイオを乗せると険しい崖をかけ降りていった。ルイはイオの治癒能力を熟知しているようであった。

「カカ!ヒロとカルディアは!?」敵を倒したオリオンが滝壺を見つめながら泣きじゃくるカカに聞く。

「二人が、下に……、滝の下に落ちたのです!!」

「な、なんだって!」オリオンは剣を収めると滝壺を見つめる。それは一度飲み込んだ物を二度と返さないような勢いであった。

「ヒロ……」右手を強く握りしめてオリオンはヒロの名前を呟いた。
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