闘え!オルナス・バトルカーニバル!

上条 樹

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不死鳥

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「さあ、一回戦最後の試合です!白 ファイアーバーニング!マスター 野澤猛!!」

「赤 キングフェニックス!マスター 光明寺輝彦!!」

スケジュールは順調に進んでいるようである。一回戦は特に実力差の大きい対戦が多く、あっという間に終わってしまう試合も多かった。販売されているオルナスをそのまま出してるだけのプレイヤーは、まずカスタマイズされている強者には全く歯が立たない状態であった。

全身を深紅に染めたボディのファイアーバーニング、それはかなりのチューニングが施されている事は誰の目にも明らかであった。

一方のキングフェニックスも、その体を縦長の卵状のボディに覆われた物で、観客も興味深々で二つのオルナスを見つめた。

ファイティングポーズを取るバーニング、不動のフェニックスが対峙している。

カウントダウン!
3・2・1!ファイト!

走り寄りパンチを繰り出すバーニング、その拳をダッキングでかわすフェニックス。その動きはまるで世界戦のボクサーのような動きであった。

(やはり、あの動きは……!)ギルの声がアキトの頭に聞こえる。

(ああ、オルナスが自分で判断しているみたいだ)
(あの判断は、対峙していなければ出来ないだろう)

フェニックスは飛び上がると、バーニングの両肩を踏みつけるように飛び乗る。その反動でバーニングは舞台に膝を突いてしまう。

「バーニング!両足を掴め!!放り投げるんだ!」マスターが叫ぶ。本来、オルナスは声には反応しないので、言葉をかけるのは無意味、いやむしろ攻撃内容が相手に知られてしまう為、マイナス要因のほうが多いと思われる。しかし、興奮したバーニングのマスターは声を上げてしまったようである。

バーニングはフェニックスの両足を掴むと、ハンマー投げのようにクルクルと回り出した。何回転かして反動が付いたところで手を離す。フェニックスの体は場外に投げ出された。

「フェニックスが負けたのか!?」俺は、決着がついたと思った。しかし、次の瞬間、それはまだ早い判断であったと気付かされた。

「なんだ、あれは!!」観客が驚きの声を上げた。
フェニックスの卵状の覆いが開き大きな翼に形を変える。
そのまま宙に舞い上がる。その姿はまさに不死鳥、フェニックスであった!

とても、オルナスがジャンプして届く高さではなかった。

「畜生!」バーニングのマスターが舌打ちをする。バーニングの口が開きそこから火炎が放出される。多分、とっておきの技として隠していたものであろう。ただ、それすらフェニックスが今いる場所には届かなかった。

「なんやあれは!?」猿田がフェニックスを指差す。フェニックスの翼が輝いているように見えた。その翼を大きく羽ばたかせると地上めがけて風を送るような仕草をした。

(電磁波だ!)
「電磁波だって……!」ギルの言葉を思わず復唱してしまった。

「電磁波って?電子レンジの」美鈴が不思議そうに俺の顔を見上げた。

フェニックスから送られた電磁波がバーニングに襲いかかる。その瞬間、バーニングから、電気回路がショートするような音がした。そのまま、バーニングは両膝を床に落としたまま動かなくなってしまった。

動かなくなってしまったバーニングにフェニックスは近づくと、両腕で彼の肩を掴みもう一度舞い上がった。

「バーニング!」マスターの悲痛な声が聞こえた。

その声を無視するように、フェニックスはバーニングから手を離した。無可動の状態になったバーニングは、舞台下の堅いコンクリートにその体を打ち付け、その体はボロボロに破損してしまった。

「勝者は、赤!キングフェニックス!マスター 光明寺輝彦です!!」アナウンサーの声が響くと、場内は大きな歓声に包まれた。


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