私を調べてどうするつもり?

上条 樹

文字の大きさ
14 / 33

金は払わん!

しおりを挟む
「えーと・・・・・・・、この辺かな・・・・・・・」愛美は名刺の住所を頼りに刈谷の探偵事務所を探していた。その住所が示す場所は、治安の悪そうなメージの場所であった。ピンクのネオン街の片隅にその事務所はあった。ここに辿りつくまでに数人の中年男性にお誘いを受けたが、丁寧にお断りしてきた。

 雑居ビルの3Fの窓の下に、あまり費用をかけていないと思われる看板が取り付けられている。そこには『刈谷探偵事務所』と書かれてあった。エレベーターは無く、葉版狭い階段。人とすれ違うのは無理であろう。

 愛美は恐る恐る、その階段を上っていく。2階はインド料理の店であろうか。営業しているのかしていないのか、とにかく本日は休みのようであった。
 息切れしそうなほど急な階段、松葉杖を突いてこの階段を上るのは大変であろう。

 3階の事務所の前にたどり着いき、彼女は深呼吸をしてからドアをノックしようとした。

「これはどういうことなんだ!!」中から、怒鳴る男の声がして愛美は驚愕し、ノックしようとしていた手が止まった。

「俺は愛美に男がいないか調査してくれって、依頼した筈だ!それなのに・・・・・・・この、愛美と抱き合って悶えるような顔をしているのは、あんたじゃないのか!?」愛美には、その声に聞き覚えがあった。その主は一応、彼女の彼氏である嘉彦であった。

「いや、これは・・・・・・・、悶えているのではなくて、痛がっているんです」刈谷は素っ頓狂な返答を返す。その言葉が嘉彦の怒りに油を注いだようであった。

「あんた、俺を馬鹿にしているのか!依頼者の女を寝取るなんて、なんて探偵なんだ!」嘉彦は机を殴るようにして叩いた。

「ちょっと、僕はそんなことしてませんよ・・・・・・・・、でも、愛美さんが目の前で車に轢かれそうになったんで・・・・・・・・、普通、助けるでしょ?」その口調はいたって単調であった。嘉彦と完全に反比例した話し方であった。

「とにかく、金は払わんからな!逆に、訴えたいくらいだ!!」嘉彦は机の上に、写真を投げつけると、怒りを露わにしてドアを乱暴に開けて事務所を出て行った。

「はあ・・・・・・・・、こりゃ、必要経費回収できんな・・・・・・・」刈谷は、嘉彦の投げ捨てて行った写真を手に取ってみた。「けっこう、綺麗に撮ってるな」言いながら椅子に体重をかけて凭れながら写真を見つめた。

「よいしょっと」おじさんのように声を上げると、嘉彦が開けたままにしたドアを閉める為に、事務所の入り口に向かう。どうやら足の腫れも引いたようで松葉杖を使わずに移動できるようになったようであった。

 ドアを閉めようとすると、何かが挟まっているようできちんと閉まらない。もう一度ドアを開き下を見ると何かが落ちている。しゃがんで拾い上げると、それは定期入れのようであった。

「あれ?これって・・・・・・・、なぜこんな所に・・・・・・・」その中には、電車の定期券が入っていた。そこに記された所有者の名前は「篠原 愛美」と書いてあった。「ふーん・・・・・・・・」刈谷は、それをポケットにしまうと、事務所のカギを締めて、階段を下りて行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...