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銀河のコア

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「きちんと説明をしてくれ」祐樹は自分の部屋にいた。 
 祐樹はベッドの上に胡坐をかいて座っていた。目の前にレオが片手を腰に当て立っている。その姿はまるでモデルが立っているように美しい。

「約百二十九億年前に銀河は生まれました。生まれる前、銀河は小さな点に過ぎなかったのです。その点は二つに分かれて一つは銀河、もう一つは違う生命体『コア』になりました」レオは宇宙を指差すように上を指した。

「銀河は二つに分かれたけれど、銀河とコアは一つの生命のままだったのです。銀河が消えるとコアが消え、コアが死ぬと・・・・・、銀河も死にます」レオは両足首を握り体を前後に揺らしている。

「まるで、銀河が生き物のような言い方だな。でも、そんな百億年も生きられる生き物なって存在しないだろう」祐樹の疑問に、レオは当然だという顔をして返答した。

「そう銀河は生きているのです。それに貴方の言うとおり確かに銀河と同じように生き続けることは不可能です。コアの魂は、親から子へ、子から孫へ受け継がれていくのです。」レオは、両膝に手を置き、少し前のめりになって説明を続けた。

「貴方のご祖先様は、銀河の中心にある保護区域で、ずっと保護され崇められてきたのです。でも、その秩序を破る出来事が発生しました。貴方のお父様が子供の時に、悪戯で使用した空間移動装置『ヘブンズロード』で地球に訪れたのです。 そして、地球人の女性と恋に落ちた。大人になった、貴方のお父様は再び地球に逃亡したあと『ヘブンズロード』を破壊したのです。追っ手が来ないように・・・・・・。これによって暫くの間、「コア」の行方が分からないというトラブルが発生したのです」

「親父は、宇宙人なのか?」祐樹も体を乗り出した。

「そうです・・・・・・ 私達は血眼になってコア、いえ貴方のお父様を探した。コアを狙う者に渡すことは、銀河の命運を握られることだから」レオはゆっくりと祐樹の座る横に腰掛けた。

「私達が、貴方のお父様の居場所を見つけたとき、お父様は既に死亡していました」レオの目力が鋭くなった。

「・・・・・・ 」

「コアの使命は貴方に引き継がれたのです」

「そんな、勝手な・・・・・・!」祐樹は立ち上がりレオに詰め寄った。

「そうですね、でも貴方に選択肢はありません。コアと生きていくしかないのです」レオは肩に掛かる髪を掻きあげた。赤い髪の毛が綺麗に揺れる。

「私達、ガイダーの仕事はコアを守ることなのです。貴方の命は私達が守ります!」レオが拳を握り締めながら言った。

「私達・・・・・・? 」

ドタドタドタと階段を駆け上がってくる足音が聞こえる。

「祐ちゃん! 」
 扉が凄い勢いで開いた。部屋の入り口には奈緒が立っていた。

「おい・・・・・・!奈緒、いきなりドアを開けるな!」レオに目をやる。そこには・・・・・・。

「ニャー」赤毛の猫が一匹、ベッドの上に座っている。祐樹は目を疑った。

「祐ちゃん、いつの間に猫を飼ったのって・・・・・・、それより一緒に学校に行こうよ」奈緒は無理やり作ったとわかる笑顔で声をかけた。

「そうだな・・・・・・ 」祐樹は、少しうつむいて呟くように返答した。

「もう少し時間をくれよ」

「おばさんが、亡くなって悲しいのは分かるけど、いつまでも落ち込んでは駄目よ」奈緒も、2年ほど前にお父さんを交通事故で亡くしていた。その頃の奈緒は元気が無くて、かわいそうに思え、祐樹が必死になって励ました。それでも、何日かすると奈緒はいつもの奈緒に戻っていた。いや、戻ろうと努力したのだ。
 祐樹は自分は奈緒ほど強い人間ではないと、喉まで言葉が出かけたがその言葉はかみ殺した。

「もう!」奈緒が祐樹の腕を掴み引っ張るが、思った以上に祐樹の体は重たかった。逆に引いた反動で奈緒の体は、祐樹の上に覆いかぶさるような形になった。

「きゃ」奈緒は小さな悲鳴をあげ祐樹に抱きつくような姿となった。

「おっ、おい!」下敷きなった祐樹は驚いて奈緒の顔を見つめる。

(えっ!)奈緒との顔の距離は拳が一つ分であった。二人の間に沈黙が続き、奈緒の頬は赤く染まった。祐樹は全身で、奈緒の体を支えている。
奈緒がゆっくりと瞳を閉じた。
 
「ミャー!」赤毛の猫が大きな鳴き声を上げた。

「キャー!」正気に引き戻されて、奈緒は突然悲鳴をあげ立ち上がった。

「私ったら、ごめんなさい・・・・・・、祐ちゃん、大丈夫?」奈緒は恥ずかしそうな表情を隠しながら言葉を発した。

「ああ」返答しながら、祐樹はレオの頭を優しく撫でた。 レオは気持ちよさそうに目を細めていた。

「奈緒、有難う・・・・・学校に行くよ、俺」祐樹は精一杯の笑顔で奈緒に告げた。
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