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茶原縛
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久しぶりに祐樹は制服を着用する。
いつもは詰襟をきちんと閉めるのだが、なんだか煩わしく感じでフォックを開けたままにした。鏡で自分の顔を見るとなんだか目つきが鋭くなったように感じた。
(俺って、こんな顔だったかな・・・・・・)自分の顔に、違和感を持った。
傍らで、レオが祐樹を見上げている。レオは猫の姿のままであった。
「いつまで、その姿なんだよ」祐樹の言葉に答えるかのように、レオは少女の姿に戻った。
「なんだか、猫の体のほうが気楽で・・・・・・」レオは微笑みながら返答した。
「行ってくるよ」言うと鞄を肩にぶら下げて祐樹はレオに向かって手を軽く振った。
「行ってらっしゃいませ。つかず離れず護衛いたしますのでどうぞご安心ください」
「あいあい!」祐樹は敬礼のような仕草を見せた。
階段を下りて、玄関で靴を履く。
いつものように母の声が聞こえるような期待をしたが、聞こえる筈はなかった。ゆっくり立ち上がり祐樹は玄関に扉を開けた。家の前で奈緒が両手に鞄を持ったまま、うつむいたまま立っていた。
「奈緒・・・・・・ おはよう」
「あっ。祐ちゃん!おはよう!」奈緒は祐樹を見つけて満面の笑顔を見せた。
今日、学校に行くことを奈緒には告げてからずっと待っていてくれたようだ。奈緒には本当に心配をかけたのだと祐樹は改めて感謝の気持ちで一杯になった。
「ありがとな」祐樹はテレ顔で言った。
「えっ、なにが」首を傾げて奈緒は聞いた。
「いや、別にー」鼻の頭をかいて、祐樹は言葉を濁した。
7組の教室に祐樹は久しぶりに足を踏み入れた。
「おっ、小松原!」悪友の北が声をかけてきた。
「おっ、おう」返す言葉が思い浮かばなかった。
自分の席に座る。何気なく隣の席に目をやると、黒縁の遺影と花が飾られていた。 遺影の中には、可愛く微笑む黒岩 瑤子の顔が映っていた。
「黒岩 瑤子・・・・・・ 」祐樹は複雑な表情を浮かべていた。母を殺した化け物、自分が殺した少女。祐樹の頭にあの時の光景が蘇《よみがえ》り少し吐き気がして気分が悪くなった。
「小松原、大丈夫か?」北が心配そうに覗き込んだ。
「ああ、大丈夫だ」軽く笑顔で返答する。
「黒岩さんとお前、仲が良かったからな」北の口が開いた。
「お前のお母さんと、黒岩さんは本当にお気の毒だったな・・・・・・、犯人は許せないよな! 」正義感を全開させて北は呟いた。
「ああ、そうだな」その話題には、興味が無いというように祐樹は適当に返答した。
チャイムが鳴り担任がやって来る。教室の入室した担任は祐樹の顔を見て少し驚いたような顔をした。まだ出席してくるとは思っていなかったのであろう。
驚く担任の横に見慣れない女の姿が見えた。
背がスラッと高く腰まで伸びた紫色の髪、少しピンクの入ったブラウスに紺色のようなリクルートスーツ。胸は大きくブラウスのボタンが今にも弾け跳ぶのではないかと心配させる。腰はくびれて、お尻は程よい大きさ。なんたら姉妹を連想させるスタイルであった。
「おっ、小松原、来たか!」担任はそう言うと朝のHPを開始した。
「えー。こちらは、教育実習で来られた紫村 弥生先生だ」松下が何故か顔を赤らめながら教育実習生を紹介した。
「皆さん、おはようございます。紫村といいます。短い間になりますがヨロシクお願いします」紫村は大きく頭を下げた。
開いたブラウスの襟から谷間の内側が垣間見えた。男子生徒からは、大きな歓声が上がった。鼻血を噴射して倒れる生徒もいた。
そんな男子生徒達の反応に反し、祐樹は頬杖をついて校庭の様子を眺めていた。
校庭の大きな木の枝に、赤毛の猫が大きな欠伸をしながら座っていた。
「それから、転校生を紹介する」松下が廊下に目を移す。教室の中に学生服を着た男子が入ってきた。前髪が長くて、目を覆っている。
「茶原 縛君だ。皆仲良くするように! 」
転校生は少しお辞儀をした。挨拶の言葉は無く、人見知りするタイプのようだ。女子達は男子転校生が来ると聞いていて、美少年の出現を期待していたらしく、ため息をついていた。
(祐樹さん、あの男に気をつけてください)突然、祐樹の頭の中にレオの声が聞こえる。
「えっ!」思わず祐樹は声を上げてしまった。
「小松原、どうかしたか?」松下が不思議そうな顔をして声をかけてきた。
「あっ、すいません。別に、何でもありません・・・・・・」祐樹はペコリと頭を下げた。
(お前の声が聞こえる・・・・・・ どうして?)祐樹は木の上の猫に向かって念じるように言葉を送った。
(一度、私達はシンクロしましたから、私と祐樹さんは声を発しなくても会話が出来るようになっています。だからこの姿でも意思疎通《いしそつう》は可能なのです)赤毛の猫はこちらを見ている。
(気をつけろって、どういう事なんだ)
(あの男からは、負のオーラを強く感じます。 黒岩 瑤子の女と同じくバンガーだと思います)
レオの言葉を確認してから、祐樹は転校生の座っている席を見る。確かに負のオーラを漂わせている。それは、ガイダーでなくても分かるレベルだ。
(また、戦わないといけないのか・・・・・・)祐樹の頭の中に、黒岩 瑤子との戦いが蘇る。
(相手の出方を見ましょう。出来るだけ危険は避けたいですから)
(・・・・・・ そうだな)憂鬱な気分を振り払おうと祐樹は大きく頭を振った。
頬杖をつき、校庭で行われている体育の授業風景に何気なく目をやった。
胸の大きな女子が校庭を走っている。彼女が走るたび、胸が上下に揺れている。
(おおっ、すげえ・・・・・・でかい!)祐樹の目が釘付けになった。
(あの、聞こえていますが・・・・・・)レオの声が頭の中に聞こえた。
いつもは詰襟をきちんと閉めるのだが、なんだか煩わしく感じでフォックを開けたままにした。鏡で自分の顔を見るとなんだか目つきが鋭くなったように感じた。
(俺って、こんな顔だったかな・・・・・・)自分の顔に、違和感を持った。
傍らで、レオが祐樹を見上げている。レオは猫の姿のままであった。
「いつまで、その姿なんだよ」祐樹の言葉に答えるかのように、レオは少女の姿に戻った。
「なんだか、猫の体のほうが気楽で・・・・・・」レオは微笑みながら返答した。
「行ってくるよ」言うと鞄を肩にぶら下げて祐樹はレオに向かって手を軽く振った。
「行ってらっしゃいませ。つかず離れず護衛いたしますのでどうぞご安心ください」
「あいあい!」祐樹は敬礼のような仕草を見せた。
階段を下りて、玄関で靴を履く。
いつものように母の声が聞こえるような期待をしたが、聞こえる筈はなかった。ゆっくり立ち上がり祐樹は玄関に扉を開けた。家の前で奈緒が両手に鞄を持ったまま、うつむいたまま立っていた。
「奈緒・・・・・・ おはよう」
「あっ。祐ちゃん!おはよう!」奈緒は祐樹を見つけて満面の笑顔を見せた。
今日、学校に行くことを奈緒には告げてからずっと待っていてくれたようだ。奈緒には本当に心配をかけたのだと祐樹は改めて感謝の気持ちで一杯になった。
「ありがとな」祐樹はテレ顔で言った。
「えっ、なにが」首を傾げて奈緒は聞いた。
「いや、別にー」鼻の頭をかいて、祐樹は言葉を濁した。
7組の教室に祐樹は久しぶりに足を踏み入れた。
「おっ、小松原!」悪友の北が声をかけてきた。
「おっ、おう」返す言葉が思い浮かばなかった。
自分の席に座る。何気なく隣の席に目をやると、黒縁の遺影と花が飾られていた。 遺影の中には、可愛く微笑む黒岩 瑤子の顔が映っていた。
「黒岩 瑤子・・・・・・ 」祐樹は複雑な表情を浮かべていた。母を殺した化け物、自分が殺した少女。祐樹の頭にあの時の光景が蘇《よみがえ》り少し吐き気がして気分が悪くなった。
「小松原、大丈夫か?」北が心配そうに覗き込んだ。
「ああ、大丈夫だ」軽く笑顔で返答する。
「黒岩さんとお前、仲が良かったからな」北の口が開いた。
「お前のお母さんと、黒岩さんは本当にお気の毒だったな・・・・・・、犯人は許せないよな! 」正義感を全開させて北は呟いた。
「ああ、そうだな」その話題には、興味が無いというように祐樹は適当に返答した。
チャイムが鳴り担任がやって来る。教室の入室した担任は祐樹の顔を見て少し驚いたような顔をした。まだ出席してくるとは思っていなかったのであろう。
驚く担任の横に見慣れない女の姿が見えた。
背がスラッと高く腰まで伸びた紫色の髪、少しピンクの入ったブラウスに紺色のようなリクルートスーツ。胸は大きくブラウスのボタンが今にも弾け跳ぶのではないかと心配させる。腰はくびれて、お尻は程よい大きさ。なんたら姉妹を連想させるスタイルであった。
「おっ、小松原、来たか!」担任はそう言うと朝のHPを開始した。
「えー。こちらは、教育実習で来られた紫村 弥生先生だ」松下が何故か顔を赤らめながら教育実習生を紹介した。
「皆さん、おはようございます。紫村といいます。短い間になりますがヨロシクお願いします」紫村は大きく頭を下げた。
開いたブラウスの襟から谷間の内側が垣間見えた。男子生徒からは、大きな歓声が上がった。鼻血を噴射して倒れる生徒もいた。
そんな男子生徒達の反応に反し、祐樹は頬杖をついて校庭の様子を眺めていた。
校庭の大きな木の枝に、赤毛の猫が大きな欠伸をしながら座っていた。
「それから、転校生を紹介する」松下が廊下に目を移す。教室の中に学生服を着た男子が入ってきた。前髪が長くて、目を覆っている。
「茶原 縛君だ。皆仲良くするように! 」
転校生は少しお辞儀をした。挨拶の言葉は無く、人見知りするタイプのようだ。女子達は男子転校生が来ると聞いていて、美少年の出現を期待していたらしく、ため息をついていた。
(祐樹さん、あの男に気をつけてください)突然、祐樹の頭の中にレオの声が聞こえる。
「えっ!」思わず祐樹は声を上げてしまった。
「小松原、どうかしたか?」松下が不思議そうな顔をして声をかけてきた。
「あっ、すいません。別に、何でもありません・・・・・・」祐樹はペコリと頭を下げた。
(お前の声が聞こえる・・・・・・ どうして?)祐樹は木の上の猫に向かって念じるように言葉を送った。
(一度、私達はシンクロしましたから、私と祐樹さんは声を発しなくても会話が出来るようになっています。だからこの姿でも意思疎通《いしそつう》は可能なのです)赤毛の猫はこちらを見ている。
(気をつけろって、どういう事なんだ)
(あの男からは、負のオーラを強く感じます。 黒岩 瑤子の女と同じくバンガーだと思います)
レオの言葉を確認してから、祐樹は転校生の座っている席を見る。確かに負のオーラを漂わせている。それは、ガイダーでなくても分かるレベルだ。
(また、戦わないといけないのか・・・・・・)祐樹の頭の中に、黒岩 瑤子との戦いが蘇る。
(相手の出方を見ましょう。出来るだけ危険は避けたいですから)
(・・・・・・ そうだな)憂鬱な気分を振り払おうと祐樹は大きく頭を振った。
頬杖をつき、校庭で行われている体育の授業風景に何気なく目をやった。
胸の大きな女子が校庭を走っている。彼女が走るたび、胸が上下に揺れている。
(おおっ、すげえ・・・・・・でかい!)祐樹の目が釘付けになった。
(あの、聞こえていますが・・・・・・)レオの声が頭の中に聞こえた。
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