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あなたの為じゃ無いんだからね!

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「おはようございます!ご主人様・・・・・・ 」パンが勢い良く祐樹の布団を剥ぎ取る。その下には祐樹と生まれたままの姿のソラが眠っている。祐樹は眠い目蓋をこすりながら「おはよう・・・・・・」と挨拶を返した。

「なっ、なっ、なっ」布団を持つパンの両手がワナワナと震える。

「どうしたの?パン・・・・・・・」パンの視線に釣られて祐樹はあられもないソラの姿を目にする。

「いっ、いやー!」激しい悲鳴が響き渡る。声の主は祐樹であった。

「なんだ、なんだ!」ダンが部屋に飛び込んできた。
 布団の上で、裸で眠るソラと、布団を持ち上げ固まっているパン、そして壁に背を持たれて怯える表情を見せる祐樹。

「ソラ!貴様、またやりやがったな!」敷布団を握ると、テーブルのクロスを引くように、引っ張った。ソラはクルクル宙を舞うと綺麗に着地した。

「・・・・・・いきなり、危ない・・・・・」ソラは感情の無い言葉を発した。器用に掛け布団で裸体を隠している。
 ダンはクルリと祐樹の方に振り返ったかと思うと、獣のように飛び掛った。

「観念しろよ!ヘヘヘヘ」ダンは、祐樹のズボンを激しく引っ張った。

「ちょ、ちょっと、止めてくれ! 」祐樹は激しく抵抗を試みる。
 パコーンと綺麗な音が部屋の中に響く。

「毎朝、同じ事を繰り返すんじゃないの! 祐樹さん、手紙が来ていますけど・・・・・・」レオがスリッパを握り締めた手と逆の手に持った手紙を祐樹に差し出した。

「俺に手紙・・・・・・?」レオから手紙を受け取りながら祐樹は首をかしげた。今時、手紙など珍しい。最近は携帯電話での連絡が中心で、手紙を送る知り合いなど心当たりが無い。
 手紙の封を開封すると、中に手紙が一枚封入されていた。その内容を見て祐樹は驚愕の表情を見せた。
その手紙の指し代人は茶原 縛であった。

『小松原 祐樹殿

篠原 奈緒を人質として預かっている。
貴殿と決着をつける為、日曜日、夜二十一時にパーク・ランドの風車前にて待つ。
来ない場合は、篠原 奈緒の命は保障しない。

      茶原 縛』

「なんだ・・・・・・、これは?」パーク・ランドは隣町にある遊園地。祐樹達は子供の頃から、よく遊びに行った。動物園も兼ねており休日の子連れ家族の定番中の定番であった。

「祐樹さん、罠です。奈緒さんは・・・・・・、仕方がありません」レオが少し視線を斜めに落として言った。

「そんな馬鹿な、この間奈緒を追いかけろって言ったのはレオ、君じゃないか!」祐樹は激しくレオに噛み付いた。

「しかし貴方を危険に晒す事は出来ません。ここは堪えてください!」レオは続けた。

「祐、気持ちが解らないことは無いが、あんたを奴らに渡す訳にはいかないんだよ」ダンが祐樹の肩に置いた。その手を払いのけて祐樹は続けた。

「俺には、君達がいるから大丈夫だ。・・・・・・でも、奈緒には俺しかいないんだ。頼むから手伝ってくれ!」祐樹は真剣な表情で、レオ達に頭を下げた。

「・・・・・・」レオは俯きながら沈黙している。

「いいよ!手伝ってあげるよ」聞いたことの無い声が聞こえた。目をやると、胸のボタンを締めて服を着ていくソラの姿があった。その表情はいつもと違い、凛々しいものになっていた。
 祐樹は頬を赤らめて目をそらした。

「あちゃー、ソラが本気モードになってるよ! 」ダンは額を右手で押さえて上を向いた。その口元は少し微笑んでいるように見えた。

「ソラお姉さまが、ああなってしまっては行くしかないですね!レオお姉さま!」パンが親指を立てレオに合図する。

「もう、仕方ないわね。皆で、祐樹さんを守るのよ!」レオが呆れた顔で言葉を出した。レオの口元も少し微笑んでいるように見えた。

「有難う、ソラ!有難う、皆!」祐樹は感激で少し目頭が熱くなった。

「奈緒さんを助けるためよ!・・・・・・祐樹様の為じゃないんだからね!」ソラが顔を赤らめて後ろを向いた。

「うっ、本気のツンデレモードだ・・・・・・」ダンがウンザリした顔で呟いた。

「泣くのは、奈緒さんを助けてからですよ!今は作戦を練るのと、休養を取ることです!」レオは勇ましい表情で、泣き虫祐樹の尻を叩いた。

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